シロクマ日報:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) シロクマ日報

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

« 2007年11月30日

2007年12月2日の投稿

2007年12月3日 »

It's hard to read the label when you're inside the bottle.

ビンの中にいたら、貼ってあるラベルを読むのは難しい。

いま『芸術の売り方』という本を読んでいるのですが、その中に登場する言葉です。元々は"Top 12 Advertising Mistakes to Avoid"という記事にある言葉で、「自社の製品/サービスについては知識があり過ぎるから、(自社社員が)それを客観的に見ることは難しい」というのが本来の意味。それを『芸術の売り方』では一歩広げ、芸術・文化事業(オーケストラや演劇、オペラなど)でも「自分たちの姿を利用者の側から捉えよう」という意味で引用されています。

たとえ話から過度の教訓を引き出すのは危険なのですが、この比喩の良いところは「他人が自分にどんなラベルを貼っているか=他人から見ると自分はどう見えるのか」に意識が向けられる点ではないでしょうか。自分たちの姿を把握しようとした時、最初に提案されるのは「客観的に見る」という行為でしょう。しかしそれは非常に難しい行為で、単なるデータの寄せ集めで終わってしまう場合があります。客観もいいのですが、それよりも視点を定めて自分を見る――すなわち「若年層は我々にどんなラベルを貼るだろうか」「主婦層はどうか」といったアプローチが有効なはずです。

最近、この「他人の視点で自分を見る」ということが欠けているのではないかという例が見られます。例えば前回「謝罪会見」について書きましたが、ある会見で一部のレポーターが取った態度が「行き過ぎである」として批判されました。これはマスコミが、視聴者がマスコミに何を期待しているのかを見誤っていることにも一因があるでしょう。また先日、Polar Bear Blog の方で「ケータイで情報をやり取りする姿を『異様』と言い切る新聞」について取り上げたのですが、こちらは「新しく登場するメディアを『異様』で片付けてしまう自分=古いメディアがどのように受け取られているか」という点に対する想像力が欠けた例だと思います。

自分も非難してばかりはいられません。僕は若い(?)とはいえ完全な「PC世代」で、正直「ネットはPCからアクセスするのが正しい」と信じて止まない面があります。ケータイからしかネットにアクセスしない世代なんて変だ――と思ってしまうのですが、そういった世代が僕を見たら「PCからしかネットにアクセスしたがらないオヤジ」となってしまうのでしょう。そのラベルが正しいかどうかは次の問題として、ビンの内側に引きこもるのではなく、他人から見た自分がどのように見えるのかを意識することが重要なのだと思います。

アキヒト

« 2007年11月30日

2007年12月2日の投稿

2007年12月3日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
akihito
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