シロクマ日報:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) シロクマ日報

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

« 2008年9月4日

2008年9月5日の投稿

2008年9月7日 »

Chrome ネタでもう1つ。華々しく登場した Google 製ウェブブラウザ"Chrome"ですが、「セキュリティ/プライバシー上の問題がある」「Firefox のようにアドオンの充実が必要」などの理由から、シェアをどこまで伸ばせるかについては懐疑的な見方が少なくありません。では Chrome は無意味なのか――そうとは限らず、「ブラウザの高速化競争を招くことが Google の狙いではないか?」という意見が出てきています:

グーグルが「Chrome」を作った理由--高速ブラウジングがもたらす利益 (CNET Japan)

Googleの共同設立者であるSergey Brin氏は、「人々がインターネットをたくさん利用し、さらに素早く簡単に利用できるようになれば、Googleの事業はうまくいく」と述べた。

 少数の新しもの好き以外の人たちやウェブ開発者を説得してChromeを導入させること、競合ブラウザの開発ペースに合わせること、Googleを怖がる人たちにGoogleがまたひとつコンピュータの重要なアプリケーションに関わったが問題ないと安心させることなど、GoogleはChromeに関して多くの課題に直面している。しかし、Googleの影響は強力であり、パフォーマンスについて語り、クロムめっきのサーベルについて話しまくるだけで、Googleのウェブアプリケーションの基本方針を進展させるのには十分だろう。

(中略)

さらに、Brin氏は、たとえChromeが競合ブラウザの開発者の競争心をあおる以外の影響を及ぼさなかったとしても、Googleにはメリットがあると言い添えた。「Chromeの発表により、Internet Explorer 9がずっと高速化されれば、Googleにとっては成功と見なされる」(Brin氏)

たとえ Chrome がシェアを伸ばせなかったとしても、「あの Google がブラウザを開発した」と注目を集めることで、「ウェブの閲覧はもっと速くできる」「ウェブアプリケーションでもストレスを感じないぐらい速くなる」という風に人々の意識を煽ることができる――それに応じる形で他のブラウザが速くなれば、人々はよりネット上で行動するようになり、Google にとっては万々歳というわけですね。以前紹介した Nick Carr 氏の意見に近いですが、そのプロセスがちょっと異なる、という感じでしょうか。

一言でウェブブラウザと言っても、そこに人々が求めるものは千差万別でしょう。ある人はウィルスやフィッシングの被害を食い止めてくれるようなセキュリティを望み、別の人は Firefox のように様々な追加機能が揃っていることを、さらに別の人は操作性が良いことを求める――これらの意見に全て対応していては、「高速化」という面に大きな開発リソースが割かれる可能性は低くなります。さらに多くの人々にとっては、まだまだウェブは「表示に時間がかかるもの」でしょうから、多少スピードが遅くてもブラウザを責めることは少ないはず。そんな状況を変えるために、Google は「速さ」という要素が全面に打ち出されたブラウザ・Chrome を発表したのだ、という推測は確かに納得できるものです。

まぁ推測は推測に過ぎないので、どこまで Google がこんなシナリオを考えているかは分かりませんが。とにかく「高速化」という方向でブラウザの軍拡競争が起きれば、どう転んでも Google にはおいしい状況のはず。その意味で、Chrome の評価はそれ単独ではなく、今後ブラウザというものに人々がどう接するようになるか――さらに言えば、ウェブアプリケーションがどう使われるようになるか、という面まで含めて考えなければいけないのかもしれませんね。

アキヒト

« 2008年9月4日

2008年9月5日の投稿

2008年9月7日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
akihito
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