マーケティングリーダーが成果を示すための戦略的投資
ガートナーが2024年に発表した調査結果によると、CMO(最高マーケティング責任者)やシニアマーケティングリーダーの52%しか、マーケティングの価値を証明し、企業の目標達成への貢献を認められていないことが明らかになりました。
この調査は、2024年4月から5月にかけて、378人のシニアマーケティングリーダーを対象に実施されました。CFO(最高財務責任者)の40%、CEO(最高経営責任者)の39%がマーケティングの価値に懐疑的であり、これがマーケティング部門にとって大きな課題となっています。
ガートナーのシニアディレクターアナリストであるジョセフ・エネバー氏は、
マーケティングの価値を証明するための大きな障壁は、根強い誤解や認識の違いです。CMOの47%が、マーケティングは依然として『コスト』とみなされ、戦略的投資とは見なされていないと感じています
と述べています。この認識を変え、マーケティングが企業の成功に不可欠な戦略的要素であることを示すためには、持続的な教育とコミュニケーションが必要となっています。
長期的かつ包括的なアプローチでマーケティングの価値を証明
マーケティングの価値を効果的に証明し、経営層からの評価を得るためには、短期的な成果ではなく、長期的かつ包括的な視点でマーケティングの影響を捉えることが重要です。ガートナーの調査では、41%のシニアマーケティングリーダーがこのアプローチを採用しており、そのうち2/3がマーケティングの価値を証明し、企業への貢献を認められたと報告しています。
エネバー氏は
マーケティングの広範な価値を証明するには、セールスやカスタマーエクスペリエンス、オペレーションといった他の部門との関連性を測定することが求められます。成功指標を各部門やチームの目標に合わせて調整し、マーケティングの影響を広範に捉えることが効果的です
と述べています。
マーケティングには高度な指標の活用が鍵
マーケティングの価値を深く理解し、証明するためには、単純な指標ではなく、より高度な指標を活用することが推奨されます。ガートナーの専門家は、以下の3つの指標タイプを挙げています。
- 関係性指標: 顧客生涯価値(LTV)、顧客獲得コスト(CAC)、LTV比率
- 取引指標: 獲得単価(CPA)、広告費用対効果(ROAS)、投資利益率(ROI)
- 運用指標: ステークホルダーの満足度、マーケティングリソースの生産性、期待稼働率の達成度
これらの複雑な指標を組み合わせて使用することで、マーケティングの価値をより効果的に伝えることが可能です。2つ以上の高度な指標を取り入れたシニアマーケティングリーダーは、1つしか使用していないリーダーよりも1.4倍、まったく使用していないリーダーよりも1.8倍、マーケティングの価値を証明する可能性が高いという結果が得られているといいます。
データと分析への積極的な関与が成果を高める
データと分析にリーダーが積極的に関与することで、マーケティングの価値を証明し、評価される確率が大幅に向上します。例えば、マーケティングダッシュボードの作成や測定戦略の開発に関与しているリーダーは、そうでないリーダーに比べて1.4倍、マーケティングの価値を証明しやすいことが示されています。また、マーケティング分析チームと定期的に会合を持つリーダーの62%が、価値を証明し評価されている一方で、会合を持たないリーダーではその割合は30%にとどまります。
人材投資による課題解決
マーケティングの価値を証明する上での主な障壁として、人材関連の課題が挙げられています。必要なソフトスキルやコンピテンシー、データ分析に必要な専門知識の不足が大きな課題です。これらのギャップを埋めるためには、適切な人材投資が不可欠です。
エネバー氏は
CMOは、これらの人材関連の障壁を克服することで、マーケティングの価値を効果的に証明し、評価されることが可能です。ソフトスキルを強化し、分析スキルのギャップを埋めることで、マーケティング部門はより戦略的な洞察を提供し、企業の成長に貢献できる組織となるでしょう
と述べています。
今後の展望
ガートナーの調査結果から、マーケティングリーダーが成果を示し、評価されるためには、長期的かつ包括的な視点を持ち、複雑な指標を効果的に活用することが重要であることがわかりました。さらに、データと分析活動への積極的な関与と、適切な人材投資によって、マーケティングは「コスト」から「戦略的投資」として認識されるようになる可能性があります。CMOにとって、これらの取り組みはマーケティング部門が企業全体の成功に貢献するための不可欠なアプローチとなっています。
出典:ガートナー 2024.9