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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

NVIDIAの強敵フィジカルAI。Google DeepMind "Gemini Robotics 2"の全身制御としゃべるGemini

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今泉追記:

末尾にロボティクス専門家向けのGemini Robtics 2公式ページで公開されている技術詳細を日本語で解説したテキストを付けました。


Google DeepMindから新しいロボット開発のアプローチが出てきました。

簡単に言うと、生成AIのGeminiが、ロボットを動かす身体性を備えたフィジカルAI "Gemini Robotics 2"として強化され、Geminiが人間の言葉を理解するロボットになってそのへんを動き回る...という印象です。一言で言えば「あ!Geminiがロボットになってる!」という感じ。NVIDIAワールドにはない驚きです。(NVIDIAは自前のしゃべるAIを持たないので)

Gemini Roboticsの前のバージョンは上半身だけで対応していたものが、Gemini Robotics 2では、しゃがんだり、バランスを取ったりという人間の下半身の動きをサポートします。操作者が言語で命令をすると、それを聞いて、全身の動きで命令を果たします。

Intelligent whole-body control with Gemini Robotics 2

これについて、ロボット工学では日本の専門家をはるかに凌駕する学習量のあるGemini氏に解説してもらいました。NVIDIAのロボット開発スタックであるIsaac, GR00T, Cosmosなどが不要のロボット開発方法論になるのではないか?という気がします。


「何で知能を動かすか」というアプローチにおいて、完全に異なる思想(手法)をとっていると言えます。

Google(Gemini Robotics / RT / PaLM-E系統)とNVIDIA(GR00T / Isaac / Cosmos系統)の2つのアプローチの違いについて、設計思想・システム構成・学習データ・制御ループの観点から比較・分析します。

1. 根本的なアプローチの違い

一言で言えば、「巨大な1つの脳(エンドツーエンド)で解こうとするGoogle」と、「高度にモジュール化された物理シミュレーションと分散AI基盤で解こうとするNVIDIA」の違いです。

  • Google (Gemini Robotics 2 + VLA): VLA主体のアプローチ

    • 思想: 言語・画像・行動を完全に統合した単一(または密結合)のモデルが、意味理解からモータの関節制御までを直接生成することを目指す。

    • 特徴: テキストや画像で世界を認識し、「次に打つべき関節の角度や速度ベクトル(ActionToken)」をVLA(Vision-Language-Action)モデルが直接出力。中間的な物理計算や状態遷移ルールを極力排除しようとする。

  • NVIDIA (Project GR00T + Isaac + Cosmos): 物理基盤+階層型エコシステム

    • 思想: 意味理解・軌道計画・低レイヤーの姿勢制御(RL policy)を分離(階層化)し、それらを大規模物理シミュレーション(Isaac)と世界モデル(Cosmos)で補強する。

    • 特徴: 高レベルな決定(GR00Tなど)から低レベルな関節制御(Isaac Labで強化学習されたポリシー)へと段階的に落とし込む。物理エンジンによるシミュレーションの精度と並列計算力を力技として使う。

2. アーキテクチャの対比分析

比較項目 Google (Gemini Robotics 2) NVIDIA (GR00T / Isaac / Cosmos)
制御手法

VLA (Vision-Language-Action)


マルチモーダルLLMの直接拡張

階層型アーキテクチャ


LLM/VLM (指示理解) + RL Policy (運動制御)

「全身制御」の実現方法 推論モデル+VLAが、足先から指先までの全関節アクションをトークンとして直生成 Isaac Sim上の物理強化学習(RL)で獲得した低レイヤーの歩行・平衝制御ポリシーにGR00Tが指示
世界モデル (World Model) 視覚・言語空間上の推論(Geminiの文脈理解) Cosmos 等による物理シミュレーション/動画予測ベースの空間理解
シミュレーション依存度 低〜中(実機デモ・データからの学習を重視) 極めて高い(Omniverse / Isaac Simでの合成データ生成とSim-to-Real)
ハードウェア結合 ロボット非依存を志向するが、自社研究用プラットフォーム(Apollo等)に最適化 デバイス非依存の**標準OS/プラットフォーム(Jetson / Thor)**の提供を目指す

3. 「全身制御(Whole-Body Control)」に対する視点項目の違い

動画で紹介されたGemini Robotics 2における「倒れそうになったら足を後ろに引く」といった一瞬の判断(フラクション・オブ・セカンド)は、ロボティクスにおいて最も困難な領域です。

