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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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そんなことは言わなくたって分かるだろ、と言われてしまいますが。ここ数日、イベントで聞いた発言を咀嚼したり、ケータイでブログや twitter を書いたり、恥ずかしさを感じながら「プロフ」や「魔法のiらんど」を使ってみたりする中で、ようやくタイトルのような悟り(?)を開くことができました。

特に大きかったのは、次の本による考察:

大人が知らない携帯サイトの世界

今年9月に出版されたものですし、既に多くの方々が取り上げておられるので、ご存知の方も多いと思います。タイトルの通り、「大人」――とはいっても僕らのような「PC世代」――が「ケータイ世代」について抱いている誤解を解いてくれる良書。新書なので、時間がない方にもオススメします。

サブタイトルに「PCとは全く違うもう1つのネット文化」とあるように、本書を通じて流れているメッセージの1つが「ケータイ向けのウェブとPC向けのウェブは根本的に異なる」というもの。僕らは無意識のうちに、PCで見るネットが「主」、ケータイで見るネットが「従」として考えがちです。例えば僕がケータイでネットを見るとき、主に Mixi や Gmail に接続することが多いのですが、それはすなわち「PCで見る方がいいんだけれど、時間がない/PCが開けないからケータイで見る」という姿勢です。「ケータイ・ウェブはあくまでもPCウェブの補完物」という意識ですね。

しかし本書では、「ケータイ世代」がいかにケータイを「主」と考えて使っているかが描かれています。いや、彼らはPCでもネットに接続するとは限らないので、「主従」というよりも「ケータイ・ウェブがインターネットの全て」と捉えている場合が多い、と言った方がいいかもしれません。いずれにしても、ケータイでネット接続するのが当たり前の人々に対してチューンナップされ、また彼ら自身が自分たちに合うように育ててきたのが「ケータイのウェブ文化」。PCのウェブ文化とは似て非なるものであることは当然なわけです。

しかしケータイ世代とは違い、PCからネットを使い始めた人々は、どうしても「PCサイトを批評する目」でケータイサイトを見てしまいます。ちょっと話はズレてしまいますが、昨日の New York Times に出ていた記事もそんな視点がよく現れたものでしょう:

Mobile Web: So Close Yet So Far (New York Times)

iPhone の大ヒットなどにより、米国でも「ケータイ・ウェブ(Mobile Web)」がメジャーになる日が近いことを報じるものですが、一方でこのような文章もあります:

“The user experience has been a disaster,” says Tony Davis, managing partner of Brightspark, a Toronto venture capital firm that has invested in two mobile Web companies.

While many phones have some form of Web access, most are hard to use — just finding a place to type in a Web address can be a challenge. And once you find it, most Web content doesn’t look very good on cellphone screens.

「ユーザーエクスペリエンスは最悪だ」、モバイルウェブ企業に投資しているトロントのベンチャーキャピタル"Brightspark"でマネージングパートナーを務める Tony Davis はこう述べている。

多くのケータイから何らかの形でウェブアクセスが可能になっているが、ほとんどは使いづらいものだ ― ウェブアドレスを入力する場所を見つけるだけでも一苦労。見つけたとしても、ほとんどのウェブサイトはケータイの画面ではきれいに見ることができない。

ここでは何の前置きもなく、「PC用サイトをそのままの見た目でケータイに表示させること」が良いという前提で話が進んでいます。記事の最後には「ケータイとPCは別物だと考えた方が良い」という意見も出てくるのですが、逆にそういった意見が出るほど、米国でも「PCが主、ケータイは従」的な考え方が幅をきかせているということですよね。であれば、Google の Android のような試みも、「ケータイ・ウェブをPCウェブに近づける」ことにはなっても「日本のケータイ文化を促進する」ものにはならないのかもしれません。

いずれにしても、ケータイの世界で何かを始めようと思えば、ひとまずPCのウェブは忘れてしまった方がいいのかもしれませんね。少なくとも「ウェブとはこうあるべきだ」という意見は、無意識のうちにPCをベースとしていないかを気をつける必要があると思います。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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