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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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2007年12月4日の投稿

2007年12月5日 »

雑誌『PEN』の最新号、特集は環境問題。といってもそこはデザインの雑誌らしく、環境を守るさまざまな「デザイン」が取り上げられています。

そんな中で、個人的に一番ハッとさせられたのがこちらの看板。ジェニー・ベルグストロームさんというスウェーデン人デザイナーの作品で、ストックホルムの街中に置かれたものです:

air_we_breathe_1

看板部分を拡大したのがこちら:

air_we_breathe_2

なんだか薄汚い看板だなぁと思われたかもしれませんが、実はこれ、もともとは真っ白な看板だったとのこと(元々の姿は『PEN』で確認できます)。なぜこんなメッセージが浮き出てきたか、記事の説明を引用すると:

「ディス・イズ・ジ・エアー・ウィー・ブリーズ」という大型ビルボードでは、作品名の通り、“これが私たちが呼吸している空気”という文句を大きく掲げた。とは言っても、最初は何も書かれていない真っ白のボード。しかし一部が特殊加工されていて、文字の部分だけが日に日に排気ガスなどで黒く汚れ、やがて文章が浮かぶという仕掛けだ。

とのこと。目に見えない問題を、はっきりと目に見える形で示すための仕掛けだったわけですね。

しかしこんな回りくどいやり方をしなくても、「大気汚染が私たちの健康を害する」などといった直接的なメッセージを訴えればよかったのではないでしょうか?この点について、ジェニーさんはこう説明しています:

毎日、目にする壁紙の柄。そのデザインが、人々に環境問題を意識させるコミュニケーション機能を備えたとしたら、日々の生活の送り方はきっと変わることだろう――スウェーデン人デザイナー、ジェニー・ベルグストロームは、そう考えた。そして地球温暖化のグラフや、氷が溶けて縮小するグリーンランドの姿を、壁紙のパターンにすることを思いつく。

「アル・ゴアの映画をはじめ、メディアは“こんなに危機が迫っている”と脅すような表現をします。でも、そんな恐怖は長続きしないのでは」とベルグストローム。そこで彼女は、危機を視覚化することで、人々に根本的に働きかけることを考えた。

確かに、言葉は悪いですが「遠くのどこかで起きている大変化」を見せられても、「ああ恐いね」で終わってしまう人が多いでしょう。そうではなく、普段自分が目にする場所に、普段自分が行っている行動の結果が現れたら……メッセージの到達度は、格段に違ってくるはずです。

こうした「行動の積み重ねの結果によって生じる環境が(ambient)メッセージを放つ」という発想、実は既にデジタルにも応用されています:

デジタルほこり (Polar Bear Blog)

こうした「静かに訴え続けるメッセージ」という手法、環境問題だけでなく、様々な場面で活用できるのかもしれませんね。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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