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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

麻生内閣「アジア経済倍増計画」に必要なアジアン・セレブリティ(を取り仕切る代理店)

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先日、麻生首相が日本記者クラブのスピーチで「アジア経済倍増計画」を発表したという報道を目にした時、思わず「おぉ」とうなってしまいました。2008年1月に弊ブログで開陳した「広域東アジア市場における2008日本準富裕層水準実現プロジェクト」と発想は共通しており、「やっぱりそこだよなぁ」と思った次第。

麻生内閣総理大臣スピーチ「新たな成長に向けて」
(下の方に”3 アジアの成長~「アジア経済倍増へ向けた成長構想」 ”があります)

国や地域の中長期の経済成長のポイントは中間層全般にわたる所得水準の向上。これに尽きます。中間層の所得が向上し、様々な工業製品や住宅、サービスへの消費欲が高まるなかで、大きな市場がいくつも生まれて、国全体の経済水準が上がっていく。これがゴールデンパターンであることは、第二次世界大戦後の米国、高度成長期から80年代にかけての日本、80年代90年代のシンガポール、台湾、昨今の中国沿海部、インドなどを見れば明らか。

リーマンショック後の世界経済において中長期の持続的な経済成長があるとすれば、多数の国や地域において新しい形で中間層が勃興し、人々が夢と期待をもって学び、働き、所得を得て、旺盛な消費や貯蓄・投資を行っていくという道筋がもっとも順当です。
世界の現況を見渡した時、成長余地が著しく大きく、かつ億人単位の市場が複数あり、さらには金融危機の傷が比較的浅い国・地域がどこに集積しているかと言えば、アジアということになるでしょう。「アジア経済倍増計画」の着眼点は非常によいと思います。
先日のタイの混乱によって東アジア首脳会議が中止され、この計画の発表が流れてしまったことは残念ですが、今後も議論する機会はたくさんあるはず。ぜひとも各国と歩調を合わせて実現してほしいものです。

ここからが本題です。中間層の消費が大きく拡大する過程でなくてはならないのが「広告による消費の刺激」です。それと「ホームドラマ」も必須だと考えます。

日本の高度成長期から80年代にかけて、資生堂、サントリー、日産、松下電器などから多数の名作CMが生まれ、実際に多くの消費者がそれに刺激を受けて製品を買うということが起こりました。また、「標準的な家庭のイメージ」を形作るのに初期には米国製ホームドラマが、後には日本のTV局が制作したホームドラマが大きな影響力を持ったと思います。
このような広告やホームドラマによって形作られる「消費の気分」が中間層の支出拡大には不可欠だと考えます。

別な言い方をすれば、中間層の支出拡大には、メディアと連携したマスマーケティングが非常に有用である。むしろ、メディアと連携したマスマーケティング的方策がなければ、中間層の支出拡大はないのではないかと言っていいぐらいだと思います。(広告のなかった社会主義圏で中間層の消費が大きなうねりになったことがあるでしょうか?)
結局、消費とは夢の実現であり、その夢の実現のために勉強したり働いたりするわけですから、夢を刺激するものがなければ、中間層の向上心が動きません。すなわち、中間層の所得水準の向上には、よき広告、よきホームドラマが大きな意味を持っていると言えます。

従って、「アジア経済倍増計画」で設定しているアジア圏の中間層の経済倍増(≒所得倍増)が果たされるためには、その背後でよき広告、よきホームドラマが潤沢に供給されなければならない。これを誰が行うのか?

言わずもがなですね。このような国レベルの消費喚起のノウハウ蓄積があるのは、日本の大手広告代理店しかありません。ブログ界のはじっこに位置する弊ブログの意見ではありますが、日本政府が本当に上記計画を動かすのであれば、それと連動する形で、関係の国・地域において、日本の広告代理店がシナリオを書いたメディア展開を行うのがよいのではないかと思う次第であります。

ただここで1点、解決しなければならない課題があります。高度成長期~80年代の日本ではテレビを仕切れば、メディア展開の枢要は済んだ。周知のように、現在では「TVだけ」という訳にはいかない。2010年以降のアジアの中間層に夢を与えるメディア展開とは、どのようなものであるのか?これについて答えを出す必要があります。

おそらく、過去に中間層の消費を刺激した広告やホームドラマとはかなり形の異なるものになるのでしょう。Consumer Generated Mediaが全的に取って代わることは、まずない。マスマーケティング的な性格が抜け落ちることはない。一方でこれからの中間層が確実に持つであろうネットリテラシー、携帯リテラシーを考慮する必要がある。Social Networking的な情報の受容と伝播を踏まえる必要がある…。

以前にテレビCMや雑誌広告が果たしていた役割を2010年以降のアジアで担うのは、直感的に言えば、セレブリティでしょうね。

パリス・ヒルトン的なお騒がせ要素を持ちつつ、ライフスタイルに近づきやすさがある…(上の上という感じがしない…)。インターネットメディアでふんだんに行動を露出しつつ、直接やりとりすることは難しい。そういうセレブリティが結婚し、家庭を構え、子どもを産み、子どもを育て、仕事をし、食べ、飲み、遊ぶなかで、じんわりと中間層の消費が刺激されていく…。そんな姿が思い浮かびます。

当然ながら服飾全般はAブランドで統一、家電製品はB社製、乗用車はC社、都市部の住居はD不動産、利用する金融機関はE銀行…という具合になっていくわけです。

どうでしょうかね。

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