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一昨日に続き、昨日もまた数多くのアクセスをいただきありがとうございます。

それでもAmazonのダンボールを大きいと言えるか?

 Amazon のダンボールはなぜ大きいのか? 

Amazonのダンボールは大きくても仕方ないというような主張をしましたので、今日は小さくするにはどうすればいいかを考えてみたいと思います。

Amazonとはどのようなサービスでしょうか。分解してみると、

  • 様々な商品を
  • 早く(時間通りに)、
  • 破損なく
  • 安く

届けるというサービスであると言えます。それぞれを細かく見てみましょう。

様々な商品を、という部分を実現するためにAmazonは千葉県の市川、八千代と大阪府の堺に物流センターを持っています。それぞれ1万坪や2万坪の広さを誇り、そこに様々な商品を受け入れています。物流センターに納入された商品は人力で探し当てられ、梱包されるそうです。様々な商品を扱う関係上、自動で荷物を拾ってくるピッキングマシンなどは使い辛いのかもしれません。探し当てられた商品は最終的にダンボールに入れられるわけですが、ギリギリのサイズの箱に入れるよりも大きめの箱に入れたほうが作業をてっとり早く進められるでしょう。そして使用するダンボールの種類を減らしたほうが作業効率が上がりますが、それをすると余計にダンボールがブカブカになりやすくなります。

早く(または時間通りに)届けるためにはミスや行方不明を減らさなくてはなりません。そのためには作業の途中で積み込みのミスや積み替えのミスを減らしていくことが必要となります。しかし梱包してしまったダンボールを開けて確認するわけにはいきませんので、ダンボールに梱包する前に内容を確認してラベルを貼り付けることになります。ラベルは肉眼で確認していると大変ですのでバーコードにして貼り付けることになるでしょう。そうするとあまり小さなダンボールはラベルを貼り付ける余地がありませんし、他のダンボールとの距離が近すぎると読み取りづらくなってしまいます。きっちりと積まれた箱のバーコードをスキャンしていく場合と、メール便の封筒に貼られたバーコードをめくりながらスキャンしていくことを考えれば、多少はムダがあってもきっちりと積まれた箱状の荷物の方が扱いやすいことでしょう。ICタグはそういった問題を解消しますが、使い捨てるにはコストが高いのがネックです。

破損に関しては、大量に扱う場合に限ってはメール便の封筒よりも箱のほうが得意であると言えます。

安く届けるためには規格化と取り回しの良さが必要である点は昨日や一昨日のエントリで述べさせていただきました。

こうして考えてみてもあまりAmazonのダンボールを小さくできる余地は感じられません。しかし上に述べたような事情はすべて物流センターから利用者の手元までの話です。もし利用者の手元まで何らかの資材で保護し、必要なものだけを切り離して渡すことができればどうでしょうか。ひょっとするとダンボールを小さくできるかもしれません。

それはまさしくコンテナであり、パレットであると言うことができます。コンテナ船で荷物を運ぶ際には自社コンテナを使って運んでいき、何かを積んで返ってくる場合と、コンテナを借りる場合とがあります。コンテナを借りる場合ですと頑丈な梱包をしなくてもコンテナ内に確実に荷物を据え付けるだけで”鉄壁”のガードで守ってもらうことができます。

また、パレットはダンボールなどを支える1メートル×1メートルほどのスノコです。パレットはサイズがおおむね標準化されており、フォークリフトなどで大量の品々を運ぶ際に効力を発揮します。また、パレットにもパレットプールという制度があり、必要な分だけを借りることができます。有蓋トラックであればパレットに乗った品々を確実に素早く輸送することができます。これをパレチゼーションと言います。

これにならい、Amazonの荷物もパレチゼーションができるかもしれません。原則はギリギリのサイズの小さな梱包として、それをプラスチック等のケースで囲めばどうなるでしょうか。取回しもしやすく、バーコードも見やすくなり、破損もしにくくなります。使い捨てするにはコストの高いICタグも、ケースにつけておいてシステム側で内容を識別することで利用する可能性が見えそうです。

最終的に利用者に引き渡すまでケースで覆っておき、荷物を渡したらケースを持って帰るというようにすればムダがありません。本当は漫画でもDVDでもケースに生で入れて玄関で直渡しするのが良さそうですが、なかなかそういうわけにもいかない商品も少なくないでしょうからそこは奥ゆかしく茶封筒か何かで包む処理が必要ではないかと思います。イメージとしてはレンタルビデオ店でDVDやCDが収められているケースのようなものになるでしょうか。

もしもこれが実現した場合、我々の身近にも予想だにしないインパクトが現れる可能性があります。

我々がなにげなく利用しているスーパーやコンビニの棚は90センチ(3尺)を原則としています。これにより、世の商品の中には店に出たときにきっちりと並べやすいよう11センチや15センチといった横幅を採用するパッケージが少なくありません。

『ITmedia +D PC USER:第1回:PC周辺機器は棚割で売る』
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0607/06/news062.html

それに加え、パレットにきっちりと収めやすいようにダンボールが作られます。また、そのダンボールに収めやすく、かつ幅90センチの約数になるようにパッケージがデザインされます。そのパレットはコンテナの国際標準に積み込みが行われやすいサイズが増えつつあるそうです。

もしもAmazonの規模でその場で回収するプラスチックケースを利用した物流のエコ化が進んだとしたら、そのサイズが現実の商品のサイズを規定する可能性は高いでしょう。反対に、現実の書籍のサイズが今よりもずっと少ない種類に集約された場合、プラスチックケースまでいかずともダンボールがギリギリサイズになる可能性があります。

しかし考えてみれば、本の内容が薄いのに物流の効率のためにフォントを大きくするとか紙を厚くするなどして引き伸ばすというのもおかしな話です。トータルで見た場合にどちらが効率が良いのかわからなくなってきてしまいます。

時折、ジュースの自動販売機を利用してキーホルダーなどが販売されていることがあります。ジュースの缶と同じサイズのプラスチックケースに中身が収められていて、ほとんど空気という場合もあります。この工夫により、大量に作られていてコスト的に有利であるジュースの自動販売機をそのまま使うことができます。もし独自に自動販売機を改造するとしたら大変ですし、わざわざジュースの缶のサイズの商品パッケージを準備するとしたらかさばって仕方がありません。プラスチックケースの中に商品を入れてケースは回収するという仕組みは単純でいて非常に合理的です。そしてその手法はコンテナのやり方とまったく同じ考え方であるといえます。

もしAmazonのダンボールを小さくするとすれば、コンテナやパレットのやり方をそのまま真似して特殊ケースを回収する、という方法がいいのではないかと思います。

yohei

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プロフィール

山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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