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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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2007年11月30日 »

何だかケータイにこだわっている自分ですが、今度は石野純也さんの『モバゲータウンがすごい理由』を読了。こちらは今年6月に出版されたもので、前回取り上げた『大人が知らない携帯サイトの世界』よりもさらに3ヶ月前の話になりますが、評判通りの内容でした。ただしケータイ業界全体の俯瞰->モバゲーの考察、という流れになっていて、表題にある「モバゲーがすごい理由」の考察がちょっと少ないかなという印象。新書なので仕方ないのですが、ケータイ業界の俯瞰に特化しているという点で、同じく石野純也さんの『勝手サイト 先駆者が明かすケータイビジネスの新機軸』の方が個人的にはオススメです。

さて、『モバゲータウンがすごい理由』の中にこんな一節があります:   

同サイトを数ヵ月ほど使ってみて、若いユーザーはバーチャルの世界に上手く適合できているな、という印象を受けた。これが、いわゆる出会い系サイトのようなものだったら、すぐに「会いたい」というメールが送られてくるが、そういうこともほとんどなかった。
(中略)      
現実は現実、バーチャルはバーチャルとしっかり割り切っているユーザーが非常に多い。

また長くなりますが、こんな一節も:   

健全なコミュニティを守ろうとする、ユーザーの自浄作用も強い。例えば、同サイトには「質問広場」というQ&Aコーナーが設置されている。この中で、いたずらに「モバゲーは出会い系サイト?」と聞こうものなら、多くのユーザーからバッシングを浴びることになる。もちろん、中には「インターネットなんて、どこでも出会おうと思えば出会える」という大人な(?)意見を述べるユーザーもいるが、大多数は自分たちのコミュニティを荒らそうとするユーザーに対して批判的だ。これは、後述するユーザーの取材からも感じたことだが、怪しいと思ったメールを“スルーする”技術も、こちらの予想以上に高い。

ということで、世間一般の見方とは違い、若年層の「ケータイ・リテラシー」の高さが指摘されています。もちろんこれを、ただ一人のライターが見た個人的な感想だと突っぱねることもできるでしょう。しかし「ケータイは無法地帯」「子供たちが悪さをする」という見方は、果たしてどこまで客観的なのでしょうか。

留学していた頃、日本のニュース番組が流れる時間を楽しみにしていました。その中で「特集:最近の若者はこんなに問題!」のようなコーナーが流れることが度々あったのですが、そこで描かれる若者像の酷いこと。男の子はみんなチーマー(古い)で暴力を古い、女の子は家出して援助交際をする。恐いなぁと思ったのですが、ふとこう思いました。日本にいた頃、こういったワイドショー的な番組以外で、現在の若者像を把握しようと思ったことがあったか?普段街中で見ているから分かった気持ちになっているだけで、実はそういった番組が押し付けてくるステレオタイプな若者像を鵜呑みにしているだけではないのか?

もちろん「多分大丈夫」などという楽観論に立って、何の規制や監視を行わないというのも問題です。しかし「悪いことが起きるはずだ」という曖昧な考えで、過剰な規制を行ってしまうのも、同時に問題ではないでしょうか。「あいつらにネットのことなんて分かるわけがない。取り上げてしまえ」というのでは、あまりにも若い人のことをバカにしていると思います。もしかしたら、自分に分からないから相手も分からないだろう、と推測しているだけかもしれないのに。

せめて危険に目を向けるなら、そのプラスの面にも目を向けるべきだと思います。「若者の活字離れ」を問題視しておきながら、ケータイ小説の流行には「あんなの小説じゃない」「ただの遊び」と決め付けるのも、これまたバカにした話でしょう。僕にも娘がいるので、すぐに人事ではない話になるのですが、せめて根拠のないステレオタイプだけで判断したり、娘が夢中になっていることを理解しようともせずに「全面禁止!」と叫ぶことだけはしないようにしたいと考えています。

< 追記 >

ちょうど ITmedia で、以下のような記事が出ていました:

米国でネットいじめが拡大、「武器で対抗」も (ITmedia News)

なんでも「アメリカ流の方が優れている!」などと言う気はさらさらありませんが、以下の点に注目したいと思います:

研究者らは、「学校と親が協力して、子供やティーンエージャーから貴重なインターネットアクセス環境を奪うことなく、こうした行動を抑止する方法を見いださなければならない」という意見で一致している。

(中略)

インターネットやテキストメッセージングの利用を全面禁止しても、うまくはいかないだろうとハーツ氏は付け加えた。「技術は子供たちに多くのメリットをもたらしている」と同氏。「彼らは、技術が使えなければ機会がなかったような交流を楽しんでいる」

 クレムソン大学のパトリシア・アガツトン氏のチームが148人のティーンエージャーを対象に実施した詳細な聞き取り調査では、ティーンエージャーが多くの場合、オンライン利用を認めてもらえなくなるのを恐れて、いじめについて親に話さないことが明らかになった。

仮に規制が止むを得ない状況であっても、「全面的に禁止」というポリシーの弊害にも目を向ける必要があるのではないでしょうか。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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