スポーツの成長産業化とエコシステム
未来のスポーツの成長産業化の好循環に向けた創造について議論・検討されています。
経済産業省とスポーツ庁は2023年7月5日、「第二期スポーツ未来開拓会議中間報告」を公表しました。
経済産業省とスポーツ庁は、2016年に『スポーツ未来開拓会議』を開催し、日本のスポーツビジネスにおける今後の戦略的な取組を進めるための政策方針を検討してきました。
「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」が終了し、当時は想定もしていなかった新型コロナウイルス感染症のまん延など、さまざまな環境の変化が生じたことから、改めて同会議を再開し、議論を行ってきました。
本報告書は、今後のスポーツ産業の進むべき方向性について議論した結果を中間報告として取りまとめています。
今後も議論の深化を図り、今年度中を目処に、2030年代も見据えたこれからのスポーツ産業の在り方を「スポーツ産業ビジョン(仮)」として取りまとめる予定です。
スポーツの成長産業化に向けた好循環の創出
政府が進めるのは、スポーツの成長産業化に向けた好循環の創出です。少子化が進む中、「みる」スポーツと地域スポーツの好循環によるスポーツ産業の成長を目指しています。
みるスポーツの方向性や具体的取組
今回は、みるスポーツの方向性や具体的取組に焦点をあててみたいと思います。
エンターテインメントの選択肢が拡大している中、みるスポーツの更なる拡大には、観戦体験を高度化する新たなサービス展開やホスピタリティビジネスの拡大により、より一層のコンテンツの魅力拡大が必要となっています。
そのための方向性を以下のとおりまとめています。
①スポーツコンテンツの魅力向上
・最新技術を利用した視聴価値向上や、DXを活用した新たなサービス展開・スポーツ振興くじの充実等によりスポーツへの関心を喚起する。
②スポーツチームの価値に対する理解増進
・チームの存在が地域に多様な価値を生むことについて、チームが主体的に発信し、地域住民の理解を増進する。
③スポーツへの関心拡大に向けた取組の強化
・地元自治体による試合日程の周知・イベント主催や、スポーツチーム同士の連携による共同プロジェクトの取組を強化。
④ホスピタリティ関連ビジネスの拡大
・スタジアムアリーナにおける個室や特別席の設置、高価な飲食の提供、選手交流など様々なサービスによるイベントを高付加価値化。
⑤海外展開推進
・急速な少子高齢化を踏まえ、国内市場のみならず海外への市場展開を推進する。
⑥他産業との連携推進
・スポーツチームの有するリソースをオープン化することにより、民間企業・大学等と連携してイノベーションの創出を目指す。
⑦経営を担う優秀な人材と資金が循環するエコシステムの構築
・ スポーツチームへの投資による経営人材の呼び込み、それによる収益増加に伴う更なる人と資金の好循環を生み出すことを目指す
今後の具体的な取組は以下のとおりです。
• 「みる」スポーツに関する情報発信
• 「ホスピタリティ」によるスポーツ観戦文化の変革
• スポーツチームの価値算定手法の確立
• スポーツ産業の国際展開支援
• スポーツオープンイノベーションの促進
• アマチュアスポーツ団体等の「みる」スポーツへの展開支援
• スポーツ経営人材育成システムの検討
• スポーツ振興くじの魅力拡大
スポーツDX推進による収益拡大
みるスポーツの中でも注目されるのが、スポーツDX推進による収益拡大の取り組みです。
近年、スポーツでも放送・配信、ファンエンゲージメント、競技力強化、選手管理、審判・判定への活用など多くの分野でDXが進展しています。
スポーツDXによってビジネスを多角化し収益拡大につなげるため、必要なルール整備を進めるほか、さまざま活用されるスポーツデータ等の権利性を明確化し、無許諾利用への対応を進めることが必要としています。
そのための方向性を以下のとおりまとめています。
①スポーツDX推進に伴う各種ルール整備
スポーツDX推進によるビジネスの多角化のためには、それに伴うルールの整備が必要不可欠。
・ファンタジースポーツの国内で展開可能なサービスモデルを検討。
②スポーツデータ等の権利性の明確化
成績データ、選手の身体データ等のスポーツデータ等について、必ずしも権利性が明らかになっていない場合がある。
・データを活用したビジネス展開による収益創出や、データの無許諾利用等への対策のため、各スポーツ団体等の主催権等に基づくビジネスの実態も踏まえつつ、データの権利性・帰属主体等を明確に整理する。
③スポーツデータ、肖像権等の無許諾利用への対応
海外スポーツベッティング市場で我が国のリーグやチームのロゴ、選手の肖像や試合データ等が無許諾で利用されている実態がある。
・コンテンツホルダーにおけるデータの権利性を明確化し、無許諾利用に対する適切な対応を実施。
・ 我が国のスポーツが海外から賭けの対象になっていることに伴う予期せぬトラブルの防止。
今後の具体的な取組は以下のとおりです。
• 新しいサービスを適法に展開するためのガイドライン策定等の検討
• スポーツデータの権利性及びデータ・肖像権等の適切な活用方法等についての検討
• スポーツ団体や選手等に対するコンプライアンス教育の徹底
スポーツDX推進による収益拡大に向けての事例をいくつかみてみましょう。
<NFT×ファンタジー>
デジタルトレーディングカード(NFTカード)とファンタジースポーツの要素を取り入れたサービスは、海外では大きな人気を博しており、市場も成長基調にあります。
しかし、日本でのサービス展開のアウトラインが不明確で市場としては立ち上がっていません。
今後は、データの権利性などの明確化とインテグリティの強化が必要であるとしています。
日本のスポーツも海外スポーツベッティング市場において対象になっていることをふまえ、スポーツデータ等の権利を明らかにし、無断に使用された場合の対応策や、国内におけるインテグリティ対策を進める必要があるとしています。
例えば、海外では、民間のデータ会社が提供するモニタリングシステムを用いて不正を検知し、規制当局やスポーツ団体などに報告する取組が進んでいます。
今後の展望
日本のスポーツビジネスにおける今後の戦略的な取組を進めるための政策方針の検討を進め、今後のスポーツ産業の進むべき方向性、スポーツDX推進による収益拡大は期待されるところです。