クラウドのこれからに必要なこと
昨日、2011年3月7日、「クラウドネットワークシンポジウム2011」に参加してきました。
天気が雪で足場の悪い中、会場には約300名の方が参加されており、クラウドに関しては相変わらず関心度の高さが伺えました。
2011年は企業などで、クラウドの導入が本格的に普及すると言われていますが、信頼性や安全性やセキュリティ、そして、連携や標準化やマイグレーションなど、取り組んでいかなければならないテーマも山積しています。今回のシンポジウムでは、クラウドにこれから何が必要なのか、中長期的視点で考えさせてくれる良い機会だったと感じています。
では、クラウドのこれからに何が必要なのでしょうか?
本シンポジウムは総務省の委託研究ということで、クラウドに関する様々な研究が展示されていました。これらの内容も踏まえ、少し社会的な視点で全体を俯瞰しながら整理をしてみたいと思います。
社会インフラとして認知・評価されていくこと
クラウドは、現在企業の一部で導入が始まっていますが、電気や水道やガスのように社会インフラとして認知・評価される段階までには、まだ来ていません。クラウドが当初注目をされたころは、必要なときにコンセントにつなげば電気が利用できるといったように、電気に例えられるケースがよくありました。クラウドは公共インフラと同様に社会インフラを前提としての信頼性を高めていく必要があるでしょう。
社会全体に貢献をすること
クラウドは、「規模の経済(スケールメリット)」でのメリットがあるとともに、利用ユーザであれば、「範囲の経済」によるメリットもあります。クラウドは、社会全体の巨大なエコシステムを形成し、社会全体の効率化に寄与することができるでしょう。そのためには、クラウド同士が互いにつながり、相互の連携性を高めていくことが必要となるでしょう。
ユーザ主導であること
クラウドの大きな特徴の一つとしては、シンポジウムの中でも議論となりましたが、ユーザ主導ということです。クラウドは、ユーザが必要な時に必要な分だけ巨大なコンピューティングリソースを使うことができ、ユーザ自身がサービスをつくったり、ソーシャルも活用し、様々なインパクトを与えることが可能な時代になりました。ユーザの利便性をさらに高める、時にはユーザの要望を先回りするなど、ユーザ主導のクラウド環境の構築づくりが重要となっていくでしょう。
公共分野で活用されること
クラウドはコンシューマや企業ユーザでの利用は進んできていますが、公共分野での利用は必ずしも十分であるといえません。行政や医療や教育などは、システム面で共通化できる部分は非常に多く、これらの分野でクラウドが進むことになれば、様々な社会問題を課題することができると考えられます。例えば、医療分野では電子カルテなどを活用しどこでも診察を受けられるといったような環境づくり、教育分野では、デジタル教科書・教材の活用や校務のクラウド化による活用なども考えられます。
地域全体に活用されること
公共分野と少しかぶるところがありますが、日本では少子高齢化が進み、地域の地盤沈下が顕著になっています。医療や教育だけでなく、地域全体でのICTやクラウドの活用が遅れており、地域格差が大きくなっているのが現状かと思います。クラウドが本格的に進んでいくためには、地域の中小企業をはじめ、地域のユーザのクラウド利用の拡大が期待されます。
子どもからお年寄りまで活用できること
ユーザ主導の少し延長になりますが、今後、高齢化が進むことで、スーパーに買物に行けないなど、高齢者向けの介護や支援のあり方が重要となってきます。クラウドですべてが解決できるわけではありませんが、例えば、高齢者の方がタブレットとクラウドを使い、ショッピングをしたり、健康管理をしたりといったように、できるだけ不自由を解消することによって、超高齢化社会の難題を乗り切っていく必要があるでしょう。
物と物がつながること
最近、スマートシティやスマートコミュニティが注目されていますが、スマート家電やスマートハウスや電気自動車(EV)など、大小様々なものがネットワークにつながることになります。これらが有機的につながるためには、膨大なデータのアーカイブと処理をするクラウド環境が必要となってくるでしょう。
まとめ
個々に少々重なっている部分はあるかと思いますが、ポイントとしては、クラウドは巨大なエコシステムのように社会全体に広がりを見せ、そして、よりヒューマンセントリックな環境が求められるようになってきていると感じています。
本シンポジウムで、「クラウドの今」と、「クラウドのこれからに必要なこと」を、深く考えさせられた1日だったと感じています。