世界の自動車産業と日本の基本戦略
世界の自動車産業は大きく進展しています。経済産業省は2024年8月6日、「第25回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 産業構造転換分野ワーキンググループ」を開催。本WGでは自動車分野のカーボンニュートラルに向けた国内外の動向等についての議論があり、その中から世界の自動車産業の市場構造と日本の自動車産業の立ち位置について、取り上げたいと思います。
世界の自動車産業の市場構造
2023年の世界自動車販売台数は約8,842万台に達し、その中でも中国、北米、欧州が主要な市場となっています。
中国:約3,005万台が販売され、市場の最大シェアを誇ります。中国国内市場の87%を現地生産でまかなう一方、輸入自動車のシェアはわずか1%にとどまっています。この圧倒的な国内供給力が、中国自動車産業の競争力の源泉となっています。
北米:1,924万台が販売され、そのうち34%が日本からの輸出によるもので、日本車が非常に強いシェアを持っています。アメリカ市場は、現地生産と輸出のバランスが重要です。
欧州:1,687万台が販売され、89%が現地生産です。欧州市場では、各国の自動車メーカーが市場の大部分を占めていますが、日本からの輸出も一部見られます。
その他の主要市場には、ASEAN諸国やインドがあり、これらの地域では輸出入や現地生産の複雑な構造が見られます。日本市場においては、94%が日本国内の現地生産で、輸出はわずか6%にとどまっています。
電動化の市場動向と各国のEV推進
自動車業界では、電動化が急速に進展しています。世界全体でのEV(電気自動車)販売比率は約10%に達し、特に中国が17%と他の地域をリードしています。欧州、米国、タイでも電動化が進んでおり、EV普及が拡大しています。一方で、日本ではまだ2%に留まっており、電動化の進行が遅れているのが現状です。
2021年末から日本で新たに販売されたEV・PHEV(プラグインハイブリッド車)の車種数は増加しており、トヨタや日産、三菱などが新たなモデルを市場投入しました。特にトヨタは初のEV「bZ4X」を発表し、徐々に普及が拡大しています。
日本の自動車産業における基本戦略
日本政府は、多様な技術を組み合わせた「マルチパスウェイ戦略」を推進しており、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車をバランスよく展開することで、カーボンニュートラルの実現を目指しています。EV普及が進む中で、日本は「EVでも勝つ」「内燃機関でも勝ち続ける」ための競争力強化を掲げています。
日本国内では、EV推進を図るための産業基盤整備が進められており、2024年に向けて国内投資支援や充電インフラの整備が行われる予定です。また、国内の自動車部品サプライヤーや整備事業者に対しても、構造転換を支援する施策も展開しています。
各国の電動化目標
各国は自動車電動化に向けた積極的な目標を掲げています。例えば、イギリスやEUは2035年までに新車販売の100%をEVおよびFCVとする目標を掲げており、米国やカナダもこれに続いています。一方で、中国は2027年までにEV・PHV・FCVのシェアを45%にする目標を設定し、積極的に電動化を推進しています。日本は2035年までに電動車(EV、PHV、HEV)の100%化を目指す方針を示しています。
今後の展望
電動化社会に向けた取り組みが各国で加速する中、日本の自動車産業は、電動車の導入支援や充電インフラの整備、蓄電池産業の育成を含む包括的な戦略を推進しています。特に、サプライヤーの構造転換支援が重要なポイントとなり、日本が世界の電動化競争に勝ち残るための重要なアプローチとなるでしょう。
今後、国内外の政策や技術革新に対応しつつ、日本の自動車産業は、世界市場において、EV市場での競争力をさらに高め、内燃機関においても引き続き強い存在感を維持することが期待されます。
世界の自動車産業は急速に変化し電動化が進む中で、持続可能な産業構造を築くための取り組みがますます重要になっていくでしょう。