Googleの解法:VLAによるダイレクト出力

  • メリット: 「バッグを認識して持ち上げる」という意味的・言語的なタスクと「転ばないように踏ん張る」という身体的タスクが同じモデル空間でシームレスに結合される可能性がある。

  • 課題: VLA(大容量モデル)の推論速度(Latency)。ミリ秒単位の物理フィードバックが必要な姿勢制御を、巨大なVision-Languageモデルの推論ループ(Hz)でどこまでリアルタイムにカバーできるかが最大のボトルネック。

NVIDIAの解法:機能の分離と物理エンジン

  • メリット: 「バランスをとる・歩く」というミリ秒単位の全身制御はIsaac Labで学習させた低レイヤーのRL(強化学習)ポリシーに任せ、GR00Tなどの高レベルモデルは「何をどこへ移動させるか」という軌道や目標値(Goal point)だけを出力する。

  • 課題: モジュール間の情報伝達(インターフェース)において「意味」と「身体制御」が分断されるため、複雑な文脈に依存した身体動作(例:重いものを持ち上げるときに自然に体幹を傾ける等)の柔軟性が下がるリスクがある。

4. ビジネス・エコシステムにおける対立構造

この手法の違いは、両社の事業構造の違いをそのまま反映しています。

  • Google: 「汎用汎化AI(AGI)」の延長としてロボティクスを捉えている。Geminiという強力な共通基盤モデルがあれば、ロボットハードウェアは「モデルが出力するアクションを実行する末端エンドポイント」に過ぎないというアプローチ。

  • NVIDIA: 「計算インフラと開発ツールチェーン」の提供者として臨んでいる。ハードウェアメーカー各社(1X, Boston Dynamics, Figure, Unitreeなど)が自作のロボットを作るための「GPU・物理シミュレータ(Omniverse)・基盤モデル(GR00T/Cosmos)」をフルスタックで売り込むアプローチ。

まとめ

どちらが優れているかというより、「GoogleはVLAという単一の強力な脳で全てを解決しようとするロマン的なアプローチ」をとっており、「NVIDIAは物理シミュレーションと階層型AIを組み合わせた現実的・工学的なエコシステムアプローチ」をとっていると言えます。

今後、GoogleがVLAの超高速推論(リアルタイム制御)を確立するか、あるいはNVIDIAがCosmosやGR00Tによってモジュール間の境界を完全に融合させるかによって、人型ロボットの標準(デファクトスタンダード)がどちらに傾くかが決まってくる見込みです。


日本のロボティクス関係者(研究者、エンジニア、新規事業・R&D責任者など)に向けて、Google DeepMind が公開した Gemini Robotics 2(旧来のGemini Roboticsの進化版)のアプローチを、学術的・産業的インパクトの観点から深掘りして分析します。

日本のロボティクス関係者向け「Gemini Robotics 2」インパクト分析

従来のロボティクス開発が 「要素技術の積み上げ(モデルベース制御・状態遷移・画像認識モジュールのパイプライン化)」 であったのに対し、Gemini Robotics 2 は 「大容量マルチモーダルAIによる全階層エンドツーエンド化」 を現実的に提示してきた点に最大の衝撃があります。

特に日本のものづくり・ロボティクス産業が長年強みとしてきた「正確な逆運動学(IK)計算」「局所的なフィードバック制御」「精密機械設計」のレイヤーに対し、Googleがどのようなパラダイムシフトを仕掛けているのかを5つのアプローチから解剖します。

1. 「歩行・姿勢制御」すらVLAに取り込む力技(エンドツーエンドの境界拡大)

日本の従来のロボティクス設計では、以下のように役割を厳密に分離するのが一般的でした。

  • 上位(高次元): タスク計画・視覚認識(VLM / LLMなど)

  • 中位(軌道計画): 腕のモーションプランニング、足先の歩行軌道生成(MPCなど)

  • 下位(低遅延): ZMP(ゼロモーメントポイント)制御、全関節のトルク・角度フィードバック制御(数千Hz)

Gemini Robotics 2 が変えたポイント:

足先から指先までの全身(Whole-body)の運動を、VLA(Vision-Language-Action)モデルのトークン生成の枠組みで直接制御し始めています。

