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日本の水素政策

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水素は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた鍵となるエネルギー源として、国内外で注目されています。水素社会の実現に向けては、サプライチェーンの構築が重要な鍵となっており、日本の水素政策による後押しが求められています。

経済産業省は2024年9月6日、「第24回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ」を開催しました。

本部会で公表した水素を取り巻く国内外情勢と水素政策の現状の資料をもとに、国内外の水素情勢と日本の政策、サプライチェーン構築に向けた取り組みを取り上げていきたいと思います。

国内外の水素を取り巻く情勢

カーボンニュートラルを目指す世界の動きの中で、水素はクリーンなエネルギー源として注目されています。国際エネルギー機関(IEA)の「Net-Zero Roadmap」によると、2050年までに世界の水素需要は2022年の約5倍に増加する見込みです。

鉄鋼や化学といった「hard to abate」セクターや、モビリティ、発電分野での利用が期待されており、各国で水素技術の開発が進められています。

欧州では「欧州水素銀行」や「H2グローバル」、米国では「インフレ削減法(IRA)」による税額控除などの支援策を導入し、グリーン水素や低炭素水素の普及を加速させています。また、企業への大規模な投資も進め、持続可能な水素供給体制の構築を目指しています。

水素の重要性

水素は、2050年カーボンニュートラル達成に向けた主要なエネルギー源です。鉄鋼や化学などの脱炭素が困難な産業分野では、水素を用いた技術が注目されています。また、水素はモビリティ分野や発電分野でもクリーンエネルギーとして重要な役割を果たします。アンモニアや合成メタンなどの水素を基盤とする燃料も、産業用熱や発電などでの利用が期待されています。

IEAの報告によれば、産業、発電、モビリティ分野での水素需要が急速に拡大し、世界的な需要増加を予測しています。脱炭素化が難しい分野において、水素が効果的な解決策の一つとして期待も高まっています。

出典: 経済産業省 第24回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ 2024.9

日本の水素政策の現状

日本は、2017年に世界初の「水素基本戦略」を策定し、水素技術の開発と導入でリーダーシップを発揮してきました。2023年には同戦略を改定し、2040年までに年間1200万トンの水素供給を目指す方針を打ち出しています。

2024年5月には「水素社会推進法」が成立し、水素の供給コストを削減し、利用拡大を図るための規制緩和と支援が一体化した施策を導入しています。

これらの政策に基づき、燃料電池や水素発電技術の開発を進め、国内外の企業との連携を強化し、商業化に向けた取り組みを加速させています。

水素社会の広がり

水素社会の実現に向けた動きは、世界的にみても市場は拡大しています。日本では、水素技術の商業化に向けた取り組みを進め、燃料電池や水素発電技術の開発が注目されています。欧州では「水素CfD制度」や「欧州水素銀行」、米国では「超党派インフラ法」などが導入され、企業による大規模投資も行われています。

国内では、2025年に開催される大阪・関西万博で水素発電技術の実証が予定されており、日本の技術が世界に向けて発信される重要な機会となります。万博が、国内外での水素技術の普及の契機となり、水素社会の実現が現実味を帯びていくことが期待されます。

出典: 経済産業省 第24回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ 2024.9

水素のサプライチェーン構築に向けた取り組み

水素社会の実現には、サプライチェーンの安定した構築が不可欠となっています。日本政府は「水素社会推進法」に基づき、既存の化石燃料との価格差に注目した支援制度を導入し、供給と利用の拡大に向けた施策を進めています。

中でも港湾や道路、パイプラインなどのインフラ整備が重要視されており、これらの基盤を整備することで水素供給の効率化が進められています。

水素の保安面でも新たな措置が導入されており、供給の安全性を確保しつつ、事業の迅速な展開を支援する仕組みが整備されています。水素供給事業者と利用事業者が連携し、効率的なサプライチェーン構築が期待されます。

出典: 経済産業省 第24回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ 2024.9

今後の展望

水素技術の商業化とサプライチェーンの構築には、コスト削減と技術革新が鍵となります。日本がグローバル市場で競争力を維持し加速させていくためには、技術の進化とコストの最適化が求められます。

国際的な水素市場の透明性と信頼性を確保するための標準化も重要です。日本はG7広島サミットにおいて、国際的な水素市場形成に向けた協力を強調しており、今後も国際連携を強化していく方針です。

2025年の大阪・関西万博での水素発電技術の実証は、日本の水素技術が世界に認知される重要な機会となり、国内外での水素需要の拡大の契機となるでしょうか。

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