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クラウド(データセンタ)特区(仮称)に関する公開情報まとめ

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日経新聞(6月21日)の一面に、クラウド特区に関する記事が掲載されているように、クラウド特区が、注目されています。また、同じ日にさくらインターネットが「クラウドコンピューティングに特化した国内最大級の郊外型大規模データセンターを北海道石狩市に建設」という報道発表をし、話題を呼んでいます。

今後、セールスフォース・ドットコムなどの外資系クラウド事業者の国内経由での提供も予定されており、今後、国内におけるクラウド型データセンターの需要も拡大していくことが予想されます。そこで大きなテーマとなるのが、政府が推進しようとしているクラウド(データセンタ)特区(仮称)です。これまで公開されている情報を少しまとめてみたいと思います。

4月10日の日経新聞の一面には、総務省の特区に関する記事が掲載されています。

  総務省はネットワーク経由でソフトや情報サービスを利用する「クラウドコンピューティング」の普及に向け、2011年春にも北海道か東北に特区を創設する。国内最大級のデータセンターの構築を目指し、建築基準法や消防法の適用除外などで設置コストを軽減する。投資額は最大で500億円程度を想定している。国内への情報関連投資を増やす狙いに加え、機密保持の観点からも国内でのデータセンター構築が重要だと判断した。

5月30日の読売新聞では、経済産業省の特区に関する記事が掲載されています。

  経済産業省は29日、企業や個人がインターネット経由でメール、文書管理、電子商取引などのサービスを受ける「クラウド・コンピューティング」の普及を見越して、日本に大規模なデータセンターを誘致する方針を固めた。ネット検索世界大手の米グーグル、米ネット通販大手、アマゾン・ドット・コム、日本ユニシスなどデータセンターの新設、増設を検討している企業に働きかける。(中略)    
  データセンターは数千台規模のコンピューターサーバーを設置し、通信回線を通じてサービスを行う拠点だ。日本は治安が良く、涼しい地方も多く、大量の熱を発するコンピューターの保守・管理がしやすいため、地盤が固く、大量の電気を供給しやすい原子力発電所のある地域への誘致を目指す。      
  経産省は、原発が立地している自治体に、国からの交付金や補助金制度で実施している電気料金の割引や設備投資への補助などを、データセンターの設置企業に適用するように求める。      
  また、サーバーの格納施設について、通常の建物に適用される建築基準法の審査を簡素化できる特区の創設も検討する。6月1日発表の「情報経済革新戦略」に盛り込む。

政府が公開している報告資料について、少しまとめてみたいと思います。

民主党が、4月に案を出した「民主党情報通信議員連盟のマニフェスト案」では、

データセンター特区について、      
データセンターの海外流出を防ぎ、国内誘致・設置を促がす目的である。規制の見直しや税制支援制度などの環境整備を図っていく。

新成長戦略の中では、「科学・技術・情報通信立国戦略」の工程表に「データ利活用を促進するための制度見直し等のクラウドコンピューティングの競争力確保のための環境整備」があり、その中で「データセンターの国内立地整備等の整備見直しの検討」としています。

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また、5月に公表された「新たな情報通信技術戦略(案)」では、重点施策の「クラウドコンピューティングサービスの競争力確保等」の中で、特区の考え方について以下のとおり、記載されています。

データセンターの立地環境整備等について、関係府省が連携して推進する。特に、高効率なデータセンターの国内立地促進のため、特区制度の創設も視野にコンテナ型データセンターの設置に係る規制の緩和などを2010 年度中に検討する。【総務省、経済産業省】

総務省では、5月に公表した「原口ビジョンⅡ」の「ICT維新ビジョン2.0」推進のためのロードマップの中では、

2011年度から、企業等のクラウドサービス導入支援を推進するとともに、中小企業・ベンチャー企業等によるクラウドサービス開発支援や、「クラウド特区(仮称)」の展開を含むデータセンタの国内立地を促進する環境整備により、クラウドサービスの開発・普及を推進

5月に公表した「スマート・クラウド研究会報告書」では、

クラウドサービス事業者への支援    
寒冷地や発電所の近郊地などデータセンタ好適地と考えられる地域については、輸送用コンテナを活用したコンテナ型データセンタなどの簡便な設備を用いて、かつ環境負荷を低減させてデータセンタ事業を営むことも可能となるなど、新たな技術を用いたデータセンタ構築が可能となっている。しかしながら、コンテナ型データセンタについては、建築基準法に基づく建築確認が求められるなど必ずしも実態にそぐわない規制等も存在している。先進的なクラウドサービスを実現するためには、十分なレベルの個人情報保護制度を確保しつつ、必要に応じて特例的に規制を緩和して新事業の創出を図る「データセンタ特区(仮称)」の展開等、従来とは異なる仕組みを整備することが考えられる。

新たなクラウドサービスの創出に向けた支援    
高効率なデータセンタの国内立地促進のための規制の緩和措置等を講じる「データセンタ特区(仮称)」の展開を検討し、2011年度からの展開に努める

5月に公表した「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」報告書では、

課題解決の方向性    
特に、データセンター好適地と考えられる地域については、輸送用コンテナを活用したコンテナ型データセンターなど簡便な設備を用いて、かつ低い環境負荷でデータセンター事業を営むことも可能となるなど、新たな技術を用いて高い省エネルギー水準を達成可能なデータセンターの構築ができるようになった。しかしながら、現在の法制度全体がこれら技術の登場を想定していなかったことから、そのような技術の利用を容易とする特別な優遇措置を講じた「特区」として整備することも考えられる。このような取組は、我が国として、データセンターの誘致を図る意思表明となるため、データセンター好適地としてのアピールとしても、極めて有効に機能すると考えられる。

国内データセンターの利点の訴求への対応    
データセンターの好適地において、コンテナ型データセンター等、エネルギー効率が極めて高く、海外の利用者からも選択されるデータセンターを、容易に設置できるようになることが望ましい。そのため、このようなデータセンターの構築・運用のあるべき姿を検討するための社会実証実験を実施可能とすべく、特区制度の構築について、行政当局において検討を行うことが適当である。

経済産業省の情報について少し整理をしてみたいと思います。経済産業省では、「クラウド・コンピューティングと日本の競争力に関する研究会」でデータセンターの施策についても議論をしていることと思いますが、報告書が一般公開をされていないため、特区について具体的に言及されているのかは、定かではありません。

一方、5月に公表した「情報経済革新戦略」では、クラウドデータセンターの基盤整備やデータセンターの制度整備についてまとめられています。ただし、特区というキーワードは使っていません。

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これらの特区の動きの中で、情報通信技術の利活用を阻害する制度・規制等の徹底的な洗い出しをし、規制緩和を後押しするのが、「ICT利活用促進一括法」です。これらの制度設計が早急にできれば、特区を創設するという必要性はあまりなくなるのかもしれません。

以上のように政府としては、様々な政策に関する報告書の中で、特区について触れられており、重要な政策として位置づけていると推測されます。これから、政府主導、民間(国内・外資)主導と様々な形で、特区を巻き込んだ事業の展開も予想されます。ここ数年の動きが注目されるところです。

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