IT運用組織の変革が求められる時代に:Gartnerの提言
Gartnerは2024年11月21日、ITインフラ運用組織に関する最新の調査結果と提言を発表しました。
Gartner、次世代のITインフラ運用組織には、ビジネス価値に直結する運用への変革が求められているとの見解を発表
本発表は、企業がデジタル・トランスフォーメーション (DX) を加速させるために必要なIT運用組織の進化に焦点を当てています。ITインフラストラクチャとオペレーション (I&O) 部門が現状抱える課題、そしてそれを乗り越えるための指針が示されており、I&O部門がビジネス成長を牽引する存在へと変化するための具体的な道筋が提案されています。
IT運用組織の現状:キャリアへの不安と課題
Gartnerが2024年4月に国内従業員500人以上の組織を対象に行った調査によると、IT運用担当者の過半数が自身のキャリアに不安や不満を抱えていることが明らかになりました。この調査では、次の3つの理由が主要な課題として挙げられています:
- 昇給や昇進の遅さ (65%)
他のIT部門と比べ、キャリア成長のスピードに不満を抱いている担当者が多数を占める - 待遇や評価の不満 (60%)
重責を担っているにもかかわらず、その重要性が十分に認識されていないという声 - 新しい技術に触れる機会の欠如 (57%)
技術革新が急速に進む中、最新技術を学ぶ機会が限られているという課題が浮き彫りに
Gartnerのシニアディレクターアナリストである米田英央氏は、これらの課題の背景について次のように述べています。
IT運用は重要な業務でありながら、その成果が可視化されにくい領域です。『縁の下の力持ち』としての役割を担い、安全かつ安定的な運用が当然視される一方で、評価が低い現状があります。また、人口不足の影響や若年層の運用業務への敬遠といった課題もあり、組織内での人材ローテーションも少ない状況です。
出典:Gartner 2024.11
IT運用部門が抱える構造的問題:DXの足かせに
DXを実現するには、IT部門全体が顧客価値の創出に注力し、アジャイル型の開発を推進する必要があります。しかしながら、Gartnerの調査では、I&O部門が依然として従来のレガシーシステムの運用に注力しており、DXを支える存在というよりも、むしろその障壁となっている場合があることが明らかになりました。
米田氏は、
現在のI&O部門は、レガシーシステムのウォーターフォール型運用を得意としていますが、この手法は現代の急速に変化するビジネス環境には適していません。その結果、開発チームと運用チームの間で対立が生じることもあり、DX推進のスピードを妨げる要因になり得ます
と述べています。
I&O部門がDXを支える存在に変わるには、運用トランスフォーメーションを実現することが不可欠です。このプロセスは、単なる技術的な変更にとどまらず、組織全体の運用モデルを根本から見直す必要があります。
運用トランスフォーメーションとDevOpsプラクティスの重要性
Gartnerは、I&O部門の運用モデルを刷新する手法として、DevOpsプラクティスの採用を提言しています。このプラクティスでは、開発チームと運用チームが一体となり、プロダクトの価値を最大化するための協調的な取り組みが重視されます。
米田氏は、
DevOpsプラクティスを通じて、ビジネスの変化に迅速かつ効率的に対応し、顧客価値の創出やリスクの最適化を実現することが求められます。これにより、I&O部門がDX推進の中核として機能する道が開かれるでしょう
と述べています。
次世代IT運用:インフラストラクチャ・プラットフォーム・エンジニアリングへの移行
Gartnerが提唱する次世代のI&O部門の形は「インフラストラクチャ・プラットフォーム・エンジニアリング (IPE)」です。このアプローチでは、クラウドを含む社内外のインフラリソースを活用し、開発チームに簡便なプラットフォームを提供することが目的です。
IPEは、インフラストラクチャをコード化する「コードとしてのインフラストラクチャ (IaC)」や「コードとしてのポリシー (PaC)」といった技術を活用し、俊敏性と安定性を両立する運用を可能にします。また、開発チームのニーズを的確に捉え、開発の生産性を向上させるためのプラットフォームを迅速に提供する役割を担います。
Gartnerディレクターアナリストの青山浩子氏は、
IPEは、I&O部門が企業のビジネス成長を支えるために必要不可欠な取り組みです。I&Oリーダーは、俊敏性とレジリエンスのバランスをとり、すぐに利用可能なプラットフォームを提供するスキルを強化することが求められています
と述べています。