「転びそうになったら足を後ろに引く」といった動的バランシング(Dynamic Balancing)レベルの物理制御を、「物理モデルを解く」のではなく「膨大なデータに基づくVLAの次アクション予測」として処理しようとしている点です。これは従来のロボット制御理論に対する明確なアンチテーゼと言えます。

2. Gemini Robotics-ER(推論モデル)と VLA の「2層脳構造」

本モデル群の決定的な強みは、2層(ツー・スピード)のアーキテクチャにあります。

  1. System 2(遅い思考 / 高次推論):Gemini Robotics-ER

    • 世界モデル・空間推論を担当。

    • 複数のカメラ映像(マルチビュー)から「棚の中央にある」「床にバッグがある」を把握し、タスクの成功判定(Success Detection)や失敗からのリカバリ手順を考える。

  2. System 1(速い思考 / 身体運動):Gemini Robotics 2 VLA

    • 低レベルのアクション生成を担当。

    • ERモデルの指示を受け、ミリ秒単位で「足から指先までの全関節」の制御トークンを吐き出し続ける。

日本のハードウェア開発者が直面しがちな「エッジ側の制御周期とクラウド側AIのレイテンシ差」という壁に対し、「思考の推論エンジン」と「身体制御のアクションエンジン」を分離しつつ同じGeminiエコシステム内で密結合させる構造を実用レベルに載せてきています。

3. 「ハードウェア共通基盤(Embodiment-Agnostic)」の現実味

日本市場では「特定の用途に合わせた専用メカニズム」を研ぎ澄ます傾向が強いですが、Gemini Robotics 2 は多様な機体構造への汎化能力を強烈にアピールしています。

  • Apptronik「Apollo」 のような人型ロボット(足・腰・腕・ハンド)

  • Franka Duo のような多軸ロボットアーム

  • 2本指グリッパーから多指ハンド(Inspire等)まで

同じ「VLAモデル」をベースに据え、異なる自由度(DoF)やセンサー構成を持つ機体に対して、個別のプログラムをゼロから書くことなく短時間でアタッチ・適応させている点は、ソフトウェアによるハードウェア差分の吸収が本格化したことを示しています。

4. 課題とボトルネック(日本のエンジニアが見るべき現実)

一方で、Googleが公開した数値(成功率など)を冷徹に分析すると、まだ大きな壁が存在します。

  • 絶対的成功率の低さ:

    • 「床からの持ち上げ(45.7%)」「棚からの持ち上げ(76.3%)」といった数値は、99.9%以上の信頼性が求められる日本の工場や物流現場ではそのまま使えない

  • リアルタイム性と物理制約の保証:

    • 完全なVLAによる直接制御は、予期せぬノイズや「モデルのハルシネーション(異常出力)」が起きた際、ロボットが暴走して自己破壊や人身事故を起こすリスク(Safety Boundaryの確保)が残る。

つまり、「確率的に正しく動く大容量モデル」と「確定的(Deterministic)に安全を保証しなければならない現場」のギャップをどう埋めるかが、今後の実装上の主戦場になります。

5. 日本のロボティクス産業が取るべき戦略的インプリケーション

Gemini Robotics 2 が提示する世界観を踏まえ、日本の研究者・企業は以下の選択を迫られています。

領域 これまでのアプローチ 今後求められるアプローチ
ソフトウェア 自社機体専用の制御C++コードやROSノードの書き込み Gemini ER / VLAなどの基盤モデルを「上位Brain」として接続する標準API設計
ハードウェア 精密な運動ができるが調整に手がかかる機体 AIモデルが「多少のガタや個体差を自己吸収・補正」すること前提の、低コスト・量産型ハードウェア
データ・現場 シチュエーションごとの個別教示データ(テレオペ) 「失敗しても自力でリトライする(Failure Recognition)」セルフ・ループ構築用の現場データ収集

まとめ:日本勢の勝ち筋

Googleが「巨大モデルによる知識・運動の統合(Software / AI)」を強烈に推進する中、日本のロボティクス関係者が勝機を見出すべきは、「実世界のフィジカルデータ」「リアルタイム安全制御メカニズム(Safety Interlock)」 です。

Gemini Robotics 2 のような強力な汎用「脳」を自社のメカニズムにどう組み込み、信頼性99.9%が求められる産業現場(ファクトリー・建設・介護など)に落とし込むかという「最後の数センチメートル(Real-world Grounding)のインテグレーション」にこそ、日本のエンジニアが果たすべき決定的な役割があります。

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