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2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド

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調査会社のガートナーは2020年11月17日、「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の2021年版を発表しました。

「企業は、新型コロナウイルス感染症の危機への対応から成長の推進へと向かう上で、2021年のトレンドのテーマを形成する3つの主な領域に注力する必要性を示しています。

3つの主な領域は

『People Centricity (人中心)』
『ロケーションの独立性』
『レジリエンスの高いデリバリ』

です。

社員一人ひとりが、場所にこだわらず分散により業務をこなしていくことで、レジリエンスの高い事業ができることは大きな利点となるでしょう。

ガートナーでは、2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを以下のとおり、9つを示しています。

振る舞いのインターネット

多くのテクノロジが人々の日常に関する「デジタル・ダスト (粒度の小さいデータ)」を捕捉して使用できるようになっており、振る舞いのインターネット (IoB: Internet of Behaviors) と呼ばれる状態が生じています。IoBは、顔認識、位置情報の追跡、ビッグ・データといった、個人に焦点を絞ったテクノロジを組み合わせ、結果として生じたデータを、関連する人の振る舞い (現金での購入、デバイスの使用など) に結び付けるものです。

企業は、こうしたデータを使って人の振る舞いに影響を与え始めています。例えば、COVID-19のパンデミックにおける感染防止策の遵守状況をモニタリングするために、企業はIoBを活用してコンピュータ・ビジョンで従業員のマスク着用を確認したり、熱画像カメラで発熱している従業員を特定したりしています。

2025年末までに、世界人口の半分以上が少なくとも1つのIoBプログラム (商用または政府) の対象になるとガートナーは予測しています。IoBは技術的には実現可能ですが、人々の振る舞いに影響を与えるために用いられるさまざまなアプローチについて、倫理的・社会的な幅広い議論が行われるでしょう。

トータル・エクスペリエンス

前出のバークは次のように述べています。「ガートナーは2019年に『2020年の戦略的テクノロジ・トレンド』としてマルチエクスペリエンスを紹介しましたが、『2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド』では、この概念をさらに発展させてトータル・エクスペリエンス (TX: Total Experience) としています。TXは、マルチエクスペリエンスを、カスタマー・エクスペリエンス、従業員エクスペリエンス、ユーザー・エクスペリエンスと結び付ける戦略です。今後3年間で、TXを提供する組織は競合他社を上回る主要な満足度評価指標を達成するとガートナーは予測しています」

主としてCOVID-19の影響により、やりとりのモバイル化、仮想化、分散化が進んでいるため、企業にはTX戦略が必要となっています。TXでは、複数のステークホルダーのエクスペリエンスを向上させ、革新的なビジネス成果を達成することを目指します。パンデミックから回復しながら、エクスペリエンス・ディスラプター (エクスペリエンスの創造的破壊者) となり得る新たなテクノロジを活用して差別化を図ろうとする企業に対して、このように重なり合うエクスペリエンスはいくつもの重要なビジネス・モーメント (機会) をもたらします。

プライバシー強化コンピュテーション

世界のデータ保護規制が成熟に向かいつつあるため、あらゆる地域のCIOは、かつてないプライバシーとコンプライアンス違反のリスクに直面しています。静止中のデータに対する一般的なセキュリティ・コントロールとは異なり、プライバシー強化コンピュテーションは、機密性やプライバシーを保持しながら、使用中のデータを保護します (ここでのコンピュテーションとはプライバシー保護のための暗号化、秘密計算といった処理を指します)。

2025年までに、大企業の半数は、信頼されていない環境や、マルチパーティ・データ・アナリティクスのユースケースにおけるデータ処理のためにプライバシー強化コンピュテーションを実装するとガートナーはみています。企業は、個人データの移転、データ収益化、不正分析といった機密性の高いデータを扱うユースケースを必要とするデータ処理活動を評価して、プライバシー強化コンピュテーションの候補の特定に着手すべきです。

分散クラウド

分散クラウドとは、パブリック・クラウド・サービスをさまざまな物理的な場所に分散させ、パブリック・クラウド・プロバイダーがサービスのオペレーション、ガバナンス、進化に対する責任を引き続き負うというものです。分散クラウドは、低遅延とデータ・コスト削減のニーズと、データ・レジデンシの要件を抱える組織のシナリオに対して、俊敏な環境を提供します。また、データとビジネス活動が発生する物理的な場所の近くにクラウド・コンピューティング・リソースを配置するという顧客のニーズにも対応します。

