Luis Gonçalves and Ben Linders の InfoQ ミニブック、"Getting Value Out of Agile Retrospectives"(PDF無料) をご存知でしょうか?日本でいう「ふりかえり」というプラクティスで使えるアイディアを実践的にまとめた本です。このミニブックの日本語版がでました!

「アジャイルふりかえりから価値を生み出す」
https://leanpub.com/gettingvalueoutofagileretrospectives_JP

(※7/29 追記:もうすぐ InfoQ Japan から日本語版が無償で読めるようになるようです)


アジャイル開発で最も大切なプラクティスは何ですか?

この問に、ぼくはいつも「ふりかえり」と答えています。ソフトウェア開発は現場ごとに特性が異なり、文脈依存性がとても高いのです。このため、どの現場にも合うような出来合いのプロセスは役に立ちません。アジャイルが発見したのは、プロセスを定義するのではなく、自己改善を内包したプロセスフレームワーク(あるいはプロセス生成機)を提供し、そこを起点にビジネス環境、組織文化、製品特性、そこで働く人々にあった開発手法へと、チーム自身が適応していく戦略。 そして、そこで一番大切な活動が、本書の主題である「ふりかえり」なのです。

日本では「ふりかえり」というとKPT(Keep/Problem/Try)が圧倒的によく知られていますが、本書は他にも使える手法を幾つも紹介し、分かりやすく、すぐに使えるように解説しています。ともするとマンネリ化しがちなふりかえりですが、本書が、あなたのチームが自分たちのやり方を獲得する助けとなり、さらにはチームを活性化するきっかけとなることを願っています。

最後に、著者は、Luis Gonçalves と Ben Linders。Benはぼくの友人でありバランスよいアジャイル感覚から多くの記事を書いています。また、訳者の大田さん、松田さん、新田さんはぼくの会社の同僚、そして監修の羽生田さんはぼくの長年の師匠、ということで、このようなチームで本書が日本語で世に出るのは、とても嬉しいことです。

平鍋

Youtube を使って、モデリング全般についてのショートビデオを集めたシリーズを作っています。Astah の利用法はもちろんですが、

  • UML(クラス図、シーケンス図、ユースケース図、状態マシン図...)
  • GSN(Goal Structuring Notation), D-Case
  • データモデリング, ERD

などなど、

  • モデリングにおいて重要なコンセプトを分かりやすくシンプルに伝える
  • UML にこだわらず、役に立つモデルを取り上げる
  • 短く、ぱっと見れて、すぐ役に立つ

ことを目指しています。特に、GSNやD-Caseは日本ではまだあまり知られておらず、もっと皆さんに知ってほしいという思いもあります。日本語と同時に英語でも作っていますので、社内の勉強会や海外のチームとの共通教材にも使えるようにしたいです。

順次、新作を上げていくので、Youtube のチャネル登録をお願いします。

例えば、こんなコンテンツが上がっています。

  • 例で理解するUML状態マシン図
  • クラス図の基本を、モデリングツール astah*を使って解説。
  • パターン編(1) 注文書を表現するヘッダー明細パターン
  • GSN解説(1) - GSN (Goal Structuring Notation)とは何か?

英語の方も。。。

  • Fundamental UML UseCase Diagram
  • Fundamental UML Class Diagram
    ぜひ、見てみてください。Youtube にフィードバックお待ちします!
平鍋

Talkingyamagishi

これだけモデリング!というコンセプトで、山岸さんが話された5/28の要求開発定例が面白かったので紹介します(山岸さんはリーンモデリングとも呼んでいたがぼくはベタにこれだけモデリング、という日本語が好き)。

情報システム部門目線で見て、どんどん複雑になるアプリケーションの要求や設計を見通しよく「共通合意」を作るための、「軽い」モデリングの必要性が今回テーマです。そうなんです、従来は、「全部書かなきゃだめ」とか「全部メンテしないといけない」とか、「下流を触ったら上流までさかのぼって修正しなきゃ」とか足かせが多かったので、なかなかペイしなかったのですね。だから、「これだけ」モデリングを提案したい、という訳です。

(※6/5 追記: 以下に、当日の資料を公開します。)

