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2010年を振り返る

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もう2010年も終わります。そこで2010年の十大ニュースを上げて今年を振り返ってみます。

■10.ブラウザの高速化

JavascriptベンチをとっているためJavascriptエンジンの高速化の進歩が本当に分かります。Chromeショックが大きかったとはいえ、他のブラウザメーカもその競争に参加していることを考えるとこの方向性は多くのユーザが望んでいることなのでしょう。

また、IE 9が先鞭をつけたGPUを使った描画の高速化も他のブラウザでも対策が始まっています。この流れも主流になるでしょうし、WebGLも最終的には普及するでしょう(2010年末では、まだ正式版でサポートしているブラウザはありませんが)。2011年からブラゲーもかなりリッチになると思われます。

ただし、行き着く先はどうなるでしょうか?JITと言っても高速化に限界がありそうに思えます。Googleが推進しているNaClが普及するのでしょうか。このあたりはいまいち分かりませんが、HTML5やChrome Web Storeが今後普及するともっとブラウザのプラットフォームは以前よりも重要視されると思われます。

■9.電子書籍リーダーが動きの活発化

2010年の電子書籍リーダーの発売台数が、Gartnerから発表されたときあまりの少なさ(660万台)に驚きました(電子書籍リーダーはそれほど売れていないのか)。

ですが、"AmazonのKindle、2010年の販売台数は800万超えか"に2010年に800万台以上売れたとあります。Gartnerの発表にはAmazon分が入っていないようです(Amazonが正式に公開していません)。合計す売ると1,400万台前後になります。この数字は、メディアタブレットの2010年の出荷台数(1,900万台)よりも少ないですが、両者の勝負が決まった数字ではありません。また日本などの電子書籍がスタートしそうになっている市場もあるため、専用ガジェットと汎用ガジェットの差は電子書籍ストア次第でもっと詰まるかも知れません。2011年の結果次第でしょうか。

ただし、日本では2010年末にようやくスタートしましたが本のサポート率が...私は、"2010年読んだ本を振り返る"に書いた本ぐらいはサポートしてくれると即効で買いたいと思います。一ユーザとしてはサポート率さえ高ければ購入したいと本当に思っているのです。ですが、自炊はちょっとね。

■8.Sunの買収完了

OracleがSunの買収を完了させました。また、Novleも買収されることを発表しています。一時代を築いたIT企業が退場するのは少し残念です。

特にSunはオープンソースに寛容でした。ですが、Oracleの方針でいくつかのオープンソースがどのような対応になるか心配です。いくつかは既に影響が出ています。これはいいことなのかどうなのか今のところわかりませんが、Sunが偉大だったといまさらながら感想です。

■7.スパコンでGPU疾風が吹き荒れる

NVIDIAがFermiを作ったときに、"これからはGPUで計算する"を宣言していました。ですが、Fermi(GF100)が出たときは、製造問題で出荷自体も遅れましたし、消費電力あたりの性能がライバルと大きくかけ離れていました。このため、NVIDIAの選択した戦略であるビックダイは、正当化するのは難しいと思っていました。

ですが、それはPCのゲームの話で、スパコン業界では違っていました。

2010年11月に公開されたTop500のうちトップ10では、NVIDIAのGPUを使用したシステムが3つも入っていました。

スパコン専用のチップは過去にはたくさんありました。地球シミュレータもそうですし、IBMのPowerXCell 8iやPowerPC 4xxもそうです。富士通のSPARC64 VIIIfxもそうでしょう。

ですが、NVIDIAのGPUは、PCゲームと両用できます(そういった意味ではスパコンには不要な機能がいくつか入っているのでしょうね)。このおかげでPC及びスパコンで使用できるためか、他のシステムと違ってコストの問題で成功しているように見えます。

また、IBMとAmazonでNVIDIAのGPUを使用したクラウドサービスも開始されました(どこまで需要があるのかわかりませんが)。

私はFermiが出たときに"GPU競争の行方"で書いたように、NVIDIAの選択は間違っていたと考えていました(過去形!)。それがこのような結果になるとはNVIDIAの戦略は正しかったことになります。ただし、これが長続きするかはGPUの用途は出来るだけ一般ユーザが享受できる環境を作ることでしょうか。今のところゲームぐらいしか見当たらないのがつらいところですね。

