永井孝尚のMM21:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 永井孝尚のMM21

マーケティングとは? グローバル化とは? ライフワークとは? 一緒に考えてみましょう

« 2008年1月16日

2008年1月17日の投稿

2008年1月19日 »

MacBook Airが発表されました。

一番薄いところで厚さ4mmというのは、ちょっと驚きです。

私が愛用しているThinkPadとは重量は変わらないので、私自身は購入意欲はそれほどかき立てられませんが、Mac大好きの方々は早くも注文している人も多いようです。

 

私が今回のAirで改めて感じたのは、iPod/iPhoneでも感じたApple製品開発陣の割り切りの潔さとその発想方法です。

例えば、Airのネットワーク接続は無線LANのみでEthernetポートはありません。Ethernetを使う場合はUSB経由です。

同様にMacには必ず付いていたFirewire(IEEE 1394)ポートもありません。

DVDドライブもなく、DVDを使用する場合は、自宅等の他パソコンのDVDドライブをネット経由でマウントして使うことになります。

しかし、Airに心を奪われてしまったユーザーは、このような制限も喜んで受け入れるのではないでしょうか?

思い起こせば、iPodも同様で、パソコンを持っていないとそもそも使えません。iPhoneもiTMSでアクティベートするのが前提なので、パソコンがないと使えません。

普通の発想からすると、つい「パソコンが使えないユーザーへの対応はどうする?」と考え勝ちですが、この割り切りのよさ。

これって、そもそも発想方法自体が異なるのではないでしょうか?

 

典型的な製品開発の考え方は、このような感じではないでしょうか?

・出来るだけ多くの顧客ニーズを集め、分析する

・顧客ニーズを最大限満足する製品設計を行う

⇒結果、顧客ニーズをほぼ完璧に満たした製品が誕生する。しかし八方美人的製品であり、安心だが、割とそのような製品は他にも選択肢が多い。競争も激しい。

つまり、ニーズを積み上げて個別に対応する考え方です。「演繹的帰納法的発想」と言い換えることも出来ます。

一方で、AirやiPod/iPhoneの製品開発における考え方は、恐らくこのような感じではないでしょうか?

・少数のトップノッチ・デザイナーが、感性に訴える最終デザインを最初に決める

・デザインコンセプトによって生じる制限事項への対応方法を考える (AirのDVD活用のケース)

・予め絞り込んだ対象セグメントを考慮し、制限事項が対象セグメントで大きな問題とならないと判断した場合、あえてニーズを切り捨てる。(iPodやiPhoneがパソコンがないと使えないケース)

⇒結果、「尖がった」製品が出来上がる。ワクワクさせる。絞ったセグメントに大量の開発・マーケティング・リソースを投資し、競争に打ち勝ち、そこを橋頭堡にして拡げる

これは最初に完成形を決めて、それを実現するために必要なことを考えていく考え方で、「帰納演繹法発想」と言い換えることもできます。

ますます感性が問われていくコンシューマー分野では、帰納演繹法的発想に基づく開発手法は重要になってきています。

1年前にこちらでも書きましたように、日本でも、個々のニーズを切り捨ててでも当初の製品コンセプトを実現する帰納演繹法的発想で成功した製品は多くあります。

それまで必須と考えられてきた録音機能を捨てて新市場を作ったウォークマンなどは、その中でも最たるものかもしれません。

従って、「帰納演繹法的発想」は、決してアップル等の欧米企業の専売特許ではありません。

 

一方のビジネス市場では、個別のビジネス・ニーズ対応が重要であり、前者の演繹帰納法的発想が主流でした。

しかし一方で、各種調査では、経営ビジョンを実現するためのビジネスモデル策定が急務と考える経営者が増えてきているのも事実です。

これを実現するためには、例えば、「経営ビジョン⇒ビジネス・モデル・デザイン⇒業務設計⇒ITインフラ設計⇒実装⇒社内展開」という流れで経営変革を行っていくことになります。

これは、まさに「帰納演繹法的発想」です。

このように考えると、ビジネス分野でも、AppleのAir/iPod/iPhone製品開発の考え方は、大いに参考になるのではないでしょうか?

 

2008/1/18 12:40修正: 「演繹法」と「帰納法」の使い方が逆だったのを訂正しました

nagai

« 2008年1月16日

2008年1月17日の投稿

2008年1月19日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

永井孝尚

永井孝尚

オフィス永井代表。 著書「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ(中経出版)、他。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
mm21
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