« 2009年4月2日

2009年4月5日の投稿

2009年4月7日 »

 Webの巡回をしていたら社内SNSで「友達まで」という公開範囲を設定していた記事を情報システム部門に予めの断りなく検閲されて上司の部長や課長経由で削除命令が来たというブログの記事をみつけた。
 これはちょっと酷い話である。確かに社内SNSは会社の資産で運営されるものであり会社がそれを管理する権限を持っているのは確かである。メールと同様検閲や強制削除の権限を会社側が保有し行使することは当然だ。但し、それは無制限ではなくプライバシー権その他一般的な道義に準じるべきだ。

 冒頭に紹介したブログの人の会社側(?)および周りの反応は「社内システムなんだから監視されてて当たり前、書くのが悪い」という意見が多く、無断で検閲するのは当然という感じで書いた人が批判されたということだが、これはおかしい。何がおかしいかというと、検閲することを明記していないことに加え検閲結果を本人ではなく勝手に他人(それも人事評価や懲罰を与えられる立ち場の上司)に伝達していることだ。
 例え会社側に社内SNSの内容を検閲する権利があるとしても「友達まで」と公開範囲を制限した文章をあらかじめの断りもなく検閲し、しかもそれを他人に報告するというのは行き過ぎだろう。

 最近では多くの会社がメールシステムについてやっているように、検閲をする場合はその旨とその開始時期をきちんと公表するとともに、知り得た内容の取り扱いについてどういう場合に誰に公開するかは予め示しておくべきだ。
 またその際に誹謗中傷や公序良俗に反するものは会社側で勝手に削除する旨も明記しておき、必要な場合は本人に連絡する前に公開停止(削除ではない)をするなどの強権の発動余地も残す。これも予め宣言しておけば「教育のために本人に削除させる」なんて悠長なことをやる必要はない。

 ただこうしたルールをあまりに目立つところに書くとユーザーが萎縮したりしらけてしまうこともよくある。さりげなく記載するとか導入時の最初の説明会で明言するにとどめるなどの工夫は必要だ。

 まあ社内SNSにどんなことを書いて欲しいのかというのは、会社ごとに社内SNSを導入する目的があって、本来はそれにあわせてこういったルールや体制を決めるべきだ。何が不適切な書き込みなのかはこの目的との整合性を持って判断される。たとえば業務情報を共有する目的に各課内でしか共有できない日誌SNSがあったとする。ここに他の課への苦情を書いた場合にそれを即座に誹謗中傷にあたるから削除しろというのはダメだ。当初の業務情報の共有という目的に照らし合わせて判断しないといけない。他の課への苦情が業務改善に繋がる話なら○だし単なる私怨的な陰口なら業務とは関係ない話だから書かないように指導をする。
 また書いた本人への指導や再発防止という面でも機械的に削除を求めるのではなく、こういった社内SNSの運営目的との不一致面をきちんと説明しなければならない。

 ちなみに以下に過去に私が関係した各社での社内SNSの検閲に関する考え方を参考までに列挙しておく

  • 検閲なし。何が起きても本人たちにまかせる。
  • 検閲なし、但し誹謗中傷および公序良俗反する内容は削除する旨を明記。運用としては連絡窓口を作り個別のメッセージに対して連絡が来た際に内容をスーパーバイザー権限で確認して対処する
  • 事務局(1名)がすべて検閲、チェックしているが決して口外しないし誰にも話さない。どうしても問題があって変更を求める場合も事務局から本人に直接電話をして対応する(電話した実績は年間1回以下)
  • マニュアルなどには校閲しますと書いてあるが、実際はノーチェック。一応いくつかのキーワードで時々全文検索をかけてチェックする程度(実際にこれまでは問題が発生したことは無い)

 各社各様であるが冒頭のブログの会社のような隠しておいて不意打ちというような事をやる会社はない。

 そもそも社内SNSに私事の日記を含めていろいろな事を書く行為は、確率は低いとはいえ新しい発想を生んで会社の売り上げを伸ばす可能性や既存の問題点を解決するアイデアに繋がってコスト削減が実現できる可能性はあるが、これに対して社内SNSの記事を検閲する行為はコストがかかるだけで何ひとつ生みだしはしない。
 検閲する権利を得た人はそこのところを勘違いしないことだ。

» 続きを読む

yoi

« 2009年4月2日

2009年4月5日の投稿

2009年4月7日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

吉川 日出行

吉川 日出行

みずほ情報総研勤務。情報共有や情報活用を主テーマにコンサルティングや新ビジネスモデルの開発に携わっている。

詳しいプロフィール

カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
knowledge
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


Special

- PR -
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