■6.Facebook、Yahoo!を抜く

"FacebookがついにYahooを抜いて世界第三位の巨大Webサイトになった"にもあるとおりFacebookがYahoo!を抜いたようです。最近のYahoo!の凋落を考えるとこの結果は当然かも知れません。

こればかりはトレンドなどもあるため、仕方がないところなのでしょう。

■5.不況からの復活出荷台数の復活

私は、内需向けの仕事をしているためかそれほど不況を感じているわけではありません。ですが、Gartnerの数字から思ったよりも早く回復しているように思えます。

具体的な数字は"PC・サーバ・携帯電話の出荷台数推移(4Q'10)~携帯電話が急激に伸びている~"にあります。出荷台数は売り上げと比例するわけではないため、難しいですが。

ただし、サーバ市場は思いのほか急激に回復傾向を示しています。サーバ市場の売り上げ不振はひどい状況だったため、回復には2012年ぐらいまでかかるのではないかと予想されていましたが、出荷台数だけは2011年には不況前に戻りそうです。

出荷台数に限れば、PCと携帯電話は2010年中に不況前以上にもどり、サーバは2011年ぐらいには戻るのではないでしょうか。

■4.AppleがARMチップであるA4製造

AppleがiPad、iPhone(4G)/iPod touch、Apple TVのCPUを製造(設計?)しているのは驚きました。なぜならば、ARM系チップならば作っているメーカはたくさんいるため、作らずに購入すれば良いからです。

ARM系チップではNVIDIAのTegra、QualcommのSnapdragon、TIのOMAPとか有名です。Appleはサムソンの製品を今まで使っていました。ARMを採用しているスマートフォンを製造しているメーカは、製品にあったARM系チップを購入して詰め込めば良いわけです。Appleの様に自社消費だけで済ますのは、コスト的に割があうのか心配になるほどです(AppleのことだからA4は絶対に外販しないでしょうね)。

ですが、なぜA4を作ったのでしょうか?Apple TVにも採用されたときは、かなり驚きましたが100万台程度しか出ていません。これはiPadの販売予定数から見れば、10%にも満たされません。iOSで統一することはアプリの面で悪いことではありませんが、コストがペイできるのか疑問です(このあたりは私にはさっぱりわかりません)。

A4を設計したメリットはたぶん2つあると思います。大量に製造した場合の低コスト化と他社と違った機能を盛り込んだ場合です。前者は今のところiOS群は増加はしていても、大量とは言えません。後者は今のA4はそれほど他社との違いが明確ではありません。

もしかすると2010年に出てきたA4は練習ではないかと予想されます。ARMのロードマップではCortex-A9、Cortex-A15とマルチコア化やアウトオブオーダー化等の高機能化が予定されています。2012年くらいにはAtomとCortex-A15の性能差はほとんどなくなるかも知れません。その様な場合、Macbook AirにA4が入ってきたらどうなるでしょうか。常に持ち運ぶカテゴリの製品には、x86&フルOSが常に必要ではないのですから。

また、MicrosoftもARM系へのコミットもしてきているため、今後がARM系全般で面白くなるかも知れません。

■3.MicrosoftのHTML5へのコミット

HTML5が"One Write,Anyway"を実現できるためも最も大きな障壁は、IE次第(Microsoft次第)だと思われるため、IEのシェアが30%を切るまでは、実現されないと考えていました。ですが、MicrosoftがIE 9でHTML5にコミットすることを明言したときは、これでHTML5が絵に描いた餅にならないことになりそうです。

ただし、IE 9はいまだにHTML5対応率は決して高くありません。現時点では5大ブラウザの中で最低でサポートされていない項目が多すぎます(Web Workerには早く対応して)。

また、IEの更新周期も気になります。Chromeは6週毎に更新することをアナウンスされましたし、Firefoxも更新周期を短くするとアナウンスされています。Operaもアナウンスこそされていませんが、更新頻度は以前よりも短くなっています。

更新頻度が短い理由はいろいろとありますが、まだ策定中のHTML5に対応するためでしょう(WEB開発者も試すことが出来る)。このため、IE/Safari以外は更新頻度を高めることでHTML5に対応しようとしています。