これだけモデリングとは、

  • 誰が? ー 情報システム部門の人(と開発の人が共に)
  • いつ? ー システム開発の前段階、すなわち「要求開発」の場面で
  • 何のために? ー 要求の引き出しと共通理解を作るために
  • 何を使って? ー UMLから選んだ「少数の図」と「少数の記法」で
  • どうする? ー モデリングする(可視化して、整理して、理解して、合意する)

というものです。UMLは13種類も図がありますが、全部使う必要は全くありません。

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クラス図、シーケンス図、アクティビティ図、ユースケース図を使って、システムの3つの側面を記述します。

  • 何をするか ー サービスモデル ▶︎ビジネスユースケース
  • 何がどうあるか ー 静的モデル ▶︎概念クラス図
  • どう動くか ー 動的モデル   ▶︎シーケンス図、アクティビティ図

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を書きます。ポイントは、

  • 書き過ぎないこと。
  • 使い捨てでもよい、と割り切る。
  • 無理にトレーサビリティを取ってメンテしようとしないこと。
  • 抽象的すぎるモデルを描かないこと。(アナリシスパターンを描いてはだめ)

です。山岸さんの言葉で言うと

「関わる人の頭の中に残像として残る程度の共通理解を得る」

こと、全体の見通しをよくすること、がちょうどいい加減なのです。業務からシステムに落としてく全体の図の感じはこのようになります。

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なお、当日は実習ということで astah* を使ってこんなお題をグループで書いてみました。

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グループモデリングに熱中する依田さん、高崎さん、平鍋の三人。モデリング経験者の討議は楽しい。

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ちなみに、ぼくもアジャイルの立場から「アジャイル時代のモデリング」(InfoQ)という記事を書いています。

さらに、原田巌さんも、「モデリングもしないでアジャイルとは何事だ?!」こんなプレゼンをやっています。

山岸さんは、要求開発の立場から、アジャイルにこんなことを言われていました。
アジャイルにはイテレーションがある。回っている大縄跳びに入るには、入る前に覚悟を決めたり、2、3回トントンとその場で飛んでみたりしないと、いきなりは入れない。その最低限の準備が必要なのだ。
なるほど、と思った次第です。山岸さんは、特にシステムが大きくなると、「素手で(モデリングなしに)」開発に挑むなどというのは、かなり無謀に思う、とのこと。もったいない、と。アジャイルであるかどうかに関わらず、「ペイする」分量のモデルという加減が必ずある、とぼくも思っていて、ぼくの「アジャイル時代のモデリング」では「維持し続けるモデル」を Keep モデル、「書き捨てるモデル」を Temp モデル、と呼びまた。山岸さんの「これだけ」モデリングと共通の考え方は、モデル、という成果物自体よりも「モデリング」という活動に価値を見ている点でしょうか。参加者が手を動かして「自分のもの」としてモデリングこと。これが大事なんですね。


平鍋

Astah_sysml 本日、チェンジビジョンから astah* SysML 1.2 をリリースしました。SysMLはモデルベースのシステムズエンジニアリング(MBSE: Model-Based Systems Engineering)をサポートする国際標準規格であり、その唯一の国産ツールがastah* SysMLです。

今回のリリースについて、プロダクトオーナー(製品の責任者)である周さんに、インタビューしました(社内インタビューですが。。。)。

  • 1.2のリリース!

平鍋: 周さん、よろしくお願いします。今日は、SysML1.2のリリース日でしたね!
周: よろしくお願いします。はい、ようやく出すことができてホッとしているのと同時に、もっともっと多くの方に使ってもらえるといいな、と期待しています。

平鍋: さっそくですが、製品を作っていく上で、大切にしていることを教えてください。
周: 世界にはさまざまなSysMLツールがありますが、特に「さくさくと直感的に使える操作性」を重視しています。実は、前バージョン1.1を出してから多くの方に使っていただき、たくさんのフィードバックを頂きました(本当にたくさんです!)。ユーザの声を中心にエンハンスしていきたい、という思いを大切にしています。

  • がんばった点、苦労した点は、、、

平鍋:今回は、1.1から1.2へのバージョンアップになります。どんな点に苦労して開発しましたか?
周:一番苦労したのは、短い期間で、どの機能を新バージョンに盛り込むか、ということに悩みました。

