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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

オーストラリア・クイーンズランド州が民間コンソーシアムに港湾施設を99年リース

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インフラ投資の世界では非常に興味深いニュースが飛び交っています。先日目に飛び込んできたのは、「民間がオーストラリアの港を買った」という記事。よく読むと99年間のリース契約を結んだのを、見出しで「買った」という表現にしていたのでした。しかしながら、自治体が保有している港湾施設をビジネスの一環で民間に貸し出すというスキームが非常に興味深いと思いました。

GIP group buys Port of Brisbane for $2.1bn
Global Infrastructure, Abu Dhabi to Buy Brisbane's Port for $2.1 Billion
Global Investor Group to Buy Brisbane Port

これらの記事によると、クイーンズランド州はグローバル経済危機によって穴が空いた予算140億オーストラリアドル(現在のレートでは米ドルと同じ)の補填をするために、港湾、道路、石炭ターミナル、石炭輸送用鉄道の売却を始めたとのこと(この売却は必ずしも保有権の移転を伴うものではない模様)。うちブリズベーン港については、2009年6月から売却(リース契約の相手探し)が始まり、2つのコンソーシアムが応札したとのことです。

落札したのは、Credit SuisseやGEが出資するGlobal Infrastructure Partners(資金量56億4,000万ドル)やアブダビ首長国の政府系ファンドであるAbu Dhabi Investment Authorityなどから成るQ Port Holdingsというコンソーシアム。この応札のために組成されたコンソーシアムのようです。ここが21億オーストラリアドルを現金で出して、ブリズベーン港の99年分の営業権を買いました。コンソーシアムに対しては、BBVA, BNP Paribas, Credit Agricole, Indosuez等の銀行シンジケートが12億5,000万ドルを融資しているそうです。シンジケートには日本のSMBCも名を連ねています。

他の応札コンソーシアムは、Morgan Stanley Infrastructureとオーストラリアの年金ファンドUniSuper。Q Port Holdingsに決定した理由は、コンソーシアムメンバー各々がオペレーションを行っている港湾が8カ国にまたがっており、経験があるからとのことです。

ブリズベーン港は2010年に2億3,200万オーストラリアドルの純利益を上げています。素人計算ながら、このうち1億5,000万オーストラリアドルを返済に回し、年利3%で設定すると、およそ18年で返済が終了することがわかりました。一般的にプロジェクトファイナンスは20年程度の返済期間で組むので、十分に標準的なものだと言うことができます。
相応の設備投資をして付加価値を高めれば、返済期間を短くすることも可能だと思います。その後は99年のリース満了まで、いわゆるキャッシュカウになるわけで、足の長い年金資金などには優良な案件ということになると思います。

次回は、この99年リース契約に参加したCredit SuisseやGEが出資するGlobal Infrastructure Partnersについて概要を見てみます。

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