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AIの進展でデータセンターの電力消費とコストは急増する -IDC調査から

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2024年9月24日、IDCはデータセンターに関するレポートを発表し、データセンターにおける電力消費の増加と、それに伴う運用コストの上昇について詳しく分析しています。デジタル経済の中心を担うデータセンターは、今後さらなる需要の増加が見込まれ、成長と投資の焦点として位置づけられていますが、同時に電力価格の上昇も大きな課題となっています。

IDC Report Reveals AI-Driven Growth in Datacenter Energy Consumption, Predicts Surge in Datacenter Facility Spending Amid Rising Electricity Costs

AIがもたらすエネルギー消費の急増

AIワークロードの増加により、データセンターの容量拡大と電力消費の急激な増加が予想されます。IDCのレポートによれば、2027年までのデータセンターのAIワークロード容量は年平均成長率(CAGR)40.5%で成長し、電力消費は44.7%の成長率で増加し続けると予測しています。AIの計算処理は従来の業務と比較してエネルギーを多く消費するため、データセンター全体の電力消費におけるAIの割合が増加すると見込んでいます。

データセンター全体の電力消費の増加と影響

2023年から2028年にかけて、世界のデータセンター全体の電力消費量は年平均19.5%で増加し、2028年には857テラワット時(TWh)に達すると予測されています。このような電力消費の増加により、データセンターの運用コストも大幅に上昇することが懸念されています。

電力価格は、需給バランス、環境規制、地政学的リスク、気候変動による極端な気象条件などの要因によって上昇傾向にあります。IDCは、過去5年間で電力価格が上昇してきたこれらの要因が今後も継続する可能性が高いと指摘しています。このため、電力消費の増加と相まって、データセンターの運用コストが不確定な範囲で大幅に上昇する可能性があります。

IDCは、2023年時点で1MWのIT負荷を持つデータセンター(稼働率50%、PUE1.5)のシナリオ分析を行い、アメリカ、ドイツ、日本のエネルギー価格成長率を使用して、電力コストの成長シナリオを予測しました。全てのシナリオにおいて、電力コストは年平均成長率(CAGR)15%以上で増加し、多くの場合20%以上の成長が見込まれています。

データセンター効率向上と再生可能エネルギーの役割

データセンターの効率を向上させるための選択肢として、チップの効率向上や液体冷却技術、データセンター設計の再考など、さまざまな技術的ソリューションが存在します。

IDCの研究ディレクターであるショーン・グラハム氏は、エネルギー効率の向上だけでなく、再生可能エネルギーへの投資も重要だと述べています。クラウドやコロケーションサービスを提供するデータセンター事業者は、顧客の持続可能性目標をサポートするためにも、再生可能エネルギーへの優先的な投資が求められるとしています。

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、環境への影響を低減するだけでなく、電力のライフサイクルコストを最も抑えることができます。また、再生可能エネルギーの発電源に近接してデータセンターを設置することで、建設コストやエネルギー損失を削減し、効率と持続可能性を高めることができます。電力網の信頼性の問題を解消することで、レジリエンス(回復力)向上への期待もあります。

データセンターはデジタル経済を支える重要なインフラであり、今後の成長が期待される一方で、電力消費とコストの増加が大きな課題となっています。AIワークロードの増加が、エネルギー消費を加速させる要因となっています。しかし、技術的な効率化と再生可能エネルギーの活用により、コストの増加を抑えつつ、持続可能な運用を実現する道筋が示されています。今後、データセンター事業者はこれらの課題にどのように対応するかが、競争力を左右する重要な要素となるでしょう。

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