平鍋:どんな方針で採用する機能を決めたのですか?
周:1.1では機能がまだ不足していたのですが、とにかくユーザーさんからの要望が多く、どれを採用するかを決めるのに苦労しました。機能を豊富にしたい、という思いがありますが、今回は「今は1人で使っているが、今後チームで効率的に使いたい」という要望を重視しました。大きな改善としては、コピー&ペーストを導入し、複数のastah* SysML間でモデルをコピーできるようにしました。また、ポートの整列やフローの方向設定など、細かいことですが、大きなモデルになると困る点を改善しました。

  • ユーザーからのフィードバックが重要

Astah_nestedparts1平鍋: astah* SysMLは、どんなユーザーさんがいるのですか?
周: 現在のユーザさんには、海外だと軍事関係、教育関係、日本では自動車、ロボティクス関係が多いです。要望を直接聞くために、実際にユーザさんを訪問することもあります。また、SysML開発の最初から相談に乗ってもらっている産総研さんからも多数のアドバイスを頂いてます。例えば、今回の「コピー&ペースト」は、訪問した1ユーザさんから、もう1つの大きな機能追加である「パートのネスト表現」(図)は、 産総研さんのGeoff Biggsさんから頂いた要望です(Geoff さん、いつもありがとうございます!)。

平鍋: 利用しているユーザーのレベルはどのあたりでしょうか?
周: 現在はSysMLの勉強中、というユーザーさんも多数います。日本では今年からMBSEやSysMLの利用が大きく広がってくる可能性を感じます。このことからも、ツールとしてとにかく初めて使う人に優しくありたい。操作につまづかないように、直感的な操作性(マニュアルなしで使える)を大切にしているのです。また、「マルチプラットフォーム」も重要な特徴で、最近Macを使っている開発者も増えているので、Mac、Linux、Windowsでも動いてファイルを交換できるようになっています。

  • とにかく使ってみて、SysMLを体験してください

平鍋: 最後に、astah* SysMLの将来について、どんな構想をもっていますか?
周: 大きく言えば、メカ、エレキ、ソフト、ハードの技術者がコミュニケーションできる基本となる共通モデル作りと、その活用をサポートしていきたい、ということです。米国に実際に行ってOMGの会議にも参加しながら、今後も標準に準拠してきます。その基本方針なのですが、ぼくたちの思いは、繰り返しになりますが、ユーザーさんと供に成長するツールでありたい、ということです。ですから、初めてSysMLに触る方にやさしいツールでありたいと思います。ぜひ、ダウンロードして使っていただき、フィードバックをください。ツイッターでもフェイスブックでも、コミュニティサイトでもかまいません。

平鍋: ありがとうございました。
周: ぜひ、以下から無償評価をお試しください。

Kenjiyi1

平鍋

Cacoo や Backlog などのサービスで知られる福岡の元気な会社、ヌーラボさんが東京でカンファレンスを開かれる、とのことで講演する機会をもらいました。その名も、ヌーコン(nucon)です。今回は、typetalk というチームチャット新サービスの発表もありました。

ヌーラボさんがすごいのは、

  • サービスを機軸に事業をしている... しかも受託からシフトした
  • 世界に通用するサービスを次々と出している ... しかも時間をかけて育てた
  • 提供サービスの技術とデザインの両方イカしている ... 今のソフトウェアに最も必要なこと
  • そして、それを地元から世界に発信している、ということ。

代表の橋本さん、CTOの縣さんとは十年以上のお付き合いをさせて頂いています。

Iandnu

最初のXPアンギャでの写真をみると、そのころのお二人と私を懐かしく見ることができます(橋本さんも縣さんも若い...)。このような元気な会社のカンファレンスに呼ばれたことは、とても光栄で、わたしも興奮して参加させていただきました。

講演内容は、「インパクトマッピング」です。このソフトウェアを「なぜ」作るのか?という思いと、「何を」届けるのか?という成果物をつなぐ意図を、マインドマップで表現します。

講演は満員御礼を頂き、終わった後もたくさんの質問を頂きました。NUCONには、新しいサービスを立ち上げよう、と考えている方も多くいらっしゃるので、スタートアップの成功確率を上げるためにも、このようなライトウェイトで、分かりやすく、ビジネスの意図を共有する手法があるといい、というのがわたしの思いです。

Kenjisingsbeatles_3


そして、カンファレンス後半は、nulab night ということで、DJとバンドを入れての懇親会でした!社内にバンドがあり、それもすごいクオリティというのが福岡らしいですね。ぼくもはずかしながら、最後の曲でギター片手に歌わせてもらいました。

バンドの仲間として迎えてくれた、Dirth Nu のみなさん、どうもありがとうございました。

懇親会では、福岡や東京のエンジニアやデザイナーの方(特に、小川さん、堀内さんTakedaさんの三美女)、ヌーラボのシンガポール支社のLillian さん、スプーキーズの西塚さん、福岡市の執行さん、とお話しました。

とても未来を感じる会に参加でき、わたし自身も楽しみました。

Thank you Nulab, I'm very proud to be part of NUCON!

