「アートと経済社会について考える研究会報告書」から
経済産業省は2023年7月4日、アート産業の振興について検討を行い、その課題や対応の方向性を取りまとめた「アートと経済社会について考える研究会」の報告書を公表しました。
出典:経済産業省 アートと経済社会について考える研究会 2023.7
アートと経済社会について考える研究会報告書開催の背景と議論のポイント
本報告書では、文化芸術は経済社会を支える主要なエンジンであるとの認識が世界的に共有されていますが、日本におけるアート市場規模はまだまだ小さいなど、文化芸術と実経済社会との間には隔たりがあると指摘しています。
経済産業省では、アートの持つ経済産業的意義を確認しつつ、需要を拡大し、アートと経済社会が互いに支え合い発展していくようなエコシステムの構築に向けて「アートと経済社会について考える研究会」を設置し、これまで議論を積み重ねてきています。
本研究会での議論のポイントは以下の通りです。
・企業のアートに対する需要の拡大に向け、アートの企業競争力等に関するエビデンス等の周知・普及や、企業が過去に購入したアートの活用に向けた取組が必要であること
・地域活性化や観光需要獲得等の意義を踏まえ、地域においてアートを活かすためのノウハウを整理することが必要であること
・創造的な社会の実現に向け、多くの人々がアートに親しむことが重要であり、アートが社会生活に浸透しやすい環境整備に向け、多くの人に開かれた市場の設計が重要であること
・テクノロジーを用いたアートが、イノベーションを促す面も踏まえ、メディアアーティストの育成等が必要であること
報告書の章の構成は、以下のとおりです。
第1章:アートと経済社会について
第2章:アートと経済・産業
第3章:アートと地域
第4章:アートと流通・消費
第5章:アートとテクノロジー
これらの内容を理想としての統合エコシステムを以下のイメージにまとめています。
テクノロジーの可能性を発見するアートの経済産業的意義
特に、個人的に関心があるのが、第5章「アートとテクノロジー」です。
「アートとテクノロージー」の章の中から、内容を一部引用します。
アートはテクノロジーに触発されて製作・表現の幅を広げてきただけでなく、テクノロジーの社会実装にも貢献してきたと言われている。
アートは、デザインとは異なり実用的な目的に対する手段ではないため、AI・ロボティクス・ナノマテリアル・バイオ領域などの先端技術を含め、テクノロジーを新たな可能性を実験的に探索した製作や表現ができるといった特徴がある。
これによって、思いもしなかったテクノロジー用途の発見に資するという指摘や、テクノロジーの応用に関する議論も換気し、人々の認識を変更すること等ができるという指摘もある。
生成AIなどテクノロジーが進展する中で、テクノロジーの可能性を発見するアートの経済産業的意義について、議論を深めていくことも大切なのかもしれません。
「アートと経済社会について考える研究会」の報告書、かなり読み応えありますので、ぜひ、読んでみることをお勧めします。