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不安定な状態を保つ
最初に綿密な計画書や指示があるわけではなく、チームは自由な裁量と同時に、困難なゴールを目指す。
オリジナルでは...
新製品開発は、トップマネジメントが不可能なくらい大きな目標を掲げてキックオフする。そこでは、明確に記述された新製品のコンセプトの企画書や開発計画書が手渡されるわけではない。逆に、簡単には出来そうもないくらいチャンレジングな課題が与えられ、その代わり、やり方はチームに任されている。新製品開発は、「計画どおり実行すれば完成する」というような計画書ベースの活動ではなく、最初から不安定な活動だと言えるだろう。チームメンバーには高い自由裁量と同時に、極端に困難なゴールが与えられる。これがスタート地点となる。
アジャイル開発では...
このような新製品開発における不安定さは、開始時に要求が決定していないアジャイル開発のモデルにも当てはまる。ソフトウェア開発はプロジェクトの開始時にすべての要求を固定することができないという特性を持つ。だから、アジャイル開発では、要求を固定するよりも、人を中心にしたコミュニケーションと協働でプロジェクトを前に進める。要求のリストは、優先順位をつけられて「バックログ」として管理されるが、このリストは時間とともに変化していく。常に不安的な状態といえるだろう。
スクラムを作ったJeff Sutherlandは、ソフトウェアの開発の新しいやり方を模索していたときにこの論文に出会い、まず、この状況の不安定さ、という共通点に目をつけたのではないだろうか。そして、この考え方がソフトウェア開発で使える、と直感したのだと思う。
連載で、スクラムの元になった"The New New Product Development Game"を再び読み、そこから得られるアイディアと、現在のアジャイルにおけるスクラム、を対比させて解説しよう、という試みをはじめます!
第一回目。

竹内弘高・野中郁次郎の論文「The New New Product Development Games」 (1986年)は、日本で行われている「新製品開発のプロセス」をNASA等の米国型のそれと比較して論じたものだ(図)。
この論文では、Type Aを米国NASAのPPP(Phased Program Planning)を例にとって、「各工程の専門家集団が、文書で次の工程の集団にバトンを渡すようにリレーをしている」と書いた。これに対して、Type Bの例として富士ゼロックスが、そしてType Cの例としてキヤノンとホンダが挙げられ、「ラグビーのようにボールを前後に回しながらチームで一丸となってボールを運んでいる」とした。
新製品開発という速さと柔軟さが求められる場面では、成果物を紙に書いてそれを渡すようなリレーをしていてはダメ。さまざまな専門性を持った人がチームを組み、ラグビーのように開発の最初から最後まで一緒に働く。人とチームを重視し、彼らに自律的に動ける環境を与えることでブレークスルーが起こりやすくなると同時に製品化までの時間が短くなる、というのがこの論文の主旨だ。
これは、現在のソフトウェア開発におけるウォーターフォール開発とアジャイル開発のことではないか、と既視感を覚える比較構造だろう。そして、竹内・野中はここでのType Cのようなチームを「スクラム」と名付け、チームの6つの特徴を挙げた。
- 不安定な状態を保つ
- プロジェクトチームは自ら組織化する
- 開発フェーズを重複させる
- 「マルチ学習」
- 柔らかなマネジメント
- 学びを組織で共有する
これらは、アジャイル開発のスクラムにも、ほとんどそのまま引き継がれているアイディアである。ここでは、この論文を再度読み解き、オリジナルに書かれている6つの特徴の意味と、アジャイル開発との共通点を考えてみよう。
この連載では、最初にオリジナルのスクラムを論文の原文をもとに概説し、続いて、アジャイル開発でのスクラムでそれがどう扱われているかを解釈していく。ここで、オリジナルは「新製品開発」が対象であり、ソフトウェアは(明示的には)取り扱っていない。また、アジャイル開発はソフトウェア開発に特化したものであることに注意して欲しい。
では早速、次のブログで。
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