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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

英国が鉄道に1兆8,500億円を投資

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英国運輸省が11月下旬に鉄道に関する投資について発表しています。日本では報道されていないようなので、概略を記します。

[概要]
・英運輸省は、今後4年間にわたり、国営鉄道インフラ保有会社Network Railに対して140億ポンド(約1兆8,500億円)の投資を行う。
・高速鉄道に対しては別途、7億5,000万ポンド(約990億円)を投資する。
・その他、Crossrailプロジェクト、地下鉄改修、さらにはBirmingham、Tyneside、Nottingham、Sheffieldの各都市におけるライトレール(軽量軌道)プロジェクトに対しても投資を行う。

[Thameslinkプログラム]
・注:Thameslinkとはロンドン中心部および近郊を南北に走る50駅から成る路線。通勤に使われる他、ガトウィック空港などへのアクセスにも使われる。
・Thameslink路線を運行する車両の量をピーク時には二倍に増やす。
・Thameslink路線の運行用に新たに1,200両を購入。

[Crassrailプロジェクト]
・注:Crossrailプロジェクトとは、ロンドン中心部および近郊を走る新路線の建設プロジェクト。2017年に一部開業予定。
・Crossrailプロジェクト用に600両を購入。

[Great Western Main Lineの電化]
・注:Great Western Main Lineとは、ロンドンのPaddington駅を起点に西方に走る路線。
・向こう6年間でLondon、Didcot、Oxford、Newburyをつなぐ通勤路線を電化(現在Paddington駅からAirport Junction駅までしか電化されていない)。

[Liverpool、Manchester、Preston、Blackpool間の電化]
・Liverpool、Manchester、Preston、Blackpool間の電化に3億ポンド(396億円)を投資。完了は2016年。

[その他の車両購入]
・Thameslinkプログラム、Crossrailプロジェクトに加えて、2010年5月から2014年3月にかけて新たに650両を購入する。

[駅や路線への投資]
・Reading駅、Birmingham駅、London Kings Cross駅、Gatwick Airport駅に投資を行う(改修または拡張)。
・East Coast Main Line路線、Midland Main Line路線、Yorkshire周辺の路線に投資を行う。

[Intercity Expressプログラム]
・注:Intercity Expressプログラムとは、英国の高速鉄道の刷新計画。現在、ディーゼル機関車によるInterCity 125と電気機関車によるInterCity 225が走っている。これを新型の高速鉄道車両に置き換える。総投資額は75億ポンド(9,900億円)。
・経緯を要約すると、日立が参画するAgility Trainsが優先交渉権を勝ち取ったが、英国内で議論がわき起こり、英運輸省が他の選択肢を含めて検討中。
・最終判断は2011年早々に出される予定。

[補足]
・英国では政府系の鉄道インフラ保有会社Network Railが鉄道の線路、駅、車両などのインフラを保有しており、それを民間の鉄道運営会社(オペレーター)に貸し出す形で鉄道事業が成り立っています。
・ロンドン近郊路線はピーク時の混雑が激しいこと、一部の主要路線では未電化区間が残っていること、車両の陳腐化が見られることから、国として、鉄道網に抜本的な投資を行うことを決定しました。英運輸相Phillip Hammond氏は「英国の未来」を考慮すると、投資せざるを得ないという意味の発言をしています。
・中国、米国やその他の国で高速鉄道への投資や、鉄道に新しい役割を付与する動きがあるなかで、英国としても、鉄道を改めて重視していくことにしたのではないかと思われます。

[後記]
今確認したら、NNA.EUさんで取り上げられていました。
政府、鉄道インフラに大型投資:高速車両の更新決定は延期[運輸]

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