ありがとうございました!

平鍋

Impact Mapping from Kenji Hiranabe

今日、11年目のデブサミにて、「インパクトマッピング」の講演をしました。その資料をアップロードします。

インパクトマッピングは、イギリスの Gojko Adzic (『Specification by Example』の著者)の近刊です。

製品やWebサービスを開発するとき、ビジネス企画の意図をどのように開発に伝えますか?仕様書を書く?それで伝わりますか?ビジネスの変化に追従できますか?

インパクトマッピングは、ビジネス視点と技術視点、さらにはデザイナーという異なる文化をもつ人間どうし会話をするために、目標とそれを達成するための仮説をビジュアルにマインドマップで表現して、企画の意図を共有します。

  • 中心(WHY) = ビジネス目標。
  • 第一レベル(WHO)=アクター。目標を達成するために、誰に働きかけるか。
  • 第二レベル(HOW)=インパクト。アクターの行動をどうかえるか。
  • 第三レベル(WHAT)=成果物。インパクトを得るための、製品の機能。


このように、「ビジネスの目標」と「ソフトウェアの機能」を、「アクター」と「インパクト」を使って結んでいくのです。簡単でしょ?そして、これをワークショップ形式のファシリテーションで、ビジネス側と技術側で合意をつくれば、「どうしてその機能が必要か」という思いを、一体感を持って共有できる、というわけです。

当日は、デモを交えて、書き方を解説、アジャイルとの関連、さらに、他のマインドマップの使い方も含めて紹介しました。

また、「サイン会」が開かれ、翔泳社さんブースに用意された50冊が全部売り切れ!ということで、訳者の上馬さんととても喜びました。

Soldout

今回は、岩切さんもデブサミを卒業とのこと。長い間、こんな場を作ってくれてありがとうございました!

平鍋

Door

HOLSTEE の創始者である、Dave が来日しました。ぼくは、HOLSTEEマニフェストの日本語訳をつとめたので、この機会に、日本のファンを集めて小さな新年会を企画しました!

場所は、浅草のAS-OK.O2という、とてもかわいい小さなバー。写真は、マニフェストを貼った、扉のウェルカムボードです。

この会には、日本語版を書として表現してくれた、書家の秀麗さんもお子様連れで参加。それから、このマニフェストを紹介した「グロースハッカー」という本の編集を務めた日経BPの中川さんも来てくれました。さらに、飛び入りで、Daveの高校時代の同級生、Yutaroさんも駆けつけて、臨時で通訳を務めていただきました。ありがとうございました。

All

この会では、このマニフェストの通り、自分がいま情熱をもっているものについて、みんなと話ができました。

Daveは、それまでの会社を辞めて自分で会社を作るときに、「事業計画」の代わりにこのマニフェストを書いたそうです。会に来てくれた方々は、みなさんパッションをもって仕事に取り組んでいる。でも、人生は仕事だけじゃない。働くことと人生との関係、についていつも考えている。そんな人たちがこの日出会えたこと、そして、その場にいれたことをとても感謝しています。この集合写真は、Jessicaがとってくれたもので、みんなのいい表情が捉えられていますね。

ぼくは、マニフェストの中では、次の言葉がとても好きです。

Life is about the people you meet and the things you create with them.

「人生とは、あなたが出会う人々であり、その人たちとあなたが作るもの。」という内容ですが、最近このことを強く思うようになりました。それが会社の同僚であっても、お客さんであっても、また、友人であっても家族であっても。自分のLifeの中で出会ったパッションを持った人を大切に、その人たちと何かを作り出すことを続けて生きたい、と2014年の最初に思いを強くしました。

Daveも早速ブログを書いてくれました。

http://dave.radparvar.com/post/72196382294/holstee-holstee-meetup-in-tokyo-two-and-a-half

この会の準備では、バーの飾り付けと受付をしてくれた、あいちゃん、日本酒(七笑)を差し入れてくれた鳥井さん、おいしい料理を用意してくれたマスターの小林さん、どうもありがとうございました!

