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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

中田ヤスタカ研究折り返し点

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特定のアーティストに興味を抱くという意味では、中田ヤスタカは自分にとって、ここ数年なかったような非常に大きな存在です。全貌を把握してやろうと考えて、capsuleのアルバムを何枚か聴き始めていますが、まだ把握しきれない部分も多い。

自分にとってはPerfumeも、中田ヤスタカがプロデュースした作品としてすごく興味が沸く存在です。capsuleの全作品をこなしてからPerfumeに行こうと考えていましたが、Twitter界隈では「GAME」がものすごくいいというコメントがあちこちで上がっていて、アマゾンで注文していたのが到着する前に、先週金曜日、DVD付きのを六本木のツタヤで入手してしまいました。

中田ヤスタカがPerfumeを通じて響かせようとしているものは、中田ヤスタカ本来の内側にある響きなはずで、それは例えば、DVDの冒頭に収録されている、昨年11月8日の恵比寿リキッドルームのライブの1曲目「ポリリズム」の、圧倒的に泣ける動画の中にも確認することができると思います。(伝説的なライブだったそうで、インターネットで探すとかなりな記述がみつかります)
作詞も作曲も中田ヤスタカであり、サウンドプロデュースも中田ヤスタカであるPerfumeを通じて、そこに中田ヤスタカ性を確認しているというのが、自分の聴き方です。

で、まだ全体像をつかみきれない。

capsuleだけでもいい曲がいっぱいあります。ざっと挙げると。

-Cutie Cinema Replay-
プラスチックガール
music controller (piconova-mix)

-S.F. Sound Furniture-
ポータブル空港
レトロメモリー

-L.D.K. Lounge Designers Killer-
dreamin dreamin
空飛ぶ都市計画
グライダー

-FRUITS CLiPPER-
super speeder Judy Jedy

-Sugarless GiRL-
Sugarless GiRL

-FLASH BACK-
Eternity

ポップソングのよさは、繰り返し聴くに値するものを繰り返し聴く行為にあるのであり、1~2度聴いて「あーよかった」はポップソングのよい部類に入らない。そういう意味で、上記の各曲は、自分的にかなり繰り返し聴いてきたし、これからもまだまだ聴けるように思うすごくいい曲です。
1人のミュージシャンからこれだけセルフヘビーローテーション曲が出現するというのは、自分的にはビートルズ以来ではないかと思う。(ここにPerfumeの何曲か、megから1~2曲が加わることになります。)

このよさの中にあるものを探ろうとして、何度も何度も聴き分けています。

大きなポイントだと思われるのは、2010年代頃の未来から1980年代を追憶する時に必ず付随するであろう”逆照射のあかるさ”(retrospective luminescence)が複数の作品に感じられるということです。
「プラスチックガール」や「レトロメモリー」のような直接的なレトロを扱った作品だけでなく、「空飛ぶ都市計画」、あるいはPerfumeの「エレクトロワールド」のような近未来系素材を扱った作品でもそういった”逆照射のあかるさ”があるように思います。(この”逆照射のあかるさ”は、”回想に伴うやさしさ”と言い換えることもできます。)

80年代ぐらいから未来を扱った映像(ブレードランナーとか)や音(YMOとかファミコンとか)があちこちで流通するようになり、90年代にそういうものに囲まれて育ったとすれば、00年代には、そういうものが”懐かしい未来”になっている、ということは多いにありそうです。

環境としての未来を形作るアイテムはすでに色んなところに置かれていて、それをいくつか組み合わせれば、生きられそうな未来を構築することはできる。未来のデザインは可能である。アイテムレベル、あるいは空間レベルでは。
そういうなかで、ほんとうにそうした未来を生きることになるあの子やこの子は何を感じ、何を考えるのか。そういう部分に想いを馳せながら作品を作っているんではないかと思いますね。

何というか、未来を追想する才能がある。

これは、アラン・ケイの「未来を予測する最良の方法は、自分で未来を作ってしまうことである」を下敷きにすれば、追想しながら未来をつくっているような格好になります。つまり、未来の感じ方や考え方のスタンダードをつくっている可能性がある。

とすると、彼の仕事の本質が少し見えてきます。

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