企業のコーポレートガバナンス改革
経済産業省は2024年9月18日、第1回 「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会を開催しました。
日本企業の国際競争力を高め、長期的な成長を支えるため、コーポレートガバナンス改革の重要性が改めて強調されています。この記事では、コーポレートガバナンスが求められる背景、意義、そして今後の展望などについて取り上げたいと思います。
コーポレートガバナンスが求められている背景・意義
コーポレートガバナンスの強化は、企業の経営を透明かつ健全に保ち、長期的な企業価値を向上させるために必要不可欠です。
日本では、社外取締役の導入や取締役会の改革が進んできましたが、これらの取り組みは単に形式的なものにとどまらず、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上につながるものとして、重要度が高まっています。
日本の企業は1990年代以降、旺盛な国内投資から貯蓄主体へと転換し、経済成長の原動力を失いつつあります。そのため、政府は企業に対し、単なるコストカットではなく高付加価値を生み出す経営への転換を促しており、その一環として、コーポレートガバナンス改革が位置づけられています。
日本企業の国際競争力
日本企業の国際競争力は、特に製造業や技術開発においてかつては高い評価を受けていましたが、近年ではその競争力が低下しています。
日本の主要製品における市場占有率は減少傾向にあり、労働生産性や企業の収益性も欧米と比較して低い水準にとどまっています。例えば、日本企業のROE(自己資本利益率)は欧米企業よりも低く、結果として株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)も同様に低い数値となっています。
このような現状を打開するためには、単に市場競争に勝つための戦略を見直すだけでなく、企業全体の運営方針や組織体制を再構築し、長期的な成長を目指す「稼ぐ力」を強化することが必要です。そのためにも、コーポレートガバナンスの強化が不可欠となっています。
日本企業のコーポレートガバナンス改革の進め方
コーポレートガバナンス改革の意義は、企業が短期的な利益追求に偏ることなく、長期的な視点で経営判断を行い、企業価値を持続的に高めるための基盤を構築することにあります。
今回の研究会では、日本企業が「稼ぐ力」を高めるために、具体的なコーポレートガバナンス改革の進め方について議論を進めています。
本研究会では、社外取締役の実効性を高めること、取締役会の監視機能を強化することが重要視されています。また、企業の持続的な成長と価値創造を実現するため、事業ポートフォリオの見直しや人的資本の活用といった経営手法の重要性も示しています。
これらの改革を進めるにあたって、単に法令やガイドラインの遵守にとどまらず、企業が自らのガバナンスの在り方を見直し、積極的に改善していくことが求められています。また、よりグローバルスタンダードに適合した体制への転換が求められています。
今後の展望
コーポレートガバナンス改革は、企業の「稼ぐ力」を強化するための基盤としての進展が期待されています。
本研究会では、今後
・ 「稼ぐ力」の強化に向けて、どのような考え方や方法でコーポレートガバナンス改革を行う必要があるか
・ どのようにして、日本企業のコーポレートガバナンス改革を後押しするか
というテーマで検討を進めていく方針です。
日本企業の「稼ぐ力」を強化するためのコーポレートガバナンス改革には、実質的な効果を重視した取り組みが求められます。単に形式を整えるだけでなく、企業の長期的な成長を促す仕組みづくりも重要となるでしょう。
企業は中長期的な視点から自社のガバナンス体制を見直し、柔軟かつ実効的な経営判断ができる体制を構築することが重要です。このような中で、政府の研究会はどのようなコーポレートガバナンス改革の後押しができるのか、引き続きウオッチしていきたいと思います。