このイベントに先立って、連絡用に Facebook に日本のファンクラブ「HOLSTEE FANS JAPAN」を作りました。また、ぼくとHOLSTEEのこれまでの経緯について、過去のブログをまとめておきます。マニフェストとの出会い、日本語訳、そして、ニューヨーク訪問までの経緯です。

P.S.

こぼれ話を少々。実は、この会に来る前に、高層階にあるレストランで食事をする予定でしたが、レストランに着いたらまだ準備中(!)でぼくが入れたはずの予約が入っていない、というアクシデント。でも、レストランの方に頼んで、景色だけ見せてもらいました。この景色がすばらしかった!写真ではうまくとれませんが、東京タワー、夕日、富士山、が並んでみえる、2014年の年明けにふさわしい眺めでした。(はたして、ぼくはどこに予約を入れていたのだろうか。。。は、謎のままです)

View_2 Kaminari

Train

その後、浅草の雷門を見てきました。とても混んでいて、とてもお参りができる状況ではなかったのですが、ぐるっと周りを回って屋台や店の見学を楽しみました。人形焼やわさびせんべい、たいやきを食べました。

番外編ですが、今回の集まりで最もアツかったのは、デザインを学んでいる学生の原くん。開始時間の30分前から会場に来てまって頂きました。原くんは、最近マニフェストのポスターをHOLSTEEから購入したところ、Daveから「東京でミートアップがあるから来て見ないか?」と誘われたそうです。最後に乗った地下鉄では、おしゃべりがはずんで、とても楽しそうでした。

みんなの新しい2014が、いい形ではじまりますように。

平鍋

Gojko Adzic の“Impact Mapping” を訳したのが、こちら。

『IMPACT MAPPING インパクトのあるソフトウェアを作る』

IMPACT MAPPING インパクトのあるソフトウェアを作る

そういえば、世の中には、「~マップ」とか「~マッピング」と呼ばれる手法がたくさんあるなぁ、と思い、調査、整理しようと思う。こちらが、ぼくが持っているいろいろの本。これらを、分類してみる。

Books about "xxx-mapping"

これが、分類マインドマップ。( 拡大 | PDF)

Mapping_Mapping

というわけで、ぼくが知っているだけでもこんなにありました。まだまだありそうですね。分類マインドマップは、ここにおいておきます。( 画 | PDF)

平鍋

Kenjiimpactmapping

書籍、『Impact Mapping』を訳しました!

この本は、2012年のJolt Awardをとった"Specification by Example"を書いた、Gojko Adzic 氏の最新作なんです。

日本ではまだあまり知られていませんが、Gojkoさんは、アジャイル開発とビジネスの意図をつなぐ手法を啓蒙しています。

前作、「略称: スペック・バイ・イグザンプル」"Spec. by Example" では、「例(Example)」でもって仕様(Spec.)を記述することがテーマ。これによって、テストだけでなく、ドメインの言葉で開発とビジネスをつなげることを模索しています。ATDD(Acceptance Test-Driven Development)という言葉で語れていたものを、より具体的に書いた力作です。

そして、今回のこの本、『Impact Mapping』(インパクト・マッピング)では、さらに進んで(というか、シンプル化の道を進み)、マインドマップを使ってビジネス意図を表現することを提案しています。

簡単に解説してみましょう。

インパクトマップは、マインドマップの形をしていて、3レベル目までを使ってかかれます。ある製品(Webサービス)を開発するときに、これを書いて意図を共有するのです。

  • 中心(WHY) = ビジネス目標。
  • 第一レベル(WHO)=アクター。目標を達成するために、誰に働きかけるか。
  • 第二レベル(HOW)=インパクト。アクターの行動をどうかえるか。
  • 第三レベル(WHAT)=成果物。インパクトを得るための、製品の機能。

