永井孝尚のMM21:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 永井孝尚のMM21

マーケティングとは? グローバル化とは? ライフワークとは? 一緒に考えてみましょう

« 2011年10月21日

2011年10月22日の投稿

2011年10月23日 »

世の中には、ともすると、「やっと福島原発事故は一段落した」という楽観的な空気が広がっています。

しかし、実際にはそうではない。

そのことを痛感させられました。

3月末から9月2日まで、内閣官房参与として原発事故対応に尽力された田坂広志さんが、10月14日に日本記者クラブで、メディア関係者を集めて、『福島原発事故が開けた「パンドラの箱」』という講演をされました。

インタビュー動画はこちら(1時間強です)

インタビュー資料(PDF)はこちら

 

ずっしりと響きました。

私はPDF資料を見ただけでも、ショックを受けました。

しかし、1時間の講演を収録した動画では、さらに深い気付きをいただきました。

 

最初に田坂さんは、『最大のリスクは、「根拠のない楽観的空気」である』と述べられています。

世の中には、『「冷温停止の年内前倒し達成」で、やっと原発問題も一段落』という空気があります。

しかし、たとえば、自宅が火事になったことをたとえると、「冷温停止」は、この大火事がとりあえず鎮火した段階。

火事の場合、本当に大変なのはその後です。実際、私は中学1年の時に、父の田舎の実家に泊まっていた時に火事に遭いました。

幸い一家全員命は無事でしたが、本当に大変だったのは、鎮火した翌日からでした。ちょっと考えただけでも、翌日からどこに住むのか、全焼した財産はどうするのか、火元になった隣との関係は、新しい家を建てるお金の工面は、...など。さらに永井家に先祖代々伝わる資料もすべて喪失したのです。

 

では、福島原発では、何が課題なのか。

 

田坂さんは、それらの課題を分かりやすく具体的に、様々な事例を挙げて説明していきます。

ごく一例を挙げると、福島第一原発事故で最も危険だったのは、マスコミが競って状況を報じた稼働中の1号炉~3号炉ではなく、停止中の4号炉でした。

3週間前に当ブログで『「首都圏3000万人の皆さん、今すぐ避難してください」→その時どうする?』というエントリーを書きました。

実は3月末の時点でも、現実に首都圏3000万人避難のシナリオがあったそうです。

その原因が、停止中の4号炉にありました。なぜか。

格納容器で核燃料がしっかりと守られている1号炉~3号炉と異なり、4号炉では使用済燃料プールに保管されています。

燃料プールの冷却機能が喪失すると、燃料は剥き出しのままメルトダウンを起すことになります。その場合の被害は、1号炉~3号炉の水素爆発の比ではありません。首都圏3000万人避難のシナリオが現実にあったのです。

幸い、現場の方々による必死の作業で、冷却機能は守られ、最悪シナリオは回避できました。耐震強化工事も行われました。

しかし、たとえば今、福島第一原発を同規模の地震と津波が襲ったら、ふたたび持ちこたえられるのか?それは誰も分かりません。

また、考えるだけでも恐ろしいことですが、テロ対策はどうなっているのか?

今週発売のある週刊誌には、福島第一原発に作業員として潜入した記者が、「その気になれば原発には簡単に入れる」と語っている記事が掲載されています。

ちなみにテロに敏感な海外では、福島原発事故直後、自国の原発に対して、一斉に厳重なテロ対策が行われたそうです。

さらに、全国数十カ所にある原発の使用済燃料プールも、まったく同様の問題を抱えています。その対策はどうなっているのか?

 

これだけでもショッキングな内容です。

繰り返しになりますが、これは講演のごく一例です。

田坂さんは、この中で様々な問題提起と提言もなさっています。 

講演の最後に、田坂さんは

『政府は、ともすると「依らしむべし、知らしむべからず」となっていた姿勢から、「国民の叡智を信頼する」という姿勢に変わるべき時期ではないか」

と提言しておられました。

これは、私たち一人一人にとっても、改めて自分たちが主体的にどのように考え、行動すべきなのかが、問われているのだ、と思いました。

これからの日本で大きな課題となる福島原発事故後の日本を考えるにあたっては、この講演は大きな視点を与えてくれると思います。

 

 

nagai

« 2011年10月21日

2011年10月22日の投稿

2011年10月23日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

永井孝尚

永井孝尚

オフィス永井代表。 著書「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ(中経出版)、他。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
mm21
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