オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

スポーツテック業界の俯瞰図「Sports-Tech Landscape」2020

»

NTTデータ経営研究所は2020年1月6日、日本におけるスポーツビジネスの活性化とスポーツ関連のIT産業への投資促進を目的に、2017年から続く、スポーツテック業界の俯瞰図「Sports-Tech Landscape」2020を公表しました。

スクリーンショット 2020-01-11 14.14.20.png

出所:NTTデータ経営研究所 2020.1

Sports-Techは、①スポーツ領域を対象に、②IT等を活用した、新しいソリューションを提供する企業 を指しています。

「Sports-Tech Landscape」2020は、縦軸にはスポーツビジネスの基本要素である「観る」「支える」「する」「創る」をテーマにしています。

「観る」について
「今までにない観戦体験」「スポーツ観戦をより身近に」といった価値を実現するソリューションを抽出

「支える」について
「個人やチームのパフォーマンスを最大化」「観る人やする人の活動環境を整える」といった価値を実現するソリューション

「する」について
「スポーツをもっと楽しく」「誰でも楽しめるように」という価値を実現するソリューションを選定

「創る」について
「従来の定義を超えたスポーツの創出」を実現するソリューションに着目

と分けています。

掲載企業数は、64社(2017年)→132社(2018年)→165社(2019年)→223社(2020年)と順調に拡大しています。

カテゴリー数は、7個(2017年)→13個(2018年)→15個(2019年)→17個(2020年)へと増えています。これは、スポーツデータの分析・活用が進んでいることが主因としています。