この順でマインドマップの枝を描きます。簡単に例を見てみましょう。オンラインゲームを開発しているとして、「プレイヤー数100万人」、という目標を立てたとしましょう。これを達成するために、誰に働きかけるか?これがアクターです。もちろん現在のプレイヤーの行動にインパクトを与えたい。その1つ、「友達を招待をする」という行動をとらせたいわけです。そこで、ソフトウェアの機能として、「セミオートの招待機能」という機能が提案されています。

このように、「ビジネスの目標」と「ソフトウェアの機能」を、「アクター」と「インパクト」を使って結んでいくのです。簡単でしょ?そして、これをワークショップ形式のファシリテーションで、ビジネス側と技術側で合意をつくれば、「どうしてその機能が必要か」という思いを、一体感を持って共有できる、というわけです。

以下の絵は、astah を使って描いていますが、ホワイトボードでも簡単に作ることができます。(上記の例を含む、astah professional 用テンプレートをここにおいておきます。ImpactMappingTemplate.astaをダウンロード

Example1

平鍋

GSN(Goal Structuring Notation)について。

GSNは「議論」をモデル化、可視化するもので、実用的には安全性(safety case)、ディペンダビリティ(D-Case)などの主張とそれを支持する議論構造を表すことを想定しています。しかし、他にも、数学の証明、ディベート、論文の議論構成、裁判の議論と反論、など広い応用がありそうです。

数学の例

Gsn

とりあえず、例として、数学的帰納法を表現してみました。簡単な例ですが、「正の整数nに対して、1..nまでの和がn(n+1)/2で計算できる」ことの証明です。

  • この証明すべきことを「ゴール」といいます。裁判や特許では主張(クレーム)、といいますね。
  • 証明には何通りもありますが、ここでは数学的帰納法に従います。これを「戦略」と言います。これ以外にも取れる戦略はいくつもあります。
  • そうすると、ゴールが複数のサブゴールに分けることができます。この場合は、n=1の時を証明すること。もう1つは、n=kで成り立つことを仮定し、n=k+1で成り立つことを証明すること。
  • そして、一番下に、証明がきます。これが「ソリューション」です。裁判の議論だと「証拠」ですね。動かぬものです。

さまざまな「主張」と根拠の議論構造を説明する

今は自動車業界のISO26262でも出てくるの「セーフティケース」を産業界のニーズと考えていますが、保証すべき「ケース」、には様々なもの、例えばセキュリティ、ディペンダビリティ、などもあり、それらをアンブレラ的に「保証ケース(Assurance Case)」 と呼びます。

ただ、GSN自身は、「議論構造を示す」だけであって、これで何かが保証されるわけではありません。「ぼくはこう考えたんだ」という議論の道筋を可視化しているだけです。なので、うそがあったり、思い違いがあったりします。

例えばディベートでは、相手の議論をGSNに描いてみて、弱そうな線をつぶしにいく作戦を練る、とか、裁判では、根拠の弱さを指摘する道具にしたり、もできそうです。ディベート戦略を練る道具ですね。

また、特に安全性が必要なシステムでは、「ここまで議論した」という事実を残すことで、実際に問題が起きたときに「ここは想定していなかったのだ」という検証もできることになります。

仕様や資料はどこに?

GSNの一番安定し、よく参照される記述法の仕様は、GSN Community Standard と呼ばれるものです。

OMGでは、Assurance Caseとして標準化されてきています。ここでは、より意味論が整備されています。

ちなみに、SACM は ARM ともう1つの仕様Software Assurance Evidence Metamodel (SAEM) から成ります。

ところで、、

ところで、GSN の元になっているのは、トゥールミンロジック。議論(ディベート)の基礎です(彼の『議論の技法』を参照してください)。

トゥールミンはイギリス生まれ。これをSafety の議論のモデルとして応用してコンピュータサイエンスの領域に持ち込んだのは、Tim Kelly の功績が大きく、彼もイギリス、現在ヨーク大学教授です。この前会いに行ったのはこのためです。とっても若く、気さくな教授でした。

平鍋


プロフィール

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平鍋 健児

株式会社チェンジビジョン代表取締役社長、永和システムマネジメント副社長。
オブジェクト指向開発、UMLの勘所、アジャイルな開発手法の未来、マインドマップのソフトウェア開発での利用方法、プロジェクトファシリテーション(見える化)を語ります。現在、マインドマップとUMLの融合エディタ、astah*(アスター、旧JUDE)を開発中。

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