オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

日本のスタートアップが置かれている状況と支援政策

»

経済産業省は2024年3月6日、「第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会」を開催しました。

この中から、日本のスタートアップ政策の現状と課題について取り上げたいと思います。

スタートアップとは

経産省ではスタートアップについて以下のとおり整理しています。

① スタートアップとは、一般に、以下のような企業をいう。

1. 新しい企業であって、
2. 新しい技術やビジネスモデル(イノベーション)を有し、
3. 急成長を目指す企業

② スタートアップの意義

・スタートアップは、経済成長のドライバー。将来の所得や財政を支える新たな担い手。
・スタートアップは、雇用創出にも大きな役割。
・スタートアップは、新たな社会課題を解決する主体としても重要。

日本のスタートアップが置かれている状況

日本もユニコーン(企業価値10億ドル超の非上場企業)を創出していますが、そのスピードや規模は米国や中国に遠く及ばず、世界との差が開いている状況となっています。

また、SaaS系を中心に起業家や投資は増えつつありますが、日本としてポテンシャルを有するテック分野の育成はまだ不十分であると指摘しています。

さらに、創業時・成長を支えるVC等によるリスクマネーの供給も、米欧に大きく劣後する状況となっています。


出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

日本におけるスタートアップ政策の歩み

経産省では、 2022年を「スタートアップ創出元年」と銘打ち、各種政策を推進してきています。

スタートアップ育成5か年計画」では、2022年1月の岸田総理の「スタートアップ創出元年」宣言を受けて、同年11月に、今後5年間の官民によるスタートアップ集中支援の全体像をとりまとめ。人材、資金、オープンイノベーションを計画の柱として位置付け、網羅的に課題を整理しています。

「スタートアップ育成5か年計画」の目標は、

・5年後の2027年度にスタートアップへの投資額を10倍を超える規模(10兆円規模)にする
・ 将来においては、ユニコーンを100社、スタートアップを10万社創出することにより、世界有数のスタートアップの集積地となることを目指す

としており、第1の柱が人材・ネットワークの構築、第2の柱が資金供給の強化と出口戦略の多様化、そして第3の柱がオープンイノベーションの推進 です。

5年後の目標と3つの柱

スタートアップの起業数増加、規模の拡大を大きな目標にして、プレシード・シード、アーリー・ミドル、レイターでのステージ毎の支援を展開しています。

出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

スタートアップの「芽」が着実に育っている

国内スタートアップの資金調達額は、直近10年間で約10倍に成長しており、2013年の877億円から、2023年には8,500億円程度の投資額となっています。

また、大学発ベンチャー企業数は毎年増加傾向で、2022年は過去最高の伸びとなっています。2014年は1,749社から、→2022年には3,781社となっています。

国内ユニコーン数は時価総額10億ドル以上のユニコーンが出現しています。2015年は0社でしたが、2023年には7社となっています。

大学生のスタートアップ就職希望しており、総合科学技術・イノベーション会議資料によると、大学生の約半数がスタートアップに就職するという状況となっています。

スタートアップによる資金調達額の推移

国内スタートアップの資金調達額は、2022年まで順調に増加。世界的に資金調達状況が厳しくなっていることもあり、2023年の調達額は前年度に比べて減少し、7,536億円(1,000億は追加の見込み)しています。


出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

上場スタートアップの時価総額比較

日本の上場時時価総額の中央値は100億円程度であり、米国と比較するとスモールな上場企業が多くなっています。とはいいつつ、メリカリをはじめ、大きな企業も出てきています。


出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

増える大学発ベンチャー数

「令和4年度大学発ベンチャー実態等調査」によれば、大学発ベンチャー数は、2021年度調査から477社増加し、3,782社となっています。2014年度以降、企業数は毎年増加傾向にあり、企業数及び増加数は過去最多となっています。


出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

2020年度〜2022年度における関連大学別の大学発ベンチャー数について、上位2大学に変動はなく、東京大学が最多で京都大学、2022年度は慶應義塾大学、筑波大学と続いています。

2021年度と比較した増加率について、情報経営イノベーション専門職大学、秋田大学、近畿大学、高知大学で増加率が150%以上と高くなっています。


出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

これまでの経産省の主なスタートアップ政策

これまでの経産省の主なスタートアップ政策は人材関係では、ストックオプション税制、未踏の拡充・横展開、スタートアップビザなどに取り組んでいます。


出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

また、資金関係では産業革新投資機構(JIC)によるスタートアップへの出資、エンジェル税制などに取り組んでいます。


出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

事業関係では、J-StarX、Japan Innovation Campus、オープンイノベーション促進税制などに取り組んでいます。

出典:経済産業省 第2回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会 2024.3.6 Select an Image

今後の展望

経済産業省ではスタートアップ育成5か年計画の着実な実施を進めていくために、5か年計画に掲載されたスタートアップ関連施策について、予算・税制・法律改正等も含め、検討・要求・執行等の「着実な実行」を改めて徹底していくとしています。

世界的に資金供給環境が悪化している中で、投資額を2022年度からの5年で10倍にするとの目標を掲げているスタートアップ育成5か年計画の出口も見据えつつ、以下について重点的に取り組む方針です。

① 成長資金・育成支援の担い手である機関投資家、海外投資家等からの資金供給の拡大
② 成長を支える優秀な人材の確保
③ グローバルなスタートアップエコシステムの構築
④ スタートアップ育成の地域展開
⑤ 技術を活かしたスタートアップの創出拡大及び成長促進
⑥ 主要な産業分野に特化したスタートアップ支援の強化
⑦ メガスタートアップ創出に向けた集中支援
⑧ スタートアップ・大企業間のオープンイノベーション等の促進・出口戦略の多様化と上場後の成長支援
⑨ スタートアップ・新規事業を育む規制環境整備

AIの進展などデジタル化がさらに加速化する中、世界に負けないスタートアップを創造するための、政府の政策的な支援もますます重要となっていくでしょう。

スクリーンショット 2024-03-16 17.36.59.png

Comment(0)