以下が、17のカテゴリーです。

  1. Mediaこのカテゴリーには、スポーツ選手や試合の情報・映像など、スポーツ関連のコンテンツを配信するための媒体を所有している企業を取り上げました。スマホなどでの視聴も定着しつつあること等から、今後は映像の質の向上等により付加価値の高いコンテンツをいかに作り出し、提供し続けられるかが差別化のポイントになると考えられます。
  2. Entertainment & Contentsこのカテゴリーには、スポーツ関連のコンテンツを製作する、またはその製作技術・編集技術を開発する企業と、それらコンテンツを活用した新しい視聴形態の提供や、イベント等を実施することによって、スポーツコンテンツの視聴体験にエンターテインメント性を加える企業を取り上げました。最近では、AIカメラを活用し、自動中継を行うことのできるソリューションなども登場しています。自由視点映像、人工知能(AI)、AR等を活用することで、スポーツならではのコンテンツ視聴体験をどう提供できるかが、差別化のポイントになると考えられます。
  3. Fan engagementこのカテゴリーには、スポーツチームまたはプレイヤーのファンに対し、データやITの活用によってそのエンゲージメントを高めるソリューションを提供する企業を取り上げました。スポーツチームとファンの結びつきを強めるためにデジタルデータを活用する傾向は強まっており、ギフティングなどのソリューションも出てきています。今後も多様化するファンのニーズに寄り添ったコンテンツを提供する企業は増えていくものと考えられ、MediaやTicketingといったカテゴリーとの連携も不可欠になります。
  4. Facility managementこのカテゴリーには、競技場・アリーナ等のスポーツ関連施設に、施設管理、競技・試合の運営支援や、観客に対し付加価値のある観戦体験を創出するためのITソリューションを提供する企業を取り上げました。試合会場での体験価値を向上させるために、テクノロジーを活用した映像・照明などの演出も増え始めております。5G等のインフラを活用したアプリケーションの開発も進められており、今後のスタジアム収益に貢献するようになるものと考えられます。
  5. Ticketingこのカテゴリーには、チケッティングに関するITソリューションを提供する企業を取り上げました。チケッティングに関しては、実績の販売データ等を基にしたチケットのプライシング制度を導入するチームも増えつつあります。また、電子チケットやリーセルなどの市場も拡大傾向にあり、今後も様々なITソリューションを活用したサービスが提供されていくものと考えられます。
  6. Operation supportこのカテゴリーには、試合・大会運営を支援するITソリューションを提供する企業を取り上げました。顔認証による入場管理システムや駐車場シェアリングシステムなどの、運営コストの削減や観客の利便性向上などに資するサービスが増えつつあります。今後も他産業で活用したソリューションをスポーツ産業へ横展開する動きが加速するものと考えられます。
  7. Player conditionこのカテゴリーには、インプットされたデータを分析することによって選手個人のコンディションを管理・向上させるITソリューションを提供する企業を取り上げました。ITソリューションを導入し、選手のコンディションを可視化する動きは高まっており、最近では食事や腸内環境などのデータに着目したプレイヤーも増えつつあります。今後は、センサー等を用いて蓄積されたデータと食事・睡眠・腸内環境などのデータを組み合わせ、より良いITソリューションを如何に提供できるかが差別化ポイントになると考えられます。
  8. Team & League managementこのカテゴリーには、チームやリーグ運営の効率化や管理を向上させるためのITソリューションを提供する企業を取り上げました。チーム成績やスケジュールを管理するアプリやスタジアムで顔認証システムを導入し、顧客属性を判別するソリューションを提供する企業等が続々と登場しています。
  9. Tactics supportこのカテゴリーには、データ分析によって個人やチームの試合戦術・戦略支援をするITソリューションを提供する企業を取り上げました。コート上の選手の動きやボールの軌跡などを解析し、戦術や戦略に活かすことでより高いパフォーマンス発揮が見込まれ、様々な競技で活用シーンが増えています。最近ではドローンを活用したソリューションなどを提供するプレイヤーも出てきています。
  10. Data aggregationこのカテゴリーには、プレイヤーの動作・フォーム・投球解析や、試合中の動線などをデータ化する技術を提供する企業を取り上げました。これらの技術によって収集したデータを分析・解析し、最適なトレーニング内容や傷害予防にも役立てることができるため、注目されています。今後は、脳科学や栄養学といったスポーツ科学以外の分野のデータを連携したITソリューションも開発されていくものと考えられます。
  11. Matchingこのカテゴリーには、スポーツを学びたい人と教える人、スポーツ業界で働きたい人と求人をしている会社、同じ趣味のスポーツ愛好家同士、スポーツをしたい人とスポーツ施設など、スポーツにまつわる出会いを提供する企業を取り上げました。今後もITソリューションは増え続けるものと考えられます。
  12. Fundingこのカテゴリーには、スポーツチームなどの運営費が欲しい人と資金の出し手をつなげるソリューションを提供する企業やスポーツ特化型のクラウドファインディング企業を取り上げました。最近では、ブロックチェーン技術を活用したITソリューションも出てきており、運営資金の獲得やファンと選手の距離感を縮めるソリューションとして拡大が期待されています。
  13. Fun & Trainingこのカテゴリーには、スポーツをもっと楽しむため、またはトレーニングを支援するためのデジタル技術を取り入れたデバイスを提供する企業や、トレーニングコンテンツを共有するプラットフォームを運営する企業などを取り上げました。トレーニング分野では、アプリを通じて自宅でもスポーツジムのLIVEレッスンが受講できたり、リアルタイムでプロのトレーナーからの音声アドバイスもらえたりすることのできるソリューション等も登場しています。また、スマートシューズなどにより、ランニングデータの見える化に取り組むプレイヤーなども出てきています。当カテゴリーは、部活動などの教育分野との親和性が高いのも特徴です。
  14. Smart apparelこのカテゴリーには、着用者の動作をデータ化する技術が搭載された衣料や衣料繊維を開発・提供する企業を取り上げました。研究分野では、各種のデータを取得する際、被験者が身体に貼付された実験器具を意識してしまい、通常時のパフォーマンスを発揮しづらい等の課題がありましたが、衣類を着用するだけでデータ収集ができるこれらの技術は、データ収集を容易にするだけでなく、実験課題のソリューションとしても注目されています。より快適なスポーツアパレルの開発を目的としている技術もあり、引き続き今後の活用方法の多様化も期待されます。
  15. Health care & Recoveryこのカテゴリーには、個人の健康管理やフィットネス事業の延長線上でのITサービスを提供する企業や、テクノロジーを活用した疲労回復装置を提供する企業を取り上げました。食事と運動強度から栄養状態を分析する技術や低周波にて運動後の疲労回復を促す装置等が登場しており、少しずつスポーツ分野への導入も進んでいくものと考えられます。
  16. Augmentation & Sportificationこのカテゴリーには、スポーツ選手の身体機能または競技種目の進化・発展を目的とした身体拡張技術や、従来のスポーツの定義や現存のルールに当てはまらないスポーツや種目を生み出そうとしている企業を取り上げています。テクノロジーによってこれまでの枠組みを超えた、新しいスポーツの創出が引き続き期待される分野です。一部では体育の授業などの教育分野で試験導入される動きも見られつつあります。
  17. eSportsこのカテゴリーには、eスポーツ分野において競技運営支援・対戦映像の配信などにITソリューションを提供する企業や、デジタル技術を搭載した新しいコントローラーの開発などによって競技普及を図る企業を取り上げています。国内では2019年の茨城国体にてeスポーツ選手権が開催され、反響も大きく、2022年にはアジア競技大会で公式種目として開催されることが決定していることなどからも、今後更に成長している市場として着目されています。

Comment(0)