2025年までに、クラウド・サービス・プラットフォームの大部分は、ニーズ発生地点で実行される少なくとも何らかの分散クラウド・サービスを提供するようになるでしょう。バークは次のように述べています。「分散クラウドは、プライベート・クラウドに取って代わる可能性があり、エッジ・クラウドをはじめとする、クラウド・コンピューティングの新しいユースケースをもたらします。分散クラウドは、クラウド・コンピューティングの未来を示しているのです」

場所を問わないオペレーション

場所を問わないオペレーションとは、あらゆる場所に存在する顧客をサポートし、従業員がどこでも仕事ができるようにし、分散インフラストラクチャ全体にわたるビジネス・サービスの展開を管理するように設計されたITオペレーティング・モデルを指します。これは、在宅勤務や、顧客との仮想的なやりとりだけにとどまるものではなく、5つの中核領域 (コラボレーションと生産性、セキュア・リモート・アクセス、クラウド/エッジ・インフラストラクチャ、デジタル・エクスペリエンスの定量化、リモート・オペレーションをサポートする自動化) にわたる付加価値の高い独自のエクスペリエンスを提供します。

2023年末までに、企業の40%は、場所を問わないオペレーションを適用して、仮想世界と物理世界を融合させた、最適化されたカスタマー/従業員エクスペリエンスを提供するようになるでしょう。

サイバーセキュリティ・メッシュ

サイバーセキュリティ・メッシュによって、資産や人がどこに存在するかを問わず、誰もがあらゆるデジタル資産にセキュアにアクセスできるようになります。クラウド・デリバリ・モデルを通じてポリシーの意思決定とポリシーの適用が分離され、アイデンティティがセキュリティ境界になります。2025年までに、サイバーセキュリティ・メッシュは、デジタル・アクセス制御リクエストの半分以上をサポートするでしょう。

前出のバークは、次のように述べています。「COVID-19のパンデミックによって、デジタル企業の『インサイド・アウト (内から外へ)』という数十年にわたるプロセスが加速されました。われわれは転換点を越え、今では企業のサイバー資産のほとんどが、従来型の物理的/論理的なセキュリティ境界の外にあります。場所を問わないオペレーションが進化し続けるにつれて、サイバーセキュリティ・メッシュは、制御されていないデバイスからクラウド上のアプリケーションと分散データにセキュアにアクセスしてそれらを使用するための、最も実用的なアプローチになるでしょう」

インテリジェント・コンポーザブル・ビジネス

バークはさらに次のように述べています。「効率化を目的として構築された静的なビジネス・プロセスは非常に脆弱なため、パンデミックの衝撃を受けて崩壊しました。CIOおよびITリーダーは、そうした事態を改善しようと懸命に努力し、ビジネス変化のペースに適応するビジネス・ケイパビリティの重要性を理解し始めています」

インテリジェント・コンポーザブル・ビジネスは、有益な情報にアクセスしてそれに俊敏に対応することで、意思決定を抜本的に改革します。例えば、将来的には、データと洞察で構成される豊富なファブリックによって、マシンの意思決定が強化されるでしょう。インテリジェント・コンポーザブル・ビジネスは、再設計されたデジタル・ビジネス・モーメント、新たなビジネスモデル、自律的なオペレーション、新しいプロダクト/サービス/チャネルを実現する道を開きます。

AIエンジニアリング

ガートナーの調査では、人工知能 (AI) プロジェクトのプロトタイプから本稼働に移行しているのは、全体の53%にすぎません。CIOおよびITリーダーは、AIプロジェクトを拡大させることが困難だと感じています。その理由は、本稼働クラスのAIパイプラインを構築・管理するツールの不足です。AIの本稼働への道は、換言すれば、AIエンジニアリングへの着手です。AIエンジニアリングでは、機械学習やナレッジ・グラフといった、運用化されたさまざまなAI/意思決定モデルのガバナンスとライフサイクル管理に重点が置かれます。

AIエンジニアリングは、DataOps、ModelOps、DevOpsの3つの核となる柱に基づいています。堅牢なAIエンジニアリング戦略は、AIへの投資から最大限の価値を引き出しながら、AIモデルのパフォーマンス、拡張性、解釈可能性、信頼性を向上させます。

ハイパーオートメーション

ビジネス主導のハイパーオートメーションとは、企業が規律をもって、できる限り多くの承認されたビジネス・プロセスとITプロセスを迅速に特定・精査し、自動化するアプローチです。ハイパーオートメーションは過去数年にわたって容赦ないペースで勢いを増していますが、パンデミックによって、すべてが「デジタル・ファースト」であることが突然求められるようになり、需要が高まっています。ビジネス部門のステークホルダーからの要求が満たされないまま蓄積された結果、企業の70%以上は、数十件のハイパーオートメーション・イニシアティブを実施するようになりました。

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