未来をプロトタイピングするアプローチ
アラン・ケイの言葉、「未来を予測する最善の方法は、未来を発明してしまうことである」(The best way to predict the future is to invent it !)はあまりにも有名です。
これは不遜な考えでも何でもなく、要は手を動かせということですね。
イノベーションで定評のあるIDEOの本を読んでいて、彼らがやっている「プロトタイピング」とは、「未来を自分たちの手であーでもない、こーでもないとこねくり回して、最終的にしっくりくるものを残す行為」に他ならないと思いました。結果としてそれが未来になります。
流通小売の世界では最近、この種の未来から発想するアプローチがよく行われています。ドイツのMETROでは、RFIDが当たり前に使われる未来を他社より多少早く具体的なものにするために、2003年後半からMETRO Future Storeを実店舗としてオープンさせ、営業してきました。現在では第二フェーズのプロジェクトInnovation Centerが運営されています。そこでは複数の企業が資金を出し合い、近未来的な流通小売のアプリケーション、店舗デザイン、店舗オペレーションなどの実験がリアルなファシリティでできるようになっています。これも一種の未来のプロトタイピングです。
わがシスコIBSGでもこの流れに乗って、日本におけるRFIDの未来の姿を「これだ」とみせてしまう小冊子を作成しました。2004年10月のことです。
この小冊子は少なからずこの分野に影響を与えている模様で、先日の三越のRFID実験なども、非常にこのイメージに沿ったものではないかなぁと思って見ておりました。
そんなこんなで流通小売の世界では未来ばやりです。
先日、敬愛するブーレ氏がニューヨークで開催された流通小売のトレードショーに行ってきたそうです。その時の報告がここにあります。IBM、Microsoft、Ciscoなどが連携して未来のプロトタイピングを行っています。
流通小売とは一線を画しますが、NTTグループが1999年に作成した2010年頃の通信の未来を描いたビデオを先週発見しました。「もうかなり前に見たよ」という人も多いと思いますが、私は今知ったばかりです。ユビキタスな通信が生活のなかにどう溶け込むかをかなり真剣に検討している風が伺えます。単体のビデオ作品としても非常によくできていると思います。少し感動します。
未来をプロトタイピングするとは、未来を”見せる”アプローチでもあるわけで、Seeing is Believing。いったん見てしまったものは忘れられません。多種多様な人の意識に残って、現実の未来になっていくのでしょうか。