AI投資は2027年までにアジア太平洋経済の1.6兆ドル超の経済効果を創出
IDCは2025年2月12日、「IDC FutureScape: Worldwide Digital Business and AI Transformation 2025 Predictions - APeJ Implications」レポートを発表しました。
本レポートでは、アジア太平洋地域(日本を除く、APEJ)におけるデジタルビジネスとAIトランスフォーメーションの影響について分析しています。IDCの予測によれば、AIへの投資は今後3年間でデジタル技術全体の投資ペースの1.7倍の速度で成長し、2027年末までにAPEJ地域で1.6兆ドル以上の経済効果をもたらすと予測しています。
AIの主流化と課題
IDCは、AIが単なる新興技術から企業戦略の中核へと移行しつつあるとしています。生成AIの進化が、この変革をさらに加速させていますが、この急成長にはデジタルスキルの不足や、責任あるAIの導入といった課題も伴う点も指摘しています。
IDCアジア太平洋のデジタルビジネスおよびAIトランスフォーメーション戦略担当アソシエイトリサーチディレクターであるローレンス・チョック氏は、「AIの統合はAPEJ企業にとって大きなチャンスを生み出しています。しかし、この変革の恩恵を最大限に享受するためには、経営層が人材不足への対応、責任あるAIポリシーの実施、そしてAI投資を戦略的目標と整合させることが不可欠です」と述べています。
デジタル経済を形成する主要トレンド
デジタルトランスフォーメーションが企業戦略の中核となるにつれ、IDCは2026年までにITリーダーの40%がビジネスリーダーへと進化し、デジタル技術と組織の人材、オペレーション、ビジネスモデルを統合する役割を担うと予測しています。こういった状況の中、CIO(最高情報責任者)の役割が変革し、経営層との連携が一層求められるようになるといいます。
また、2026年までに40%のAPEJ企業がデジタル技術への投資ROIを的確に評価し、財務・運用・顧客・エコシステムの主要指標を統合したデータ主導のアプローチを採用する見込みです。企業がデジタル化の成功を測定するためには、包括的な評価指標の導入が必要不可欠です。
2025年までに、企業の80%がデータを製品として扱う意識を持たず、適切なデータ管理の仕組みを確立できないために、AI活用型ビジネスモデルの展開が遅れるとIDCは予測しています。データ管理が不十分な企業は、AI活用の競争で後れを取る可能性があります。
さらに、2027年までにAPEJ企業の60%がデジタルスキルの不足に直面し、AI導入の遅延を引き起こすと指摘されています。企業は、スキルギャップを埋めるための人材育成やリスキリング(再教育)を積極的に推進する必要があるといいます。
競争優位性を獲得するための戦略
IDCは、AIおよび生成AIを効果的に活用する企業がデジタル経済におけるリーダーシップを獲得し、競争優位性を強化すると指摘しています。そのための鍵となるのは、AIをビジネスプロセスに統合するためのITアーキテクチャとAIプラットフォームの整備、データ管理の成熟度を高めること、そして倫理的なAIガバナンスを確立することを挙げています。
今後の展望
IDCの予測によると、AIとデジタルビジネスの進化は今後数年間で加速し、生成AIの活用が拡大することで、企業の業務効率や創造性が飛躍的に向上する可能性があります。
AIの活用を成果につなげていくためには、企業がデータ戦略を明確にし、適切なインフラを整備することが不可欠です。データを適切に管理し、データ駆動型の文化を醸成することで、AIのポテンシャルを最大限に引き出し、さらにはデジタルスキルなどの人材育成の観点からの対応も重要となります。
今後、AI導入の成功は、企業の経営戦略の中核として捉えられるようになり、AIを活用する企業とそうでない企業との間で競争格差が拡大していくことが予想されます。持続可能な成長を実現するためには、技術だけでなく、組織文化や人材戦略の見直しも不可欠です。これらの要素を総合的に考慮し、AI投資を戦略的に進めることが、今後の企業成長の鍵となるでしょう。
出典:IDC 2024.2