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マーケティングとは? グローバル化とは? ライフワークとは? 一緒に考えてみましょう

« 2007年3月2日

2007年3月4日の投稿

2007年3月5日 »

このブログでも何回かご紹介した「貫徹の志 トーマス・ワトソン・シニア IBMを発明した男」(ケビン・メイニー著、有賀裕子訳)を読了しました。500ページを超える分量で、読み応えがあります。

結論から申し上げると、とても得るものがありました。

私が勤務するIBMは、独特な企業文化を持っています。

会社の中にいると、この企業文化が会社の至る所に根付いていることがよく分かります。

この企業文化をよりよく理解する一助になればと思い、私は様々なIBMに関する書籍を読みました。

特に、先代CEOのガースナーが引退直後に書いた「巨像も踊る」は、外部から来た人の視点で、IBMの内部や企業文化について述べており、特に参考になりました。

ただ、多くの著作が現在のIBMの文化をgivenのもの(=既に与えられた前提条件)として捉えているものが多く、IBMの企業文化がどのようにして生まれ育っていったのかについて、腹に落ちるような説明は得られませんでした。

このトーマス・ワトソン・シニアの本は、現在のIBMの企業文化の基盤が、1920年代から1950年代を通じていかに培われてきたか、徹底した調査を元に非常に克明に描いています。

IBMの企業文化が培われてきた様子を、このように克明に描いた書籍に出会ったのは、初めてです。

著者は、ワトソンの数々の遺産の中で、下記3点が特筆に値するとしています。

1.情報という種から産業を芽生えさせた

「統計機械やコンピュータはワトソンがいなくても発明・販売されていたが、それをビジネスに仕立て上げて情報処理関連の製品を企業・大学・政府・軍部に売り込む手法を編み出し」、その結果、「情報処理は一つの産業としてまとまりを保ちながら発展していった」と述べています。

2.企業文化に大いなる可能性を見出した

「ワトソン以前には、社風は経営陣が意図して育て慈しみ分析することはなかったのに対し、ワトソンは明快で躍動感あふれる社風を培い、どうすれば新たな息吹を吹き込めるかに絶えず心を砕いていた」と述べています。

3.企業経営者が著名人(セレブ)として扱われるさきがけとなった

「ワトソンはIBMが小粒だった当時からすでに著名人の仲間入りを果たしており、名を上げるための努力を惜しまなかった」と述べています。

また、本書では、ガースナーの著書「巨像も踊る」のガースナーの言葉を引用しています。

「IBMでの日々をとおして痛感した。企業文化は数ある要素の一つではなく、これこそがすべてを決めるのだと。.....突き詰めていけば組織とは、一人ひとりの価値を生み出す力が積み重なったものにほかならない」

このIBMの企業文化を生みだす企業遺伝子を理解する上で、本書は大変参考になると思います。

nagai

IBMの初代経営者だったトーマス・ワトソンが、1940年代後半に

「コンピュータにはせいぜい5台分の市場しかないだろう」

という的外れな発言をしていた、という有名な逸話があります。

「貫徹の志 トーマス・ワトソン IBMを発明した男」の著者が、今日残る講演録、各種新聞・雑誌記事、議事録や手紙をチェックしたところ、そのような言葉は全く見当たらなかったそうです。

確かに、初めての電気機械式計算機Mark Iが誕生した頃は、ワトソンは当時売れに売れていたパンチカード・ベースの統計機械と比べてコンピュータの重要性をそれ程高く認識していなかったのは確かだったようです。

しかし、1945年にはENIACを設計・開発したエッカートとモークリーをIBMに招くことを検討していましたので、コンピュータの需要を5台よりもはるかに多いと考えていたのは事実だったようです。

著者は、何故この言葉の語り手がワトソンだったとしたのか、いくつかの説を紹介しています。

  • 1953年に息子のトーマス・ワトソン・ジュニアが講演の中で、「1940年代にIBMが電子計算機の開発を検討した際に5台の受注を想定していたが、実際には18台の注文が寄せられた」と語った話を根拠とした説
  • 1930年代にMark Iの開発に着手したエイキンが「化け物のような製品なので、二台分・三台分の仕事が来るとは思わなかった」ために、超計算機は未来永劫1台しかつくられないだろうと一旦同僚や記者に語ったが、IBMと共にMark Iの開発に取り組む間に見通しを引き上げて5台か10台くらいは作られるだろう、と述べたのが、誤ってワトソンの予測として伝えられたとする説。

いずれにしても、テクノロジーの見通しは読み違えやすいのは事実ですので、この逸話がこれだけ広がったのでしょう。

私が面白いと思ったのは、60年前という、つい最近のことでも、事実と異なる(可能性が高い)ことが世の中にあたかも事実のように伝わっている、ということです。

例えば、沖縄サミットで森首相がクリントン大統領と会った際に、"How are you?"と言うべきところを"Who are you?"と言ってしまい、大統領が「私はヒラリーの夫です」と答えたのに対して、"Me, too."と言った、というのは、口コミ等で面白おかしく言われています。

実は、そのような事実があったかどうかは確認できていないそうです。しかし、面白い話なので、口伝であっという間に広がりますよね。

以前、このブログのエントリー「モーツァルト・7つのウソ」でも書きましたように、モーツァルトの逸話の多くは誤りであるという研究結果があります。

歴史上の人物の場合は、さらに後世の小説家がドラマティックな話に仕立て上げるために様々な人物像を設定します。例えば、豊臣秀吉の場合も、様々な人物像で描かれています。

伝記になっている人々の姿というのは、かなり脚色されているという前提で考えるべきかもしれません。

このように考えると、数百年後、現在のIT業界はどのように語られるのか、考えてみると面白いですね。

nagai

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永井孝尚

永井孝尚

オフィス永井代表。 著書「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ(中経出版)、他。

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