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個人ブログでも書評を書いたのですが、最近『グーグルvsアップル ケータイ世界大戦』という本を読みました。タイトルにある通り、Google と Apple の最近の動きを軸にして、世界の携帯電話業界を俯瞰した本です。その中で「ノキアは端末を売る会社から、サービスを売る(ために端末を売る)会社へと転換しようとしている」というような解説があったのですが、ちょうどその動きを象徴するようなニュースがありました:

Nokia、1年間の音楽無制限ダウンロードサービスを英国で提供 (ITmedia News)

英国での話ですが、ノキアが特定の携帯端末を対象に、1年間の音楽無制限ダウンロードサービスを提供するというニュース。端末メーカーが音楽配信サービスを手がける――と言えばアップルと iPhone、iTunes を彷彿とさせますが、BusinessWeek はまさしくアップル/ iPhone に対抗する動きだと評しています:

Nokia Launches Digital Music Service (BusinessWeek)

1曲/1アルバムという単位で課金する iPhone のモデルに対し、期間限定でダウンロードし放題、料金は端末と一括で、さらに他ユーザーとのファイル共有も可能、というモデルで消費者にアピールしようというノキア。成功する確率がどれだけあるかは別にして、様々なモデルが楽しめるようになる状況は、利用者にとって願ってもないことでしょう(ぜひ日本でも同じような動きが生まれて欲しい!)。

ところで。日本の携帯電話業界は、キャリアを頂点とする垂直統合モデルが長く批判の的になってきました。しかしアップルやノキアが目指しているのは、自らが主導して新しい統合状態を作ることに他なりません。前掲の『ケータイ世界大戦』の中では、これを「キャリアではなく、メーカーが頂点に立つ垂直統合モデル」だと指摘し、さらに「日本はガラパゴスかもしれないが、世界がそのモデルを真似し始めている」と評しています(iPhone が販売奨励金モデルを採用したこと等もその一例)。であれば、私たちはガラパゴスの「開放」を焦りすぎているのでしょうか?

もしかしたら、私たちはガラパゴスという言葉を使うことで、冷静な分析を放棄してしまっているのかもしれません。もちろん短所があるなら取り除かれるべきですが、「日本の携帯電話業界は元気がない、ならば日本的なものは全部ダメ」というメンタリティに陥るのは危険なことです。また世界で一般的だとされるモデルを、無批判に自分のものにしようとするのも同様に危険な行為でしょう。「ガラパゴスだから」という理由で日本的な慣行をやめるのではなく、きちんと個々の要素に目を向け、新しい理想像を考えていくこと――そんなことができりゃ苦労してない、と言われてしまいそうですが、とにかくこの島をじっくりと見つめ直すというのも良いのではないでしょうか。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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