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英国における電子政府クラウド(G-Cloud構想)の取組みについて

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これまで米国における電子政府クラウドの取組みを紹介してきましたが、英国においても電子政府クラウドに積極的に取り組んでいます。

英国政府では、政府専用のクラウド環境をつくるG-Cloud(ガバメントクラウド)構想を推進しています。これまでの情報システムの共同利用よりも節税効果が高く、今後本格的に導入を推進していくとしています。G-Cloudの利用によって、コスト削減、柔軟なリソースの活用、競争力のある環境等を整え、標準化やITサービスの共有化の実現していくとしています。そして、参入障壁を下げ民間企業が参入しやすい環境を作ることで、中小企業のITベンダも市場に参入できる機会を創出するできるとしています。

クラウドの形態はセキュリティやデータの保管場所や信頼性等において課題があり、政府独自のプライベートクラウドを構築する方針を掲げています。また、政府のアプリケーションストアをつくり、公共部門が利用する共通アプリケーションを集め、ダウンロードできる環境の整備を目指しています。そして将来的には、政府専用の仮想プライベートサービスネットワークを使い、行政サービスを提供する計画をたてています。

英国政府のクラウドを積極的に推進するのは英国政府CIOのジョン・サフォーク氏です。サフォーク氏はCIO会議のリーダであり、全国的に推進するクラウド基盤構築のために、不必要なプロジェクトは中止できる権限が与えられています。

英国政府ではクラウドを推進にあたって4つの基本戦略を掲げています。デスクトップデザインの標準化と簡略化、ネットワーク接続の標準化・合理化・簡素化、データセンターの合理化、オープンソースの導入推進を柱としています。ネットワークでは、政府専用の仮想プライベートサービスネットワークを構築することにより、30%のコスト削減を目指しています。また、データセンターにおいては、英国政府のデータセンター数を現在の130から9~12まで削減し、効率化運用を目指しています。

データセンターの取組みに少しフォーカスしてみましょう。Alchemy Plus社が、2009年2月、英国北部スコットランドインバネスにクラウドデータセンターを設立することを発表しています。本データセンターの設立には32億円の費用をかけ、400人の雇用創出が期待されています。水力発電や風力発電などの立地資源を生かし、グリーンなデータセンターの運用を目指しています。

英国においてもクラウドの推進には、課題が山積しており、標準化やセキュリティの問題、そして、インフラ環境が日本と比べると十分ではなく、デジタルブリテンの政策で目標としているのは2Mb/sとなっています。

英国政府はクラウドの普及においてこれらの問題はあると認識しながら、クラウドを利用することのメリットのほうが高いとし積極的な採用を進めるとともに、ソーシャルネットワークを活用し、国民の意見を積極的に取り入れるといった姿勢を見せています。

これまで、政府の「霞が関クラウド」、米国の連邦政府のクラウドの取組み、そして今回、英国政府の「G-Cloud」の概要を少し整理してきました。セキュリティや標準化や、これまでの縦割り行政に対して横断的な仕掛けの難易度など、共通化した課題が山積していますが、これらを実現するためには、政府CIOの強烈なリーダシップが必要であり、そして国民にどれだけオープンにし理解を求めていくかといったことが必要となるでしょう。

日本においては、政権交代により民主党連立政権が誕生します。政策の目玉となるのは、国際戦略局設置による政府横断的な政策の実施です。そして、政府CIOが任命され、省庁横断の電子政府クラウドを推進していくための環境は、徐々に整備されていくことでしょう。

今後、各国の政府クラウド推進において、様々なハードルが生じることが予想されますが、効率化した開かれた政府の実現が期待されるところです。

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