IE 9でHTML5への対応を明言するのは良かったのですが、現時点(2010年末)では実行率は相当低いと言わざるを得ません。2011年にはIE 9の正式版が出てくると思います。それからが、MicrosoftのHTML5への本気度がようやく見えるのではないでしょうか。

■2.Androidの躍進

スマートフォンは今最も勢いがあるガジェットの一つです。そのスマートフォンのOSシェアでAndroidが大きくなってきています。具体的なシェア推移は"スマートフォン市場(3Q'10)~前年同期比90%以上の増加~"を見ていただければと思います。

今の傾向を見ていると2011年中にはAndoridはシェアトップになるでしょう。ですが、ちょっと気になるのがブラウザとして利用です。日本だからかも知れませんが、本ブログのGoogle Analyticsのモバイルアクセス結果を見ると未だにiOS系が80%を超えています。Androidが増えている傾向を見せていますが、日本ではまだまだモバイル端末のシェアはiOSがダントツです。

ただし、Androidの勢いは今のところMicrosoft(Windows Phone)やHP(WebOS)ではとめれそうにありませんし、AppleやRIMの単一メーカではとめる手立てはありません。このため、WEBアクセスの携帯電話のOSとしてもAndroidは近いうちにiOS系を抜くと思われます(日本だと2012年ぐらいかな?)。

ただし、気になるのは日本での展開です。Android端末は、日本へのローカライズしたタイプ(カラゲー化)と海外で販売しているの物(最低限のローカライズ)をそのまま提供のツータイプがあります。前者が2010年秋に発売されたシャープ・東芝等の日本メーカの製品です。後者はサムソンやLG等の海外メーカです。

前者の問題はOSのタイプが最新でないことです。バージョンアップは既にアナウンスしているとは言えタイムラグがありますし、今後のアップデータは大丈夫なのか心配になります("総統閣下はIS01の扱いにお怒りのようです"がそれを最も顕著に現状を伝えていると思います)。

Androidは既にバージョン2.3まででています。せめて、2010年秋モデルは2.2からスタートしてほしかったです(2.1と2.2はかなり大きい差)。このため、日本での展開もスピード優先で更新してくれるとうれしいのですが、なかなか難しいのでしょうね。私はモトローラーのDroid 2がほしいのですが...ローカライズも必要だと思いますが、製品展開のスピード感もほしいところです。

■1.iPadショック

iPadを購入したからと言う訳ではないのですが、iPadショック(iPadレビュー)はかなり大きいのではないかと思います。一番影響が出たのはPCの出荷(メディアタブレットの繁栄とネットブックの衰退)でしょう。GartnerもiPad出荷前に出した2010年のPC出荷台数に関して3.6億台でしたが、3.5億台に減らしています(Gartner、2010年のPC出荷台数を3.52億台に下方修正)。

また、Android陣営、MicrosoftやHP(Palmの買収)が対抗製品を出す方向に向かいました。Android陣営は、乱立気味ですがiPadにない大きさ(5インチ、7インチ)を出すことでiPadがカバーできていない領域に進出しています。

iPadは属する製品カテゴリはメディアタブレットと言われていますが、このカテゴリはネットブックの立ち上がりよりも早く伸びています。

私は、iPadを触ったときにネットブックのカテゴリはメディアタブレットカテゴリに勝てないと思いました(ただし、私はネットブックと呼ばれているカテゴリの製品を購入した経験はありません)。ライトにネットもしくはその類にアクセスするにはメディアタブレットは簡単です。第一、ネットを見るにはキーボードが必須ではありませんし、ビューアー的役割を担うにはメディアタブレットで機能的に十分です(最低限動画再生さえあれば)。

このため、スマートフォンとPCの間を埋めるメディアタブレットカテゴリは今後も普及するでしょうし、増え続けるPCを知らない人口(世代)はメディアタブレットでもっと加速すると思われます。

■まとめ

2010年はiPadショックが一番大きかったのではないかと思われます。ただし、メディアタブレットの出荷台数(2,000万台未満)に関してはものすごく多いわけではありません。たぶんですが、iPadのサイズはいつでも持ち歩くには大きすぎたのではないでしょうか。このあたりがAndroidタブレットがサイズが10インチ以下の製品が多い理由ではないでしょうか。

2011年も市場から"ワォ!"と呼ばれるような製品が出てくることを期待して、良い年(経済的に)であることを祈っています。

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