アジア太平洋地域における中小企業のサイバーセキュリティ市場、2027年までに60億ドルを超える成長見通し
アジア太平洋地域(日本を含む、以下APJ)のサイバーセキュリティ市場は急速に拡大しつつあります。
IDCが2024年10月13日に公表したレポート「Tech Marketing Leaders Playbook: Capitalizing on SMB and Midmarket Security Spending for Growth in Asia/Pacific (Including Japan)」によると、中小企業および中堅企業(SMBとミッドマーケット)のセキュリティ支出は2027年までに120億ドルを超えると予測され、そのうち60億ドル以上がサイバーセキュリティ関連に割り当てられる見込みです。
2023年の7.6億ドルから5年間で年平均成長率(CAGR)は13%と見込まれており、特に中小企業セグメントが市場を牽引しています。
サイバー脅威の増加とセキュリティ投資の拡大
昨今、ランサムウェア攻撃などのサイバー脅威は地域全体で増加傾向にあり、これに対応するため大企業のみならず、中小企業もサイバーセキュリティへの投資を加速させています。IDCの「Security Spending Guide」によると、2023年のアジア太平洋地域全体でのセキュリティ支出は76億ドルに達し、2027年までに120億ドルに達する見通しです。
このような状況下で、中小企業およびミッドマーケット企業は、地域全体のセキュリティ支出の46%を占める主要な市場セグメントとして位置づけられています。
地域ごとの規制とセキュリティ戦略の複雑化
アジア太平洋地域内では、各国のセキュリティ規制が統一されておらず、サイバーセキュリティに関する取り組みの一貫性に欠ける点が課題です。
特にインド太平洋地域での地政学的緊張や、AI技術を活用したサイバー脅威が増加する中で、各国はサイバー防衛力を強化するための戦略的提携や協力関係を模索しています。
オーストラリア、日本、中国はセキュリティソリューションに対する支出が最も高いとされており、インドの中小企業・ミッドマーケット企業は、セキュリティ関連支出の成長率でトップに立つと予測されています。
IDCの調査マネージャーであるSupriya Deka氏は、
APJ地域での変化するセキュリティ環境において、ベンダーは国ごとに異なるセキュリティ規制に対応した戦略を採用する必要があります。ローカライズされたコンプライアンスソリューションを提供することで信頼性を高めることが重要です。現地のベンダーやスタートアップ、政府機関との連携により、サイバーセキュリティの取り組みを強化する協力体制を構築することが成功の鍵となります
と述べています。
ベンダーにとっての成長機会
この市場成長において、セキュリティベンダーには多くの機会が広がっています。インド、日本、オーストラリアといった成長著しい国々において、地元のニーズに応じたソリューションの提供や、政府との連携が重要視されています。また、競争が激化する中で、差別化を図るために技術革新が求められています。