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番組PRではないのですが(笑)、昨夜の「日立 世界ふしぎ発見!」は、カナダ・モントリオール発のサーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ」の特集でした。これまで日本でも「アレグリア」や「ドラリオン」といった公演が行われていましたが、今年10月には国内初の常設シアターがオープンするとのこと。番組内ではハリウッドで評判となっている公演なども紹介され、思わず10月からの公演チケットを買ってしまいそうになる(笑)内容でした。

ご存知の方も多いと思いますが、実はシルク・ドゥ・ソレイユは「サーカスの概念を一新させ、ビジネスとして大成功させた」ということで、その経営手法にも注目されることが多い企業です。例えば、以前もご紹介した『マーベリック・カンパニーマーベリック・カンパニー』では、その人材発掘法が取りあげられています:

シルク・ドゥ・ソレイユは比類ないビジネス戦略を開拓したといえる。確かにすばらしい業績だ。しかしここで理解しておくべきなのは、シルク・ドゥ・ソレイユ独自のパフォーマーへのアプローチ方法である。みごとなショーはまさに芸術品だ。これにはシルク・ドゥ・ソレイユが最高の才能を可能なかぎり発掘し、評価し、採用するすぐれた技をものにしたことが大きく関係している。

(中略)

最高の人材を見つけ、彼らを惹きつけることをよほど重視している組織でなければ、とうていできないだろう。現在の空きポジションのためでもなければ、現在計画段階にあるショーのためでもない人材を見つけようというのだ。ニーズが発生する前のスカウト活動として、シルク・ドゥ・ソレイユは広範囲に網を張る。キャスティング部のメンバーは心躍るようなすばらしいパフォーマンスをする人材を求めて、ノンストップで世界中を探しまわる。年間20回から40回出張に出て東欧の体育館、ブラジルの街、モンゴルのパオまで、とにかく地の果てまで足を伸ばす。また各種スポーツの試合、パフォーミング・アートのフェスティバル、サーカス学校、文化的な催しなどありとあらゆるものを巡り歩く。

「才能はあらゆる場所に存在しています」ジアソンはいう。「だから私たちはありとあらゆる場所に目を光らせます。つねに新しい自分をつくっていきたいと願うならつねに新しいものを取り込まなくてはなりません。シルク・ドゥ・ソレイユの人間は皆、それを実行しようとしています。新しい才能を発見するチャンスがあれば、絶対に逃しません。つねに目を見開いていること、それが私たちに課せられたことです」

とのことで、クリエイティビティに溢れたステージをつくるために、出発点である「人材」を発掘することにも力が入れられているわけですね。特徴的なのが、発掘の対象としている分野の広さ。上記にある通り、各種のスポーツ関連施設・イベントだけでなく、現在はストリップ劇場やSMクラブ、リドやムーランルージュといったキャバレーなどにも足を伸ばしているとのこと。また有名ブランドであるが故にパフォーマー自らが売り込んでくることも多く、ウェブ経由での受付も可能にする計画があるのだとか。

もちろんこれは、「作り上げようとしているのがサーカスだから」可能な戦略かもしれません。しかし「フラット化された世界」において、現代の先進国にある企業が生き残るためには、クリエイティビティを発揮しなければならないこと――そしてクリエイティビティが生まれるためには、幅広いバックグラウンドを持った人々の交流がなくてはならないことが、最近繰り返し指摘されるようになってきています。今後はエンターテイメント以外の分野で活動している企業であっても、できる限り広い世界から人材を発掘できるかどうかが、成功のカギを握るようになってくるのではないでしょうか。

先日のエントリで、「美大で学べるスキルは一般企業の中でも価値を発揮するかもしれない」的なことを書いたのですが、MBAの授業にアートを取り入れようという動きがあることからも、「ビジネスをするならビジネスだけをみていれば良い」という世界は終わったのだということが明らかでしょう。早速今夜から夜の街に出かけよう、という話ではありませんが、時にはまったく注目していない分野に目を向けてみるのも良いのでは。シルク・ドゥ・ソレイユという「サーカスの一座」には、ハーバード・ビジネス・レビュー誌が注目するほどの経営ノウハウが詰まっていたのですから。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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