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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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昨日はソニーさんのディーラーコンベンション2008にお邪魔してきました。ソニーの新商品、新サービス、開発中の新技術などが一堂に会するこのイベント。まだ市場に出回っていないものも多く、一足先に最先端の技術を楽しませていただきました。

中でも印象に残ったのは、コンベンション会場に入る際の仕掛け。すぐに展示会場に入ることはできず、まずは階段式のアリーナになっているホールに座らされ、大型スクリーンに映し出されるプロモーション映像を見ることになります。ハイビジョン技術やブルーレイなど、ソニーが誇る技術力を徹底的にアピールし、期待が最高潮に達した時点で……目の前のスクリーンがスルスルと下に。その向こうに広がるのは、たったいま映像で見たばかりの製品たちが集められた展示会場!この演出は圧巻でした。

それじゃ具体的な製品の話を……と思ったのですが、あえてこちらのニュースを紹介したいと思います:

電子メール専用端末「Peek」、100ドルで販売開始 (マイコミジャーナル)
Nontechies, This One’s for You (New York Times)

スマートフォンではない、電子メールの送受信「だけ」を行う専用端末"Peek"の販売が米国で開始された、という記事。詳しい仕様は上の記事と、Peek 公式ページを見ていただくとして。ご覧のように、なかなかスッキリとしたデザインです(こちらのページにも写真が):

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しかしこの時代に「電子メール専用端末」って。スマートフォンに力を入れる、日本のケータイキャリア各社が聞いたら卒倒しそうな商品ですが(MVNO で展開されるなら歓迎かも?)、New York Times は Peek に足りない機能を並べた上でこう評しています:

But now I’m starting to sound like a feature-lister. Truth is, the Peek, even in its current condition, elicits “oh, I want that!” from many a nontechie.

Not everyone wants or needs a smartphone; plenty of people would rather talk on a comfortably compact cellphone instead of holding what looks like a JuicyJuice box up to their heads. For them, having a sweet, thin Peek in the purse or the pocket, just for e-mail, makes a lot of sense.

しかしこう書くと、私がとにかく機能が多いことを歓迎するタイプのように聞こえるかもしれない。実は Peek は、現時点の性能であっても、テクノロジーに詳しくない人々からは「そうそう、こんなのが欲しかった!」という反応を引き出すような製品だ。

誰もがスマートフォンを必要としているのではない。多くの人は、ジュースの紙パックぐらい大きな端末を持つ代わりに、小型のケータイで通話する方を選んでいる。メール送受信のためだけに薄くて可愛らしい Peek を持ち歩くことは、彼らにとっては十分に理に適っているだろう。

(中略)

So go ahead and scoff, feature-listers; a wonderful world waits for you at blackberry.com,iphone.com, windowsmobile.com and palm.com/treo. It shouldn’t affect you one whit that there’s now an easy, cheap way for the other kind of people to keep in e-mail contact wherever they go.

そんなわけで、多くの機能を求めるタイプにはご退散願おう。君たちには BlackBerry や iPhone、Windows Mobile、Palm などといった素晴らしい世界が待っている。どこでもメールをチェックできる、簡単で安い手段を人々が手にしようと、君たちには何の影響もないだろう。

ということで、機能が不足していることを挙げるのは簡単だけれど、普通の人々にはこれこそが求めていたものではないかと指摘しています。ある意味では、Peek も「最先端の」製品であることは間違いないでしょう。

ソニーのコンベンションで出会った「最先端」の多くは、機能を重視する人に向けたものであるように感じました(まぁディーラーに向けてのイベントなので、力点が技術に置かれるのは当然といえば当然ですが)。解像度、画素数、高感度センサーなどなど――それらは何年にもわたる開発によって完成したもので、世界に誇ることができるものであることは十分に理解しています。しかし上手く言えませんが、スマートフォンではなく「簡単にメールが使える端末」を求める人々。ネットに接続して様々な機能がダウンロードできるテレビではなく、リモコンのボタンが少ないテレビを求める人々。そんな人々に向けたメッセージがあまり感じられなかったことが、少し気になりました。

もちろん「それはソニーが追っている方向性とは違う。既存の技術でシンプルな製品を作る、他のベンダーに任せておけばよい」という話もあると思います。しかし要素技術の素晴らしさについての解説だけでなく、「人々はこれを求めているはず」というソニーさんの意見を、もう少し聞いてみたかった気がします。

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アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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