量子コンピュータの代表的な技術方式とプレイヤー
経済産業省は2022年2月16日、「第4回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会」を開催しました。
この中から、量子コンピュータの代表的な技術方式とプレイヤーにとりあげたいと思います。
まずは、量子コンピュータの必要性です。
量子コンピュータは計算処理速度を劇的に高速化できるため、従来のコンピュータでは事実上計算ができない問題に対しても高速に計算することができます。
特に、①金融・交通分野等における組み合わせ最適化、②創薬・素材開発等における量子化学計算、③暗号解読等における素因数分解等の計算での活用が期待されるとしています。
今回のメインテーマとなる、量子コンピュータの代表的な技術方式とプレイヤーです。
量子コンピュータは、ゲート方式とアニーリング方式に大別され、このうち、日本企業は、アニーリング方式に注力しつつ、より長期の視点で、ゲート方式の開発も並行しています。
ゲート方式は、通常のコンピュータと同様に、あらゆる計算を実行可能な汎用型です。
一方、アニーリング方式は、膨大な組合せから最適な組合せを見つける「組合せ最適化問題」に特化しています。ゲート方式に比べ、集積化が容易であり、現時点で利用できる計算能力が高くなっています。
・量子アニーリング:量子ビットを用いて解析する方式(ゲート方式と比べ、回路がシンプルなため集積化が容易)
・シミュレーテッドアニーリング(擬似量子):スーパーコンピュータで量子状態を擬似的に再現する方式(精度はやや低い)
出典:経済産業省 第4回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2022.2
アニーリング方式を用いた組み合わせ最適化等において、日本企業は従来のスパコンでは解けないような実問題を解決するアプリケーション開発で先行しています。
出典:経済産業省 第4回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2022.2
ゲート方式とアニーリング方式は、アルゴリズムが全く異なりますが、部品技術やアプリケーションの開発スキル等については一定程度共通の部分もあるため、アニーリング方式の早期社会実装は、長期視点で見ればゲート方式の社会実装にも寄与する可能性があるとしています。
出典:経済産業省 第4回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2022.2
量子コンピュータとユーザの産業構造と主要プレーヤーマップもまとめています。主要企業は、全てのレイヤーを担う「垂直統合型(フルスタック)」の事業展開を進めているが、
IonQ等の専業スタートアップも現れ、水平分業化が進展する可能性があるとしています。
量子コンピュータ自身の市場のみならず、利用により大規模なユーザ市場が創出される見込みとしています。
出典:経済産業省 第4回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2022.2