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環境後進国ニッポン

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日経ビジネス(2010.3.1)の特集は「環境後進国 ニッポン ~25%削減よりも恐ろしい現実」です。日本は太陽光発電や蓄電池などで世界をリードするであり、政府の経済成長戦略や経済産業省や総務省などは環境を重点分野として取り組みを強化しています。

では、何故、日本は環境後進国なのでしょうか? 日経ビジネスのポイントを少し整理してみたいと思います。

世界と比較すると日本はあまりにも市場規模が小さい

国連環境計画(JNEP)の2009年の数値によると、「クリーンテックへの地域別投資額」は、欧州(413億5000万ドル」、中国(308億1000万ドル)、米国(163億5000万ドル)、ブラジル(64億8000万ドル)、インド(23億9000万ドル)、中東・アフリカ(17億6000万ドル)、そして日本は(8億7000万ドル)となっています。日本は環境分野で世界と勝負していかなければ、市場の拡大は望めません。

日本企業の存在感

アブダビが約2兆円を投じる世界最大規模の環境都市「マスダールシティー」の建設では、日本の存在感はほとんどないようです。大規模太陽光発電所では京セラが敗れ、三井造船やコスモ石油などのチームにとどまっています。日本はコスト面で劣勢に立たされており、それ以上に深刻な問題として日本企業の腰の重さを指摘しています。中東に対して腰が引ける日本企業が大半であり、意思決定のスピード、金融スキル、語学力を含めたコミュニケーション能力を高めないと世界では勝ち抜けないという指摘がされています。

その他、台頭する米中企業が、世界での流通・販売網を続々買収するなど、開発から販売まで、バリューチェーンを見据えた事業モデルの構築に果敢に挑んでいるという事例が紹介されています。

日本は世界と比べてもものづくりの技術に優れていると言われていますが、日本が世界市場で存在感を出していくためには、「マスダールシティー」に代表される巨大プロジェクトのように、モノや技術を組み合わせて事業を育てる構想力とそれを実行する力が求められている点が指摘されています。

スマートグリッドの覇権

スマートグリッドについても少し触れられています。米国でスマートグリッド市場のキープレイヤーになろうとしているのが、米シリコンバレーのベンチャー企業SSN(シルバー・スプリング・ネットワークス)です。SSNはスマートメーターの基盤技術を持つ企業です。SSNのジョン・オファレス副社長のコメントは印象的です。

スマートグリッドは、いわばモノ版のインターネット。(送電システムを考案した)トーマス・エジソンでも理解できない、全く新しい世界がやってくる。

と述べています。シリコンバレーでは、リスクをとって参入する様々な企業と資金を投入する投資家により電力網のパラダイムシフトが起きているとしています。スマートグリッドの覇権を握るのは、インターネットに続き、米国なのでしょうか。それとも、日本を含めた他の地域が巻き返しをはかっていくのでしょうか。。

日本が飛躍するためには

最後に日本の飛躍への課題に対する提言として、

  1. 自己満足と思い込みからの脱却
  2. ビルと住宅を磨き上げる
  3. 電力会社の事業モデルを変える

の3つをあげています。

(1)では、太陽電池生産など国際競争力のある技術を持ちながら、それを阻む集中制御型の電力供給に依存している点を問題視しています。(2)は省略して(3)の電力会社の事業モデルでは、スマートグリッドの実現を妨げている要因は電力会社であり、公平に競争できる環境をつくらなければ、日本の競争力は低下すると指摘しています。日本の電力料金は世界と比べるとかなり割高です。電力料金の高さによって、特に外資系企業が日本にデータセンターを建設に踏み切れない大きな要因の一つであることが考えられます。

そして、最後に、日本には技術力や動員力があるが、政策とリーダーシップに欠けていると指摘しています。日本が、今後、環境先進国になるのか、それとも環境後進国になるのか、企業の技術力と同時に、今後の政策展開と世界に対してのリーダーシップが期待されるところです。

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