世界市場と産業構造変化(5):デバイス間の新たな市場環境とプラットフォームオンプラットフォーム競争
これまで、経済産業省の2011年8月11日の「産業構造審議会情報経済分科会中間とりまとめ」資料をもとに、「スマートフォン」「電子書籍」「スマートテレビ」、そして「ソーシャルゲーム」の4つをとりあげてきました。
今回はこれまでの整理を踏まえながら、デバイス間とプラットフォームの競争環境を中心に整理してみたいと思います。
本取りまとめでは、デバイス間の新たな市場確定の競争において以下のとおり整理しています。
○スマートフォン/タブレットPC/専用ゲーム機等の高機能化に伴いデバイス間の機能が互いに重複。デバイス間の境界が融解し、新たな市場確定の競争が激化。
→「スマートフォンVS電子書籍端末」、「スマートフォンVSカーナビ専用機」、「専用ゲーム機VSスマートフォン」○既存の垣根をさらに越えた競争は、チャンスの拡大と同時に、既存の関係業界の存亡に影響。例えば、日本が強い、カーナビはスマートフォンに一気に置き換わる可能性がある(カーナビ市場1.2兆円)。
これまで、ゲームやテレビなどの市場の多くは個別ばらばらでしたが、デバイスの融合により、コンテンツのマルチユースや複数のデバイスからのコンテンツ利用など、市場の多様化が進んでいくことでしょう。
例えば、本とりまとめでもとりあげているように、
- ゲーム機等でもスマートフォン上のサービスを利用可能とすることでスマートフォンの顧客を取り込み
- それぞれのプラットフォームでライバルのコンテンツを利用可能とすることで顧客を取り込み
- スマートフォン等の汎用機によってゲームやカーナビサービスを提供することで顧客を取り込み
といったようにデバイス間の新たな顧客の囲い込みによる新たな市場を確定する競争環境が生まれています。
また、これらのサービスを支えるにはクラウドコンピューティングの基盤の重要性が増してくるでしょう。クラウドの流れは、企業向けにも普及が進みつつありますが、デバイスやプラットフォームを核にしたC向け市場においては、クラウドを活用したサービス提供がさらに加速化すると予想されます。
そして、ソーシャルメディアの普及が産業構造を大きく変えることになります。
取りまとめでは、ソーシャルメディアの台頭によるプラットフォームの競争環境を以下のとおり整理しています。
○SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)はコミュニケーションの業界を超えて、コンテンツ/データ収集を行うアグリゲーターとしての機能を強化。
○スマートフォン、電子書籍等のそれぞれのコンテンツストアを超えたレベルで、SNSが新たなプラットフォームとして競争優位を確保しつつある。
→「プラットフォーム・オン・プラットフォーム」○また、潜在的には、日本のゲーム専用機やデジカメ等を軸とした別のプラットフォーム構築の可能性など多様な競争の軸が出てくる可能性あり。
今後、フェイスブックなどに代表されるソーシャルメディアが多くのサービスを取り込み、コンテンツレイヤーにとどまらないプラットフォームを確立し、競争優位を確保し、プラットフォームオンプラットフォームの地位を確保しようとしています。
世界市場のプラットフォームは、ソーシャルネットワークに制覇されるのか、AndroidなのかiOSなのか。競争環境の中において、日本の企業の立ち位置はどこで存在感を見せることができるのか。急激に変化する世界市場の環境下において、世界市場と産業構造変化を見据えたビジネスのあり方を急速へシフトしていかなければならない時代を迎え、我々一人ひとりがどうビジネスと仕事のあり方をグローバルな視点で進化させていくのか、大きな岐路に立っているのかもしれません。
※担当キュレーター「わんとぴ」
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