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GPU競争の行方

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2010/4にNVIDIAからFermiことGeForce GTX 480が発売されました。そこでGPUの製造と将来性に関して考えてみました。

まずは、GPUのシングルダイのトランジスタ数とダイサイズに関する推移をAMD(ATI)とNVIDIAをグラフ化してみました。

■トランジスタ数の推移

■ダイサイズの推移

■生データ

メーカー 発表時期 製品名 プロセスルール(nm) トランジスタ数(M) ダイ面積(平方mm)
NVIDIA Feb-03 GeForce FX5800 130 125 199
AMD Mar-03 Radeon 9800 150 110 200
NVIDIA Apr-04 GeForce 6800 130 220 305
AMD May-04 Radeon X800 130 160 289
NVIDIA Jun-05 GeForce 7800 110 302 334
AMD Oct-05 Radeon X1800 90 321 280
AMD Jan-06 Radeon X1900 90 384 352
NVIDIA Mar-06 GeForce 7900 90 278 196
NVIDIA Nov-06 GeForce 8800 90 681 470
AMD May-07 Radeon HD 2900 80 700 408
AMD Nov-07 Radeon HD 3800 55 666 190
NVIDIA Apr-08 GeForce 9800 65 705 324
NVIDIA Jun-08 GeForce GTX 280 65 1400 576
AMD Jun-08 Radeon HD 4800 55 956 256
NVIDIA Jan-09 GeForce GTX 285 55 1400 487
AMD Apr-09 Radeon HD 4890 55 959 282
AMD Sep-09 Radeon HD 5800 40 2150 334
NVIDIA Apr-10 GeForce GTX 480 40 3200 529

■ハイエンドGPUの3DMarkVantage Extermeのデータ(イマドキのイタモノを参考にさせていただきました)

GPU名 発売時期 3DMarkVantage
Extreme
GeForce GTX 280 Jun-08 4,848
GeForce GTX 285 Jan-09 6,138
Radeon HD 4890 Apr-09 4,613
Radeon HD 5870 Sep-09 8,410
GeForce GTX 480 Apr-10 9,280

NVIDIAのハイエンドGPUのダイサイズは、GeForce 8800を出荷したNov-06以降、GeForce 9800が出ていた時期(Apr~May'08)短い期間を除けば、400平方mmを超えています。GeForce 9800は324平方mmもあったため小さくはありませんでした。

また、NVIDIAはIntelのようにTICK-TOCK戦略(微細化と大幅機能追加を一緒に行わない)を以前から行っていました。大幅変更(大型化)→小幅改造&シュリンク(小型化)→...。このためダイサイズ推移を見ると、サイズアップとサイズダウンを繰り返しています。ただし最近は縮小化があまり進まないのは微細化の限界が近づいているのかも知れません。

AMDは、Radeon HD 2900を最後に大型化をあきらめました。替わりにデュアルGPUを率先して採用し(NVIDIAの方が先だったが)、Radeon HD 3800以降の製品には必ずデュアルGPUの製品を出しています。デュアルGPUを念頭にチップサイズと消費電力を決めている節が見えます。

AMDのハイエンドGPUは、NVIDIAのようにTICK-TOCKではなくシュリンクと中程度の改造を同時に行っています。ただし、Radeon HD 2000以降はプロセッサコア自体に大きく変更がないため、TOCK-TICK-TICK-TICKと読み替えたほうが良いかも知れません。次の世代は、NVIDIAのようにHPC対応機能が盛り込まれると言われているためTOCKのターンの可能性があります。

AMDとNVIDIAの両社の戦略がどちらが正しいかは分かりません。Radeon HD 4800の出荷前はNVIDIAが、それ以降はAMDが優勢のように見えますが戦略の違いによる差でないかも知れません。

ですが、両社の好調を大きく変えたのは設計戦略の違いではなく、製造委託先のTSMCの事情(40nmの歩留まり問題)の方が大きいような気がします。AMDはCPUでの製造経験を生かしてRadeon HD 5800/5900シリーズの歩留まりを抑えたと言われています。片やNVIDIAはGeForce GTX 480シリーズはこの影響を大きくかぶり出荷が遅れたと噂されています。

Fabレスメーカーのため製造委託先の製造能力のリスクを背負わざるを得ないのでしょう。

ですが、AMDはTSMCからGLOBALFOUNDRIES(AMDのFab部門がスピンオフした会社)の選択もできます(28nm世代からと移行すると言われているため、2011年から?)。TSMCとGLOBALFOUNDRIESのバルクがどちらが歩留まりが良いかは分かりませんが、選択肢があるほうがリスクを回避できるのではないでしょうか。

NVIDIAはさすがにAMD系列のGLOBALFOUNDRIESに製造委託はできないでしょうから(注:噂では一時期そのような話もあった)、TSMC以外の選択肢を探す必要が出てくるかも知れません。ただし、そのようなメーカがいまのところ実在しないのが現実ではありますが。

半導体の製造の歩留まりは改善されるものですから、NVIDIAのGPUの製造もそのうち改善されるでしょう(それがいつになるかは...)。

また、GPUの取り巻く状況が少しずつ変わってきています。現状はゲームと動画・画像の編集系がメインに活用されていますが、OpenCL/DirectX 11等のAPIの統一、GPUを搭載したCPU(SandayBridge/Llano)、HPC向けへの採用(一部進んでいる)、ブラウザのGPU活用等が普及すればGPUの利用が将来的に多様化する可能性があります。

その様な状況になればGPUの重要度が今よりも上がる可能性があります。将来のことを考えるとGPUの競争を見ていても面白いかも知れません。とりあえずは、Intelが登場するまでにAMD/NVIDIAにはもっとGPUをユーザにアピールしてほしいですね。

できればブラウザからGPUを操作できると面白いのではないかと思うのですが...

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