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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

ワカメをファシリテーションせよ、あるいは僕らならではのボランティア

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★僕らにしか出来ないボランティアを!
ゴールデンウィークにボランティアとして1週間行っていた南三陸を、3ヶ月ぶりに訪ねた。前に行ったときは、まだ避難所にみんなが雑魚寝で、ご飯を共同で作って・・という状態だった。

(詳しくはそのときのブログ記事を参照)

ESを意識した社会貢献、あるいは僕らなりの復興ボランティア
被災地支援0日目 あるいは素人に何ができるか?
災害支援1日目 あるいはほぼ日常の周辺部
災害支援2日目 あるいは手足を動かす所から
災害支援3日目 あるいは避難所での1日
災害支援4日目 あるいは被災者の言葉
災害支援5日目 あるいは支援の悩ましい面
災害支援6日目あるいはさようなら南三陸
災害支援7日目あるいは今後の支援のあり方
災害支援8日目あるいは自分にとってどうだった?

今回行ってみると、当時避難所にいた人たちは全員仮設住宅に引っ越し、ようやく一ごごちついた、といった雰囲気だった。もちろん、狭くて不便ではあるけれど、「自分の家」というのは大事なものですね。

さて、今回の訪問は1泊2日という短期間だったけれど、
「ワカメ養殖業復興させるプロジェクトをファシリテーションする」
という、はっきりした目的があった。

GWに行った後も、ボランティア仲間が現地の漁師さん達と連絡を取っていた(僕自信はそんなにマメじゃないが・・)。で、養殖業復興に向けて動き出したけれど、みなの意見をまとめるのに苦労している、という話は聞いていた。
普段やっている企業の変革だろうが、ワカメ養殖の復興だろうが、「プロジェクトをファシリテーションすること」は、僕らが一番得意としていること。
乗りかかった船だ、いっちょ行きますか!僕らがやらずに誰がやる?というノリ。

★まずは情報収集と地ならし
今回行く前段階として、色々な人たちが現地の情報を集めてくれていた。

・本気で養殖業を復興させようと思っているのは、誰なのか?
・地区ごとに、港や年齢層や協力体制がどう違うのか?
・資金を援助してくれそうなNPOはどこで、そのために何をしないといけないのか?
・意見がまとまらない背景には、どういう事情がありそうなのか?

企業の業務ならいざ知らず、僕らは養殖については全くの素人。さらに土地土地の複雑な経緯や事情、人間関係などを把握するのは、一度にはとても出来ない。
ボランティア仲間や、賛同してくれた日本ファシリテーション協会の方々が、「色々な人から断片的に情報を聞いてはつなげ、詳しい人を紹介してもらって・・」というプロセスを地道にこなしてくれ、僕らに情報をプレゼントしてくれた。

いくら僕らが、会議のファシリテーションに慣れていると言っても、2日間だけ行っても、普通は何も出来ない。情報を集め、議論するキーマンを集めてくれた人たちがいたおかげで、ようやく「議論する場」が整ったのだ。

★一人一人の思いを書き出す
新幹線とレンタカーでお昼頃に南三陸に着いたら、生活センターの一角に陣取り、養殖業に思い入れの深い人たちに来てもらう。本当はみんなで集まって議論したい所だけど、仕事や地域のイベント、仮設住宅からの引っ越しなどなど、皆さんも忙しいので、まずは1人ずつ。
プロジェクトで会議をするときと、僕らがやることは同じ。やっているお仕事を丁寧に聞いていき、フリップチャート(模造紙)に表現していく。

44_20110829_1

何人かに話を聞いていくと、養殖業の復興のあり方として、4つの選択肢があることが分かってきた。
a)震災前と同じように、個人事業として続ける
b)船やボイラーなど、一部の設備だけ共有し、個人事業として続ける
c)組合を作り、設備の共同所有、共同作業、共同販売をして収益を分配する
d)企業に入ってもらい、その社員として漁業を続ける

とりあえず、それぞれの案ごとに「こんな感じ?」とお絵かきして、議論しやすいように番号を付ける。

44_20110829_3そして、それぞれの特徴をマトリクスに表現してみたり。

プロジェクトで議論していても、いつも全く同じ事を思うのだが、
「頭の中身を紙に書き出すことの大事さ」
を、今回も実感した。

漁師の方々の声を紹介しよう。
「俺は100考えていても、30しかいつも口で説明できないんだけど、全部ささっと書いてくれた」
「とにかくスッキリした!」
「組合作ろうよ、だけだと、話が前に進まないけど、これを見せれば一発で話しが進む」
「ザ・ゴールを読んだけど、ああいう感じだ。」












★聞いて、書くだけ。それが難しいんだけどね。
44_20110829_4_2ファシリテーターの第一歩として、みんなが話したことをそのまま書き留める、ということをたたき込まれる。
今回やったのは、そのまま書き留める、というよりはもう少し上級編で、パターン分けしたり、業務フロー化したり。


今回の話し合いの前半戦は、1人1人ずつとしか議論出来なかったけれど、フリップチャートに書いて行くことで、議論が毎回ゼロに戻ることなく、意見を書き足しながら積み上げることが出来た。

ここまでが「議論の前提を共有する」というステップになる。
「なあ、みんなでまとまってやろうよ」と言っただけでは、「まとまってやる」の中身がバラバラだし、議論がかみ合わない。
話を聞いて、書いて、整理してはじめて「まとまる、にも4段階ある」という様な、土台ができる。

★次は「意志」、つまり「どうしたいか?」
前提(議論の土台)を共有した後でようやく「じゃあ、あなたはどの方法で復興させたい?」という話に移れる。

話し合いの後半戦でようやくキーマンが全員そろったので、
「俺はどうせやるなら、販売まで一緒にやりたいんだよね」
「いやー、意見まとまらないでしょ。俺はココまで一緒にやるのが精一杯だと思うぞ」
と意見を表明していく。
(前にも書いたけど、本当は全編バリバリの宮城弁?三陸弁?です。採録出来なくてすみません)

ちなみに今回は「誰がどの意見か」を付箋を貼って分かるようにした。
そうやって、各人の前提がそろい、意見の違いが明確になってはじめて、
「なぜそう思うのか」
「懸念点や見通しがどう違うから、違う意見なのか。何となくか」
「家庭やこれまでの経緯など、背負っているものが違うから、意見も違うのか」
などを深堀りしていける。

この辺りの議論の様子を観察していて、僕らは議論を仕切るのをやめた。
前提が整理出来て、意見の違いが明確になったのならば、あとは当事者間でとことん話し合う番だ。生活がかかっている人たちだけでの濃い議論は欠かせない。
それに、この場に参加していない方の意見も聞かないといけないし。普段、企業でやっているプロジェクトよりも、当然時間はかかる。

★議論は道半ば
結局、ここまでで程良い時間になったし、この日は飲み会に突入した。
(たまたま、この日はある団体さんが超素敵な「ろうそくバー」を開催してくれて、普段は各地の仮設住宅にバラバラになっているメンバーが集まる日だった)
僕らは残念ながら、1時間くらいで東京に向けて出発しないといけなかったんだけど。

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僕らが多少議論を整理したからといって、瞬く間に養殖復興プロジェクトが進むとは思っていない。もしかしたらまた訪ねて、皆さんの議論のお手伝いをすることになるのかもしれない。
でも、ちょっとだけお役に立てたのかも、とも思う。
これからもおいしいワカメを食べるために。

※この養殖復興プロジェクトを、僕らと一緒に長く支援してくれる方を募集しています。
興味がある方は、ブログコメント欄やツイッターなど、何らかの方法で連絡をお願いします。

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