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そのOJT、運任せになっていませんか?新人がぐんぐん育つ3つのアプローチ

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『新人にはOJTで新規顧客開拓をどんどんやらせます』

この言葉に、あなたの会社の新入社員育成の課題が隠れていませんか?

新しい仲間を迎える季節。多くの企業で、OJT(On the Job Training)が始まります。しかし、その実態は「とりあえず先輩の雑用を手伝わせる」「根性を鍛えるという名目で、ベテランでも難しい仕事にいきなり挑戦させる」といった、名ばかりのOJTになっていないでしょうか?

もし、具体的な教え方や目標設定もないまま、先輩の経験と新人のやる気だけに頼る「運任せ」の育成をしているとしたら、それは大きな過ちです。早期離職を招き、チームの士気を下げ、採用コストを無駄にするだけでなく、何より貴重な人材の可能性を潰してしまいます。せっかく採用した優秀な人材の未来を、ギャンブルにしてはいけません。

では、どうすればOJTを「運任せの育成」から「戦略的な育成」に変えられるのでしょうか。その鍵は、「フォワード・チェイニング」「ランダム・チェイニング」「バックワード・チェイニング」という3つのアプローチを理解することにあります。

OJTの3つのアプローチ

OJTの進め方は、仕事のどの部分から任せていくかによって、大きく3つのタイプに分けられます。下の図を見てみてください。営業活動を例に、10のプロセスに分解しています。

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1. フォワード・チェイニング(いきなりラスボス型)

これは、プロセスの最初(図の1番)から順番に仕事を任せる方法です。つまり、いきなり最も難しい「新規顧客へのアポ取り」からスタートさせるアプローチです。

  • 状況:

    • 経験も知識もないため、アポ取りに苦戦し、失敗を繰り返す。

    • 自信を持って話せず、成功体験がなかなか得られない。

    • 長期間にわたって挫折感を味わい続ける可能性がある。

「若いうちの苦労は買ってでもせよ」ということわざを地で行くような、まさに「根性を鍛える」ためのスパルタ方式です。この厳しい環境を乗り越えられた人だけが残ればいい、と割り切れるなら選択肢になるかもしれませんが、多くの新人が心を折ってしまうハイリスク・ハイリターンな方法と言えるでしょう。

2. ランダム・チェイニング(先輩のパシリ型)

これは、特に計画はなく、先輩の仕事の都合に合わせて、その一部をランダムに手伝わせる方法です。

  • 状況:

    • 様々な業務を断片的に経験するため、広く浅く全体像を眺めることはできる。

    • 一つの仕事をじっくりやり遂げる経験がなく、スキルが身につきにくい。

    • 仕事の全体的な流れを理解できないままOJTが終わり、いざ独り立ちとなった時に大きな壁にぶつかる。

これは育成を放棄した『放置』に他なりません。成長は完全に本人任せ、運任せです。『勝手に育ってくれ。相談くらいはのるけど』というスタンスは、新人の不安や孤独感を増幅させ、才能の芽を摘んでしまう最も避けるべきやり方です。

3. バックワード・チェイニング(成功体験積み上げ型)

これは、プロセスの最後(図の10番)から仕事を任せていく方法です。つまり、まずはハードルの低い「入金確認」といった簡単な仕事から始め、成功を体験させます。そして、徐々に「契約書の受領」「納品と検収」と、より上流の難しい仕事へと範囲を広げていきます

  • 状況:

    • 最初の仕事が「成功の結果」であるため、喜びや達成感を共有できる。

    • 簡単な仕事から成功体験を積み重ねることで、自信がつく。

    • 一つひとつのプロセスを確実にこなしながら、仕事の全体像を無理なく学べる。

このアプローチは、新人が「できた!」という成功体験を重ね、成長を実感しながら能力を高めていけるのが最大のメリットです。高いモチベーションを維持でき、育成担当者との信頼関係も深まります。時間はかかるかもしれませんが、最も着実で、今の時代にあった育成方法と言えるでしょう。

もちろん、新人の特性や職種によっては、これらのアプローチを組み合わせることも有効です。例えば、最初の数ヶ月は『バックワード・チェイニング』で成功体験と自信を積ませ、慣れてきた段階で『フォワード・チェイニング』に挑戦させてみる、といった柔軟な運用が理想的です。

指導者に求められる「価値観のアップデート」

「自分はフォワード・チェイニングで育てられたから、それが当たり前だ」

ベテラン社員の中には、そう考える方もいるかもしれません。しかし、その「常識」が今の新人たちに通用するかは、慎重に考えるべきです。

変化の激しい現代において、「俺の言う通りにやればうまくいく」という過去の成功体験は、もはや通用しません。古い価値観で指導することは、彼らを間違った方向に導くリスクすらあります。

大切なのは、新入社員に「考えさせ」、彼らの話に真摯に耳を傾け、自発的にやろうとすることを「支援する」ことです。

OJTを「指示」から「未来への投資」へ

これからのOJTは、「指示して何かをやらせる」ことではありません。「自分たちで課題を見つけ、自ら立てた目標を責任を持ってやり遂げさせる」というアプローチへの転換が必要です。

例えば、古いやり方に固執するのではなく、新人たちにPythonやアジャイル開発、クラウドといった新しい技術を学ばせ、新しいビジネスの創出を任せてみてはどうでしょうか。

彼らの新しい感性を信じ、挑戦を後押しする。そして指導者は、彼らが壁にぶつかったときに、その障害を取り除いてあげる。これこそが、これからの時代に求められる「育成」の姿ではないでしょうか。

新人の成長は、会社の未来そのものです。運任せのOJTを今日で終わりにし、一人ひとりの可能性を最大限に引き出す『戦略的な育成』へ舵を切りませんか。その一歩が、会社と新人の双方にとって、最高の未来を築くのです。

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