「アルゴリズム/AIと競争政策
公正取引委員会は2021年3月31日、「デジタル市場における競争政策に関する研究会 報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」」を公表しました。
近年の急速な技術の進展により変化の激しいデジタル市場においては、公正かつ自由な競争を確保し、事業者の創意工夫を促すため、デジタル市場の取引実態や競争環境に即して、競争政策を有効かつ適切に推進していくことが重要となっています。
アルゴリズムやAI(人工知能)は、デジタル市場におけるイノベーションのプロセスの鍵となる技術であり、多くの事業者がアルゴリズムやAIを利用して事業活動を行っています。そのため、デジタル市場における競争政策の推進のためには、アルゴリズムやAIがもたらす事業活動や競争環境の変容を理解することが重要としています。
アルゴリズムやAIは、事業活動を効率化させ、消費者の利便性を向上させるなど社会に大きな便益をもたらす一方で、アルゴリズムやAIを利用した反競争的行為について海外当局が措置を講じた事例が出てきているなど、我が国においても、アルゴリズム/AIと競争政策を巡る課題・論点について検討する必要性が高まっていると指摘しちえます。
こういった状況を踏まえ、公正取引委員会は、デジタル市場における独占禁止法・競争政策上の諸論点や課題について研究を行うことを目的として、経済取引局長主催の「デジタル市場における競争政策に関する研究会」を開催し、アルゴリズム/AIと競争政策について検討を行い、同研究会の報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」が取りまとめを公表しています。
今回の報告書では、「アルゴリズム/AIと競争政策について、以下のとおり、5つの項目で整理しています。
1.アルゴリズム/AIと協調的行為
2.ランキング操作
3.パーソナライゼーション
4.アルゴリズム/AIと競争力
5.デジタルプラットフォームとアルゴリズム/AIの課題
出所:公正取引委員会 デジタル市場における競争政策に関する研究会 報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」2021.3
アルゴリズム/AIと協調的行為では、デジタル化やeコマースの進展に伴い、多様な目的で価格調査や価格設定のアルゴリズムが用いられるようになっています。
そのため、価格設定・価格調査アルゴリズムにより価格競争が活発になる場合がある一方,その利用の態様によっては協調的な価格設定につながり得る可能性を指摘しています。その一方、アルゴリズムを利用した協調的行為には、競争事業者間の「意思の連絡」が明らかではない場合がある点も指摘しています。
アルゴリズムによる協調的行為を4つの類型に分け、独占禁止法上の考え方を検討しています。
1)監視型アルゴリズム
2)アルゴリズムの並行利用
3)シグナリングアルゴリズム
4)自己学習アルゴリズム
出所:公正取引委員会 デジタル市場における競争政策に関する研究会 報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」2021.3
デジタルプラットフォームとアルゴリズム/AIの課題については以下のとおり、整理しています。
出所:公正取引委員会 デジタル市場における競争政策に関する研究会 報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」2021.3
公正取引委員会では、アルゴリズム/AIに関連する独占禁止法上・競争政策上の問題に積極的に対処していくことを期待しているとしています。