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国内第3のプラットフォーム市場、2028年には31兆円へ――急成長の鍵はデジタル投資と脱炭素化

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IDC Japan株式会社は2025年1月17日、「国内第3のプラットフォーム市場に関する2024年から2028年までの市場予測」を発表しました。本調査では、デジタル技術を活用した市場の成長可能性や、各産業分野でのデジタル投資の傾向について分析しています。

市場規模と成長見通し

IDC Japanの調査によると、2024年の国内第3のプラットフォーム市場規模は25兆1,484億円に達し、前年比成長率は11.7%と予測しています。また、2028年には市場規模が31兆169億円に拡大し、2023年から2028年までの年間平均成長率(CAGR)は6.6%と見込んでいます。

地政学的な不確実性やインフレによる経済悪化のリスクが存在する一方で、レジリエンシー強化や脱炭素化に向けた積極的な取り組みが、デジタルビジネス向けの投資を支えています。

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出典:IDC Japan 2025.1.17

産業別の分析

小売、運輸、個人向けサービス業

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響が収束しつつある中、小売業や運輸業、個人向けサービス業での第3のプラットフォームへの支出が活発化しています。これらの分野では、経済活動の回復やインバウンド需要の増加により、業績改善が期待されています。

2024年から2025年にかけて、オムニチャネルコマースプラットフォームの構築や顧客エクスペリエンスの向上に向けた投資が加速する見込みです。

金融分野

金融業界では、政策金利の上昇に伴う収益改善を背景に、クラウドベースの顧客情報基盤整備や生成AIを活用した業務効率化が進んでいます。また、新NISA制度の開始により増加する個人投資家に対応するため、証券会社ではデジタルチャネルの強化が続いています。

中でも、アルゴリズム取引の高度化や市場運用分野でのAI活用が注目されており、高度なテクノロジーへの投資が進むと予測しています。

製造業

製造業では、サプライチェーンや工場のデジタルレジリエンシー強化が引き続き重要な課題となっています。特に、脱炭素化やグリーントランスフォーメーション(GX)の推進が、成長の鍵となると予測しています。

IDC Japanは、製造業におけるデジタル投資が他産業に比べてやや低い成長率になると予測する一方で、設備投資の拡大が市場を支えると見ています。

公共分野

デジタル庁主導のデジタルガバメント政策や、地方自治体の業務システム標準化が進行中です。2025年度末までに標準化対応を完了する自治体では支出が落ち着く一方、対応が遅れる自治体では投資が先送りされる可能性があります。

また、地方独自のデジタル施策やデジタル田園都市国家構想に基づくプロジェクトも、地方自治体のIT支出を押し上げる要因となっています。

IDC Japanの見解と今後の展望

IDC Japanのリサーチマネージャーである敷田康氏は、企業間取引におけるコスト上昇分の価格転嫁が容易になる環境が整いつつある点に着目しています。同氏は、以下のような分野でのITソリューション提供の重要性を強調しています。

・プロセス管理ソリューション:調達プロセスや価格交渉の合理化の支援
・データ管理システム:エビデンスベースの価格設定のサポート
・ダイナミックプライシングソリューション:最適な価格設定を可能にするアルゴリズムの提供

敷田氏は、これらのソリューションが企業の業績改善に寄与すると述べ、ITサプライヤーにはこれらの分野での事業機会を探ることを推奨しています。

国内第3のプラットフォーム市場は、経済活動の正常化やデジタル化の進展を背景に、今後も安定した成長が期待されます。その中でも、脱炭素化やAIの活用が市場拡大の主要な推進力となるでしょう。

一方で、地政学的な不確実性や政策の変化が市場に与える影響にも注視する必要があります。ITサプライヤーにとっては、これらの課題を機会と捉え、企業のデジタル投資ニーズに応える製品やサービスを提供することが重要となっています。



※ここでの「第3のプラットフォーム市場」には、クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術の4つの主要技術(4ピラー)から構成される技術プラットフォームと、4ピラー上に展開され事業成長を促進する技術となる「イノベーションアクセラレーター」としてIDCが定義する、AI、AR/VR、IoT、ロボティクス、3Dプリンティング、次世代セキュリティ、ブロックチェーンの7つの技術のうち、従来のICT市場に該当するハードウェア、ソフトウェア、サービス、通信サービスが含まれます。

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