永井孝尚のMM21:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 永井孝尚のMM21

マーケティングとは? グローバル化とは? ライフワークとは? 一緒に考えてみましょう

« 2007年4月16日

2007年4月17日の投稿

2007年4月18日 »

昨日(2007/4/16)の日本経済新聞「私の履歴書」では、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長がセブン-イレブンを立ち上げた頃の話が書かれています。

戦略を冷徹なまでに徹底することの重要さが具体的に描かれており、大変勉強になります。下記、引用します。

---(以下、引用)-----

 「江東区から一歩も出るな」
 豊洲店の近隣にフランチャイズ店を集中させる。ドミナント(高密度多店舗出店)戦略は地域での認知度を高めるが、物流面でも小口配送が実現しやすくなる。

.....(中略)

 枠を外せば楽になる。しかしドミナントが実現できなければこの事業は失敗する。原則は絶対崩さない。決めた戦略は徹底する。

---(以上、引用)-----

セブン-イレブンのドミナント戦略は現在も引き継がれています。

まだ知名度が低かった設立当初に、フランチャイズ店を江東区だけで展開するという方針を徹底するのは、並大抵の努力ではできないと思います。スタート当初だからこそ、このような戦略徹底が極めて重要になるのですね。

---(以下、引用)-----

 年中無休の営業のため正月の商品配送を求めたときもそうだ。業界の常識からすれば無理難題もここに窮まれりだ。一時的に倉庫を借り、正月分を確保する苦肉の案も社内で出たが私は突き返した。

 これから先五百店、千店に増えたらどうするか。初めから仕組みをつくるべきで、困難でも取引先と交渉させた。

 断られても諦めず、お店の主人や取引先を説得する日々を重ね、一号店から二年後の七六年五月、総店舗数は百店に到達する。

---(以上、引用)-----

最初から将来の姿を想定しそれに併せて最初から仕組みを徹底して作ったこと、その上で決して諦めない忍耐強さを持ち続けたことが、この短い文章からもよく分かります。

日本人が得意な徹底した愚直さで実行し続けることに、骨太な戦略が組み合わさることで、セブン-イレブンの歴史的な成功に結び付いたのではないでしょうか?

翻って、私達自身は当初の戦略を徹底しているのか、情に負けたり状況に妥協して戦略を曲げていることはないのか、この記事から改めて考えてみるべきかもしれません。

妥協することは、高すぎる理想を現実に合わせたり、その場にいる人達への配慮のために行うことが多いと思います。必ずしも悪いことばかりではないかもしれませんが、戦略を徹底すべき時は妥協すべきではありません。

この判断は難しいものがありますが、この辺りは、最終的には鈴木会長の個性に基くリーダーシップに拠るところが大きかったのでしょう。

記事では、百店突破の記念式典での挨拶で、鈴木会長が感極まり言葉につまって涙をこぼした様子も描かれています。このようなエピソードを聞くと、ほっとしますね。

nagai

« 2007年4月16日

2007年4月17日の投稿

2007年4月18日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

永井孝尚

永井孝尚

オフィス永井代表。 著書「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ(中経出版)、他。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
mm21
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