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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

日経連載「インフラの海外展開」の大切な指摘

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日経新聞朝刊で連載が続いている「ゼミナール インフラの海外展開」(20面前後に掲載されます)。お読みになっている方もいらっしゃるかと思います。国際協力銀行の方々が執筆されていますね。連載回数が20回を超えて現在は最後のまとめに入っているようです。
個人的に興味深かったのは、フランスなどの国別のインフラ輸出政策をまとめていた回で、例えば、フランスの場合は、インフラ輸出に絡めて戦闘機を売ったり、文化施設を”輸出”したりして、クライアント国に対して至れり尽くせりのサービスをしています。これはクライアント国側からすればうれしいでしょう。インフラ輸出には、そのような政府レベルの腰の低いサービスが不可欠なのかも知れません。

昨日付(2010年12月29日)の回では、日本がこれからインフラ輸出を拡大させる際の課題として、以下が指摘されていました。

 また、世界に誇る日本の高い技術水準は、必ずしも海外で十分に理解されていなかったり、単純に応用が利かなかったりするものも多い。例えば原子力発電の低い稼働率や、新幹線の専用軌道は、日本社会が「安全・安心」に極めて高い水準を求める裏返しといえるが、海外には時として異質で、過剰なほど高コストだと映りかねない。

日本にいて、これが高品質でよいインフラパッケージだと考えていても、クライアント国から見れば、過剰品質であり、予算に合わない高い買い物になるケースが多々ありそうだということですね。これについては、クライアント国の事情をよく探って、要求水準をよくわきまえて、それに見合ったものを提供していく必要がありそうです。

家電メーカーの場合は、最近では、新興国に製品開発拠点を設け、その国の事情に合わせた、機能群をそぎ落として低価格に設定した製品を提供するケースが見られるようになりましたが、同じことが、インフラのパッケージ輸出においても必要なのでしょう。海外のPPP案件の資料に色々と目を通していると、そのようなことを痛感します。

こうしたクライアント国なりの要求に合致したビジネスを行うという意味では、中東やアジアなどで多数のIPP事業を展開する大手商社の知見が、おそらくは、かなり現実的なものとなっているはずです。プラントを建設する場合でも、必ずしも日本メーカー製の機器納入にこだわらず、柔軟にベストなものをベストな国から調達して組み合わせるというケースが多々見られます。これは、競争入札に勝たなければならないという現実的な事情、その国が求めているサービス品質が満たせればよいという現実的な判断が、そのようにさせているのではないかと思われます。

「インフラ輸出」という言葉は、日本にいると、単にパッケージを作って輸出をすればよいかのような印象を与えますが、現実は世界各国の競争相手と、価格とサービス内容を競い合って競争入札に勝つことが大前提であり、上の「ゼミナール インフラの海外展開」の指摘は非常に重たい現実を含んでいると思います。

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