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トーマス・ワトソンが「コンピュータの世界需要は5台」と言ったのは都市伝説?

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IBMの初代経営者だったトーマス・ワトソンが、1940年代後半に

「コンピュータにはせいぜい5台分の市場しかないだろう」

という的外れな発言をしていた、という有名な逸話があります。

「貫徹の志 トーマス・ワトソン IBMを発明した男」の著者が、今日残る講演録、各種新聞・雑誌記事、議事録や手紙をチェックしたところ、そのような言葉は全く見当たらなかったそうです。

確かに、初めての電気機械式計算機Mark Iが誕生した頃は、ワトソンは当時売れに売れていたパンチカード・ベースの統計機械と比べてコンピュータの重要性をそれ程高く認識していなかったのは確かだったようです。

しかし、1945年にはENIACを設計・開発したエッカートとモークリーをIBMに招くことを検討していましたので、コンピュータの需要を5台よりもはるかに多いと考えていたのは事実だったようです。

著者は、何故この言葉の語り手がワトソンだったとしたのか、いくつかの説を紹介しています。

  • 1953年に息子のトーマス・ワトソン・ジュニアが講演の中で、「1940年代にIBMが電子計算機の開発を検討した際に5台の受注を想定していたが、実際には18台の注文が寄せられた」と語った話を根拠とした説
  • 1930年代にMark Iの開発に着手したエイキンが「化け物のような製品なので、二台分・三台分の仕事が来るとは思わなかった」ために、超計算機は未来永劫1台しかつくられないだろうと一旦同僚や記者に語ったが、IBMと共にMark Iの開発に取り組む間に見通しを引き上げて5台か10台くらいは作られるだろう、と述べたのが、誤ってワトソンの予測として伝えられたとする説。

いずれにしても、テクノロジーの見通しは読み違えやすいのは事実ですので、この逸話がこれだけ広がったのでしょう。

私が面白いと思ったのは、60年前という、つい最近のことでも、事実と異なる(可能性が高い)ことが世の中にあたかも事実のように伝わっている、ということです。

例えば、沖縄サミットで森首相がクリントン大統領と会った際に、"How are you?"と言うべきところを"Who are you?"と言ってしまい、大統領が「私はヒラリーの夫です」と答えたのに対して、"Me, too."と言った、というのは、口コミ等で面白おかしく言われています。

実は、そのような事実があったかどうかは確認できていないそうです。しかし、面白い話なので、口伝であっという間に広がりますよね。

以前、このブログのエントリー「モーツァルト・7つのウソ」でも書きましたように、モーツァルトの逸話の多くは誤りであるという研究結果があります。

歴史上の人物の場合は、さらに後世の小説家がドラマティックな話に仕立て上げるために様々な人物像を設定します。例えば、豊臣秀吉の場合も、様々な人物像で描かれています。

伝記になっている人々の姿というのは、かなり脚色されているという前提で考えるべきかもしれません。

このように考えると、数百年後、現在のIT業界はどのように語られるのか、考えてみると面白いですね。

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