社内SNSを無断で検閲し上司に報告するのは行き過ぎ
Webの巡回をしていたら社内SNSで「友達まで」という公開範囲を設定していた記事を情報システム部門に予めの断りなく検閲されて上司の部長や課長経由で削除命令が来たというブログの記事をみつけた。
これはちょっと酷い話である。確かに社内SNSは会社の資産で運営されるものであり会社がそれを管理する権限を持っているのは確かである。メールと同様検閲や強制削除の権限を会社側が保有し行使することは当然だ。但し、それは無制限ではなくプライバシー権その他一般的な道義に準じるべきだ。
冒頭に紹介したブログの人の会社側(?)および周りの反応は「社内システムなんだから監視されてて当たり前、書くのが悪い」という意見が多く、無断で検閲するのは当然という感じで書いた人が批判されたということだが、これはおかしい。何がおかしいかというと、検閲することを明記していないことに加え検閲結果を本人ではなく勝手に他人(それも人事評価や懲罰を与えられる立ち場の上司)に伝達していることだ。
例え会社側に社内SNSの内容を検閲する権利があるとしても「友達まで」と公開範囲を制限した文章をあらかじめの断りもなく検閲し、しかもそれを他人に報告するというのは行き過ぎだろう。
最近では多くの会社がメールシステムについてやっているように、検閲をする場合はその旨とその開始時期をきちんと公表するとともに、知り得た内容の取り扱いについてどういう場合に誰に公開するかは予め示しておくべきだ。
またその際に誹謗中傷や公序良俗に反するものは会社側で勝手に削除する旨も明記しておき、必要な場合は本人に連絡する前に公開停止(削除ではない)をするなどの強権の発動余地も残す。これも予め宣言しておけば「教育のために本人に削除させる」なんて悠長なことをやる必要はない。
ただこうしたルールをあまりに目立つところに書くとユーザーが萎縮したりしらけてしまうこともよくある。さりげなく記載するとか導入時の最初の説明会で明言するにとどめるなどの工夫は必要だ。
まあ社内SNSにどんなことを書いて欲しいのかというのは、会社ごとに社内SNSを導入する目的があって、本来はそれにあわせてこういったルールや体制を決めるべきだ。何が不適切な書き込みなのかはこの目的との整合性を持って判断される。たとえば業務情報を共有する目的に各課内でしか共有できない日誌SNSがあったとする。ここに他の課への苦情を書いた場合にそれを即座に誹謗中傷にあたるから削除しろというのはダメだ。当初の業務情報の共有という目的に照らし合わせて判断しないといけない。他の課への苦情が業務改善に繋がる話なら○だし単なる私怨的な陰口なら業務とは関係ない話だから書かないように指導をする。
また書いた本人への指導や再発防止という面でも機械的に削除を求めるのではなく、こういった社内SNSの運営目的との不一致面をきちんと説明しなければならない。
ちなみに以下に過去に私が関係した各社での社内SNSの検閲に関する考え方を参考までに列挙しておく
- 検閲なし。何が起きても本人たちにまかせる。
- 検閲なし、但し誹謗中傷および公序良俗反する内容は削除する旨を明記。運用としては連絡窓口を作り個別のメッセージに対して連絡が来た際に内容をスーパーバイザー権限で確認して対処する
- 事務局(1名)がすべて検閲、チェックしているが決して口外しないし誰にも話さない。どうしても問題があって変更を求める場合も事務局から本人に直接電話をして対応する(電話した実績は年間1回以下)
- マニュアルなどには校閲しますと書いてあるが、実際はノーチェック。一応いくつかのキーワードで時々全文検索をかけてチェックする程度(実際にこれまでは問題が発生したことは無い)
各社各様であるが冒頭のブログの会社のような隠しておいて不意打ちというような事をやる会社はない。
そもそも社内SNSに私事の日記を含めていろいろな事を書く行為は、確率は低いとはいえ新しい発想を生んで会社の売り上げを伸ばす可能性や既存の問題点を解決するアイデアに繋がってコスト削減が実現できる可能性はあるが、これに対して社内SNSの記事を検閲する行為はコストがかかるだけで何ひとつ生みだしはしない。
検閲する権利を得た人はそこのところを勘違いしないことだ。
あとついでにもう一言。
社内SNSの導入を検討している情報システム部門の人に「会社批判が書かれたらどうするのですか?」と良く聞かれるのだが、これは「会社批判が書かれたらなぜまずいのか?」という質問を投げ返すようにしている。